3 / 147
秘密の契約
1.死の前夜
しおりを挟む「仕事も遊びもいいけど、そろそろ早く結婚しなさい。
子供、産めなくなるわよ」
「そうだ。貰い手があるうちに結婚しろよ」
週末に出かけようとすると、毎週のように言われる言葉。
呆れた顔で話す両親に苛々した。
幸せの押しつけにうんざりだった。
自由さも働いたお金も奪われながら異性と生活するなら、
死んだ方がマシだと思っている。
体裁がどうの…と背中から聞こえ続ける呪いの念を聞き流し、
返事もせずに門を出た。
「枝折、大丈夫?」
「それを言うなら、初音も。
まあ、正直、辛い…初音も同じこと言われてるよね」
「まあ…暮らすのは私たちなのに、
行き遅れが恥ずかしいから早く結婚して…ってね」
私たちは、そう言いながら、互いに顔を合わせた。
苦い顔はそのままにして、ため息をつく。
幸い、人気のない公園には私たちしかいない。
「結婚したら黙るのかな…」
「今度は、孫の顔が見たい!…だと思うよ」
向かいにいる友人の初音は、
言葉にならない煩わしさが表情からにじみ出ている。
同じことを思う私も、おそらく同じ顔をしている。
「結婚、しようかな。条件付きで」
うなだれながら、投げやりに出た言葉に驚いた。
覇気がない瞳は、虚ろに空を見上げている。
「条件?」
「そう。絶対触られないし性行為がなくて、
子供もいなくて、人としての礼儀は忘れない生活ができる人」
それは無理だろうと思う条件だった。
私も同じことを考えたことはあるが、
かなり難しいことは世間が証明しているように思える。
世の中、結婚していても浮気をする人がいるくらいだ。
些細な条件が重なって起こる過ちも、よくある話になっている。
子孫を残したい本能は、そう簡単に諦められるわけがない。
私は拒み続けたとしても、相手もそうとは限らない。
「考えには共感できる。けど、そんな都合のいい人、
難しいと思う」
「だよね…これ、結婚するまで、続くのかな。
私が死ぬか、相手が死ぬまで続くのかな」
そう話す表情は、
今から死にます…と言われても違和感がない程に儚い笑みだった。
私もそろそろ限界を感じていたので、
もし一緒に行こうと言われたら喜んで行くだろう。
「かもね。でも、嫌な人のために、
人生捨てることはないと思う」
「確かに」
「恋愛に興味ないの、そんなにおかしいのかな。
子供に可愛さを感じないと変なのかな」
「おかしい、のだろうね。でも、それが私らだもの。
頑張ったけど、無理だった。
それでいいと思う」
二人でカラカラと笑い、目を合わせた。
力なく薄い笑みを浮かべた顔がそこにある。
「死ぬ前に、少し、頑張ってみようかな。
それでもだめだったら、一緒にいてくれる?」
「何があっても、
私、枝折は、最後まで友人でいることを誓います。
せっかくだから、私も頑張ろうかな」
「枝折…私も、何があっても一緒にいる。
おばあちゃんになっても、こうやってお話したり、ご飯を食べよう」
「いいね。最高に楽しそう。
これからも、よろしくね」
「うん。こちらこそ、よろしくね」
虚ろな瞳にわずかな光が戻った初音は、
ゆっくりと手を差し出す。
その手をとって、しっかりと握った。
半年後、初音に誘われた合コンで出会った人がいた。
そのときは、本当に夫婦になるとは思っていなかった。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
敏腕SEの優しすぎる独占愛
春咲さゆ
恋愛
仕事も恋愛も、兎に角どん底の毎日だった。
あの日、あの雨の夜、貴方に出逢うまでは。
「終わらせてくれたら良かったのに」
人生のどん底にいた、26歳OL。
木崎 茉莉 ~kisaki matsuri~
×
「泣いたらいいよ。傍にいるから」
雨の日に現れた、30歳システムエンジニア。
藤堂 柊真 ~Todo Syuma~
雨の夜の出会いがもたらした
最高の溺愛ストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる