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一夜の夢
想い出る残響
しおりを挟む寒い。
体が痛い。
身動きが難しい。
疲れが出たのだろう。
少し休めば問題ない。
今日が休日でよかった。
明日から再び活動をする上着とスカートが目に入る。
いつもより早いが、ベッドへよこになり目を閉じる。
しばらくして、足裏に感覚がした。
目を開けると、白い空間に立っているのが分かる。
ここはどこだ、と口に出す前に現れたのは人の形をした煙。
「…荷物をだせ」
「はい?」
突然の問いに戸惑う。
荷物といっても、今の自分は服を着ているだけで両手は空だ。
「確認する」
煙からは、一方的に言葉が続けられる。
そして、煙から光が出た瞬間。
体から物が出てきて、目の前に一つの山ができた。
一気に体が軽くなった。
今なら何でもできそうな気がする。
「確認する」
その山を作る一つ一つに煙が触れる。
触れた瞬間に見えるのは、思い出。
懐かしいと感じることから、自分でも忘れていたことまで。
思い出が消えると、その物が変わる。
色合いと形はそのままで、透明になった。
お気に入りの時計や本、
友人とその場の気分で買って放置していた雑誌。
買おうと迷い入手できていない物や、
欲しかったが諦めた希少品。
今度会ったときに贈ろうと、
相手には秘密で買って置いてある装飾品。
借りたままの筆記用具。
読んでいる途中の新書や、数々の贈り物。
明日発売で予約している音楽ディスク。
見覚えのある物ばかりだ。
中には、"見覚えのある風景が映るガラス玉"や
"人の手や臓物"もあった。
どういう基準かは分からないが、物が左右へ分けて置かれる。
最後は、小さな山と、それよりは一回り大きい山の二つになった。
「数が多すぎる」
「どういうことですか」
「数が多すぎる」
煙が大きな山を指し示す。
意味が分からない。
方法を聞こうとするが、ふいに聞こえた足音で空間が歪む。
思わず目を閉じる。
すぐに聞こえた物音で目を開けると、
見慣れた天井があった。
息が苦しい。
体が重い。
息を吐き、指先から手足をゆっくりと動かしてみるが鈍い。
怠い体を起こそうとするが、上手く動かない。
「寝るのは良いけど、布団をかけて」
視界に入ってきた馴染みの同居人。
慣れた手つきで私の腹に毛布をかける。
「ありがとう」
「気をつけて」
傍で本を読み始めた様子に、読んでいる途中の本を思い出す。
ゆっくりと上半身を起こすと、傍に置いてあった本を手に取った。
「寝ないの?」
「うん」
「そう」
瞬間だけ視線を向けた同居人は、すぐに本の世界へ戻っていった。
楽しそうに読んでいる姿に、買っていた贈り物を思い出す。
出先で偶然見つけた本屋にあった繊細なデザインの栞。
何となく同居人が好みそうだと思い、日ごろの感謝を伝えようと買っていた。
本屋の内装や雰囲気も好きそうなので、今度案内しようと思っていた。
「今度、一緒に出掛けない?街で見せたいものがあるから」
声をかけると、ちょうど読み終わったらしく閉じられた本。
向けられた視線と表情は期待に満ちている。
「楽しみにしてる。
…おめかし、しろよ?」
「もちろん」
返事を擦れば、楽しそうに視線が揺れる。
ああでもない、こうでもない…と呟いている。
おそらく脳裏のクローゼットと相談しているのだろう。
読もうとした本を元の位置に置き、同居人の腕をひく。
抱きとめると、その首筋へ顔をうずめる。
すると、背に腕が回される。
その愛しい温もりが確かであるようにと、腕で閉じ込めた。
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