影に鳴く

秋赤音

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影に鳴く

1.影に鳴く

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※BLです
暴力表現あります。法律がない世界の話。









薄暗い部屋。
夕食ができたので呼びに行くと、女性とすれ違う。

「レン。今日は終わり?」

「終わりー。誰も相手してくれないって嘆いてた。
子宮がないって、そんなに問題か?」

「好みによる」

「それはそうだ。今日の夕飯、なんだ?」

レンは、気怠い様子でゆっくりとベッドから降りる。
程よく鍛えられている肉体は、同性が見ても憧れる綺麗さだ。

「シア。シアさんー。そんなに見られると恥ずかしいですよー」

「ごめん。ほんと、綺麗だよね」

思ったことを言っただけだが、なぜかレンの顔が赤い。
そして、俺を抱き上げ、ベッドにおろして仰向けに組み敷く。
俺の服を脱がしながら、露になった肌へ口づけをおとしている。

「なに、誘ってるの?誘われるよ?」

「する気前提で言われても困る」

「シアのここは、素直…だけどね」

「…っ!レン、やめ…っ、早くいれればいいだろ」

わざわざ俺のを扱くレンは楽しそうに指先を動かしている。
何をすればどうなるか、知り尽くされた体はすでに受け入れる用意ができている。

「いれながら、シてほしいんだな。わかった」

「ちが…ぁ、あっ、ぅ…ん…っ、…は、…っ、動けよ」

「んー。しかたないなー?少しだけ」

一気に貫かれ、あまりの良さに危うく達しそうになるのを堪える。
早く終わらせて食事がしたいのだが、今日に限って焦らすレン。
絶妙な力加減でモノを扱うレンの動作に熱は燻り、もどかしさが募る。

「レン、早く、レンのがほしい…っ、から、ぁ…っ、あっ、ね、はやく」

待つのが面倒なので動くが、快楽にのまれそうな思考との闘いだ。
ほどよく煽って、たまっているものを早く出させたい。

「積極的なシアもいいな…煽らないでよ。手加減、できなくなる…から」

「あっ、レン、いい、いいよ…っ、加減しないで、ひどくしていいから…っ」

やっとレンが動き始め、それに合わせて腰を振る。
すっかり慣らされたところはレンに隙間なく吸いついていて気持ちいい。
動くたび大きくなっていくのが分かり、欲が出る瞬間を待つ。

「シア。出すから、受け止めろ、よ」

「ん、全部出して、ぁ、あ…っ!…っ、…っ」

「…シア。相変わらず、最高。永久指名してよかった」

まだ出しきらないのか、ナカで脈打つモノはとまらない。
早く終わればいいのに。

「今日は多いね」

「おねだり?」

「どうして、そうなる」

このままでは、と思ったが遅かった。
再び始まる律動にナカが熱く疼く。

「シア。俺だけのシア」

うわ言をつぶやくレンの背を撫でると、さらに激しくなる。
互いに何度も熱を出し、落ち着くころには夜が更けていた。

「服、着てきてよね」

「はいはい」

テーブルに用意していると、
シャツのボタンを留めただけのレンが椅子に座る。
出ているのものから食べ始め、次から次へと皿を空にして、風呂場へ向かった。

様々な問題が重なり、"偉い人"たちは、新たな土地を整備し終わると、すぐにこの地を捨てた。
管理者が不在で無法地帯となった土地は、しだいに"旧地"と呼ばれるようになった。
新たな場所は"新地"と呼ばれ、人々は自分にあった場所へと流れていった。

自分も食事を終えて片付けていると、
風呂からあがったレン。
濡れたまま背中から甘えるように抱きしめてくる。
濡れるからやめてほしい、と何度も言ったが改善しないので諦めた。

「なー、抱かせてくれよ」

「明日も来る人が約束通りなら、やめた方がいいと思う」

「あ、あー…うん。そうだった。寝る」

あっさりと引いて寝室に向かったレン。
ドアが閉まった音を聞き、自分も風呂場へ向かった。

翌日。
夕刻、仕事から帰ると入り口で香水をまとう女性とすれ違う。
昨日の人とは違う人だ。

「おかえりー。腹へった」

プレイ用の服を着崩したまま近寄るレンの移り香に、思わず顔を反らした。

「すぐに作るから、風呂はいったら?香水の匂いがキツイ。
換気もするから」

「これか?さっきの女のだろ。良い金蔓だがな」

「わかったから。早くいってきて」

「はいはい」

さっぱりしたレンは静かに椅子へ座り、
出来上がったばかりの食事を手早く食べ終える。
だが、その場から動かない。

「昨日は助かった。あの女、移り香を嫌うからな。
子供が産めない体質ってだけで旦那に捨てられたのを思い出すとか。
良い女なのになー。新地の奴は何考えてんだろ。
ま、おかげで抱けるんだけど」

「よかった。どうせなら、満足してもらいたいよね。
避妊だけは忘れないでよ」

「してるー。
確かに子宮がある女は孕むから面倒だけど、体は良い。
面倒なくできるなら最高ー」

淡々と言うレンに苛立ちを覚える。
確かに同意はできるが、言って良いことではない。

「それ、言ったら殺されるよ」

「女が言う奴もいるんだがなー。
ま、相手が種無しなら関係ない話だが、な。
最近は、煩わしいから自分から取る奴もいるそうだが。
子供はいらないけど、ヤりたい…なんて身勝手だが、
生殖力がない奴もそういう需要があるらしい」

俺をみて、レンはニッと笑う。
おそらく、わざとだろう。
両親が俺を捨てた原因をあえて言って楽しんでいる。
怒らないことを楽しんでいる。

「まあ、ね。
俺には、病気でもないのに有る奴がわざわざ手放す心境が分からない。
でも。作って、生んで、捨てるだけよりはマシかもね」

「そういえば。さっきのが、言ってた。
女が種付けして、男が出産したらしい。
臓器を移植したってな。新地は発展してるよなー」

さすがに驚いた。
わざわざそこまでする人がいることに。
視線で話の続きを促す。

「気になるか。女いわく、
子宮を人形に移して出産させる奴もいるが、その移す所が旦那の腹に変わっただけだと。
名目は、性別を変える手術?だったかなー。
真っ当な治療の奴もいれば、
養いたい女と養われたい男も選ぶらしい」

「世の中、変わってるんだね」

「そうだな。あ、なあ。お風呂、一緒にはいろう?
不完全燃焼でなー。
やっぱ、シアとヤるのが一番いい」

「ご指名ありがとうございます」

わざと柔く笑みを作ると、レンは笑う。

「今度、そういうプレイもいいかもな。
さー、風呂へ行こう」

レンは椅子から立ち、迷わず俺を抱き上げる。
その首に腕を回して、肩にもたれると、満足そうに小さく笑った。

「しっかり満足させてくれよ。シアさん」

「レンさんが望むかぎり、俺の全てを捧げるよ」

両親に捨てられ、"旧地"に移動した後は売春で稼いでいる。
無法地帯では、取り締まる法律も管理者もいない。
レンも売春仲間で、俺を指名する客の一人だ。
男が男を選ぶときは、男色か好奇心のどちらかだ。
だいたいは一度きりで終わるので、レンも同じだと思っていた。

「シア。俺だけのシア。二度と他の客はとらせない」

「金が切れない限りは、どこへも行かないよ。
俺はレンのもの」

浴室へおろされると、着直した服が暴かれる。

「シア。壁に手をついて?」

「加減してね。レン、明日の客は」

レンに背を向けると、ゆっくりと覆いかぶさってくる。
すぐそばに肌があるのに触れない距離に焦らされる。

「たっぷりと濃い他者の気配があるのを好むんだ」

「ぁ…そう、…んっ、あっ、奥、まで…っ」

遠慮がいらないと分かると、理性は手放した。
ちょうどよくナカで蠢く欲望が愛しい。
レンは男だ。どちらも望まない妊娠はしない。
病気がなんだ。
どうせ捨て子だ。いつ死んだってかまわない。
死ぬまでに暇をつぶするなら、苦しいより楽しい方がいいに決まっている。

「好きだろ?」

「レン、が、ね…っ。…ぅ、んあっ、いい、きもち、い…っ」

「シア。出すよ」

「だして、早く…っ、俺、もう…っ」

「シア…っ!」

強く抱きしめられると同時に、ナカに放たれた熱を感じる。
注がれている感覚だけで、何度か達した。

「シア。こんなに出して…嬉しい」

「ん…っ、触るな、また…ぁ、あっ、レン、もう出な…っ」

「本当だ。ほとんど、ない」

狂気を感じる嬉しそうな明るい声に、不覚にも欲情してしまう。
俺に向けられたものだと思うと、どうしようもなく嬉しくなる。

「レン…」

「ほとんど、だからな」

「まだ、あるよ。…ぁんっ、動けば?」

「その、つもり…だ」

待っていたモノから刺激を与えられると、ナカが締まるのが分かった。
俺は、ただ、快楽を与え、与えられる快楽を貪った。

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