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自己幸福
0.秘め事
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私たちは幸せな結婚をした。
互いに求めるものが一致していた。
外側さえ綺麗に見えればどうだっていいと、両親たちは言った。
私たちは、とても運が良く、とても幸せだ。
大きな敷地の中にある別邸。
私の月は太陽と共にある。
夜空に浮かぶ黒い月を廊下の窓から一人で眺めている。
するりと隙間から入った冷たい風に思い出す。
異常がないことを確認した後で部屋へ戻る途中だったことを。
体が冷え切る前にとめていた足を動かす。
「ルカ、もう少しだけ、な?」
「ラオ、も、無理…っ、ぅ、あっ!」
わずかに開いたままの扉からこぼれる嬌声が聞こえてくる。
今日も平穏だと実感しながら歩みを進める。
正面から背へ遠ざかる音は、自室と化している夫婦の寝室の扉を閉めると途切れた。
明日はリリ夫婦とのお茶会だ。
早く眠らないと、夫にも心配をかけてしまう。
幼馴染でもあるので、隠してもすぐに分かられてしまう。
麗人の隣に立つにはそれなりの準備が必要だった。
「おやすみなさい」
慣習だけで呟いた音は静かな空間に消えた。
翌朝。
肌艶の良い夫は、今日も作った食事を綺麗に食べ終えた。
「レン。いつも美味しい食事をありがとうございます」
「ありがとうございます。
ルカは偏食がないので作り甲斐があります」
「夕食も楽しみにしています」
麗人は美しい笑みを浮かべて颯爽と部屋を出た。
扉が閉まる直前、兄の声がした。
同じ学舎だから、同じ職場だからと、
理由は変わっても続いている幼い頃からの二人行動。
結婚して落ち着いた雰囲気と増した色気に倒れる女性もいるらしい。
あっという間に約束の時間になった。
仕事場から戻った夫と、リリを連れたラオが屋敷へ集まる。
「レン。ただいま」
「おかえりなさいませ」
兄の隣に立ち爽やかな笑みを浮かべる夫は、
客人をもてなす準備を手伝ってくれる。
「ラオ。リリ。座って待っていて」
「「はい」」
夫と顔の造りがそっくりのリリは、
そよ風が草木を揺らす庭を眺めながら心地よさそうに目を細めていた。
互いに求めるものが一致していた。
外側さえ綺麗に見えればどうだっていいと、両親たちは言った。
私たちは、とても運が良く、とても幸せだ。
大きな敷地の中にある別邸。
私の月は太陽と共にある。
夜空に浮かぶ黒い月を廊下の窓から一人で眺めている。
するりと隙間から入った冷たい風に思い出す。
異常がないことを確認した後で部屋へ戻る途中だったことを。
体が冷え切る前にとめていた足を動かす。
「ルカ、もう少しだけ、な?」
「ラオ、も、無理…っ、ぅ、あっ!」
わずかに開いたままの扉からこぼれる嬌声が聞こえてくる。
今日も平穏だと実感しながら歩みを進める。
正面から背へ遠ざかる音は、自室と化している夫婦の寝室の扉を閉めると途切れた。
明日はリリ夫婦とのお茶会だ。
早く眠らないと、夫にも心配をかけてしまう。
幼馴染でもあるので、隠してもすぐに分かられてしまう。
麗人の隣に立つにはそれなりの準備が必要だった。
「おやすみなさい」
慣習だけで呟いた音は静かな空間に消えた。
翌朝。
肌艶の良い夫は、今日も作った食事を綺麗に食べ終えた。
「レン。いつも美味しい食事をありがとうございます」
「ありがとうございます。
ルカは偏食がないので作り甲斐があります」
「夕食も楽しみにしています」
麗人は美しい笑みを浮かべて颯爽と部屋を出た。
扉が閉まる直前、兄の声がした。
同じ学舎だから、同じ職場だからと、
理由は変わっても続いている幼い頃からの二人行動。
結婚して落ち着いた雰囲気と増した色気に倒れる女性もいるらしい。
あっという間に約束の時間になった。
仕事場から戻った夫と、リリを連れたラオが屋敷へ集まる。
「レン。ただいま」
「おかえりなさいませ」
兄の隣に立ち爽やかな笑みを浮かべる夫は、
客人をもてなす準備を手伝ってくれる。
「ラオ。リリ。座って待っていて」
「「はい」」
夫と顔の造りがそっくりのリリは、
そよ風が草木を揺らす庭を眺めながら心地よさそうに目を細めていた。
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