影に鳴く

秋赤音

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自己幸福

2.愛情

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ずっと一緒にいようね。

両親はある日、必死な顔で私たちを抱きしめた。
リリと同じ服を着て並べば見分けがつかない様に安堵した表情は、今でも覚えている。
両親が二度と不安にならなくていいように、望みを叶えようと思った。
家族としか交流しないまま、
リリと同じの暮らしに馴染み慣れた頃、友人ができた。
ラオ・リーアさんとレン・リーアさん。
仲の良い兄妹だった。
リリと四人で遊んでいたが、しだいに二人ずつに分かれていった。
先にリリがレンさんを連れてどこかへ行くので、
残された私とラオさんが一緒に遊ぶのが定着していった。

「ルカ。
俺、お父様から武術を教えてもらっているんだ。
何かあったとき、自分の身は自分で守りなさいって」

「私も知りたい。自分も、リリも守りたい。
教えてください。お願いします」

私たちは二人だけの姉であり妹だから、守りたいと願った。

「いいよ。俺も勉強になるし」

「ありがとうございます」

無理な願いに嫌な顔をせず、
むしろ楽しそうに笑うラオからめが離せなかった。
おそらく、ラオにとっては他愛ないことだったのだろう。
お礼の返事は見慣れた笑みだった。
それから、本当に約束は守られた。
少しずつだが訓練してもらい、体力も増えてきた。
しかし追いつくことはできない。
ラオを知れば知るほど、自分との違いを感じる。
思い出すたびに熱くなる体と、下肢の何かから溢れる白濁ともどかしい疼き。
誰にも相談できないまま日々を過ごした。

ある日。
ラオと一緒に木を登るが、まだ同じようにはできなかった。
差し伸べられた手と優しさに鼓動が高鳴る。
物語に出てくる王子様のようだと、思った。
初めて交わした口づけは心地よく、唇が離れていくのが名残惜しっかった。
熱い体はいつもより辛く、ラオにすがった。
ラオなら助けてくれると思ったから。
そして、救われた。
救い続けてくれた。
二人きりの場所で武術の訓練が終わると、辛い体を鎮めてくれた。
私は、いつからか、
結婚するならラオがいいと、心から願うようになっていた。

「ラ、オ…っ、あつ、い…」

木陰に入ると熱さに耐えられずワンピースのボタンを開ける。

「ルカ。膝にのせるからな」

「ラオ。いつもごめんなさい」

ラオも熱いのか服のボタンが外れていて、下肢同士の一部の肌が触れ合う。
いつ見ても綺麗な体に見惚れていると、訓練で流れた汗を舌先でなめられる。
恥ずかしいのでやめてほしいと言ったが聞いてくれないので諦めた。
手間をかけているのだから、私は我慢しないといけない。

「いい。俺もだから…一緒に楽になろうな」

「ぅ、ん…っ、…ぁっ」

舌が肌に触れるたびに体に電流が走る。
最近は意識がふわふわとして定まらなくなるようになることが増え、
ラオにますます手間をかけるようになった。

「ん、…っ、あっ、それ、だめ…っっぁああっ!」

私と同じ体の一部を水音をたてながら擦り合わされると、
抗えない感覚に力がぬける。
同時に熱も落ち着くが、ラオが触れるだけですぐに熱くなる。

「ルカ。そのまま、動いて」

「んっ、ん、んぁっ、は…ぅっ、ぁっ、あっ、ラオ、…っ」

「ルカ…く、ぅっ、ぁ…あ……っ」

「ひ、ゃ…ぁっ、ああぁ…っ!」

強い疼きを感じた後、熱が出ていった。
空気に晒されている腹にはどちらのか分からない白濁が滴っている。
ラオの肩に頭を預けると、優しい手が髪を撫でてくれた。

「ルカ。おつかれさま」

「ラオ、も」

目が覚めると傍にはいつもリリがいて、
ラオやレンと一緒に待ってくれていた。
そんな、楽しく辛く、優しい日々が続くと
思っていた。

祖父母が他の親族に跡を継がせた日の夜。
両親は、私に新しい服をくれた。
そして、私は女性ではないと告げた。
血の繋がる男の子をほしがっていた、と言っていた。
あの時はああするしか思いつかなかったと。
私の結婚相手はレン。
住まいは敷地内の別邸だと、両親は言った。
それからは男性として過ごすように決められ、
必然とラオも男性だと認識した。
それでも、一度覚えた感覚は忘れられなかった。
そして、結婚式の日。

「リリ。ラオ。結婚おめでとう」

「ルカもね。レンを幸せにして」

「リリ。大丈夫です」

白いドレスに身を包むリリとレン。
家族だけで行った式は無事終わり、
妻となったレンとくぐる玄関。

「リリ。約束通り、私たちだけでお祝いです」

「そうね。
ということで、男性方は部屋で待っていて」

「「はい」」

二手に別れ、言われたとおりに部屋へ入る。
背後で鍵がされた音がした。
椅子に座るのをやめて振り向くと、懐かしい瞳と目が合った。

「ルカ」

「ラオ、なに、ぁ…っ」

下肢に押し付けられるモノは、よく知っている。
私と同じ体の一部。
焦がれても触れられないと思っていた熱。

「ルカ。懐かしいな」

「ラオ、今は、リリたちが…ぁ、んっ」

いつの間にか外されているベルト。
ラオの手に包まれている私の欲。
求めていた感覚に熱が集まる。

「問題ない。今頃は楽しくお茶会だろう」

「ラオ、だ、め…だ、ぁっ、あ、んんっ、それ、は、ぁ…っ!」

ラオに触れられているだけで達しそうになるのを耐える。
しかし、情けない程にこぼれている滴り。
ラオは嬉しそうに微笑みながら離れ、椅子に座った。
そして、同じように下肢を自由にすると、私に見せつける。

「ルカ」

「…っ、ラオ」

思い出す記憶と昂る感情。
くらくらと眩暈がした。
目の前にある熱を求める身体と、反する理性に揺れる。

「ルカ。一緒に、楽になろう?」

「ぁ…、…っ、ラオ」

熱のこもった視線と目が合った。
その言葉に、理性は消えた。

「そうだ。…ん、…っ」

「ぁ、んっ、…っ!」

擦れる熱と絡まる舌。
やっと与えられたものが離されないように、ラオの背へ腕を回した。

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