輪廻の終わりで

秋赤音

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閉ざされた箱庭

1.宵は明けず

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光那ひなはいつも温かく、眩しかった。
色素が違うだけで造形は同じ体だから、なおさらだった。
光那ひなは全てを透過しながら楽しそうに空を舞い、煌めく笑顔で大地へと光を注ぐ。
私は大地に注がれる全てを受け入れる。
共に箱庭世界を守るために決めた方法だった。

しかし、だんだんと受け入れれば身が穢れるものが増えてきた。
だからだろう。光那ひなは冷ややかに笑み、天空から全てを弾く。
雷鳴を轟かせ、時には雷を放ち焼くようになったのは。
私が穢れを取り込まなくていいように、綺麗なものだけが大地へ残るように願っていた。
だから、私も考えた。直接身に受けなくていいように身代わりを造った。
光那ひなの放つ光が反射して煌めく宝石は、私の代わりに穢れを受け入れ、溶かし消していった。
寿命がきた宝石が砕け散ると、新しく造っては壊れた。

限界が来る対処方法しかできない私を、光那ひなは空へ誘ってくれようとした。
でも、応じることはできなかった。約束したから。
光那ひなと守ってきた場所を守りたいから。
ずっと飛ぶのも疲れると言っていた光那ひなが安心して休める大地を守りたいから。
私たちは、ずっと一緒にいられる。だから、大丈夫。
穢れを受け入れることが辛くなり拒絶してしまった。
でも、拒絶して初めて、穢れはどんなことをしても変わらず身に入ってくると知った。
せめて依代を造ってみよう。
美しい物がいいから、宝石を真似てみる。
苦しい。
痛い。
でも、どんなときでも笑っていよう。
今も、美しい光が空から私を支えてくれている。

光那ひな。ずっと、一緒にいますから」

足の踏み場も無くなりつつある大地に光那ひなが落ち立つことはないだろう。
消しても増える穢れが憎くなった。望まない別れを強いられる怒りが生まれた。
どうして。
ただ、一緒にいたいだけなのに。





苦しい。受け入れて溢れた穢れが鎖となって私の首を緩やかに締める。
私の感情も混じった穢れが、私を潰そうとしている。

「…ぅ、ぐ…っ」

鎖は手首と足首にも絡んで、地を這う私の動きを鈍らせる。喉が渇いても水がある場所が近くて遠い。
まだ愛想笑う顔は維持できているから良しとしよう。
でも、痛い。受け入れた穢れは力となって、制御ができず暴走している。
この力がほしいのか、穢れがドレスの上から這っている。
ゆっくりと肌に近づいてくる。痛くて、熱くて、気持ち悪い。
気持ち悪いのに、慣れて、馴染んで、心地良く感じて。空気を求めて空を仰ぐ。

「んぁあっ…ぅっ…んぐ…っ」

まだ大丈夫。でも、いつかは、いえ、そろそろ限界かもしれなかった。
ふと、視界に一筋の炎が流れた。瞬く間に消える穢れ。美しく強い力に惹かれた。
すると、どこからか優しい温度が手に触れた。熱い炎が体の内に入ってきて馴染む。
同じように振るえば穢れた景色は綺麗になって、痛みはあるけれど少しだけ楽になった。

「ありが、とう」

感謝をこめて、私の力を分けた。払った穢れが優しい人の力となるのを願った。
得た炎は受け入れるだけの私に選べる幸せをくれた。限界がくる前に焼き払うことができる幸せ。
たとえ痛みを対価にしても、少しだけ気持ち悪い心地よさから逃れる時間ができた。
穢れよりマシな、心地よい痛みを得た。

「ぃだいいい…ぁうぅっ……ぁっ、あぁっ、首がっ、……っぐ…っ」

いつまで、いつになれば、あの頃に戻れるのだろう。
ただ、一緒にいたいだけなのに
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