輪廻の終わりで

秋赤音

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他様生

叶わないなら、せめて

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熱い湯に肩まで浸かれば、じんわりと緊張した体がほぐれていく。疲労やストレスに男も女も関係ない。
名前も知らない誰かと、何度か顔を合わせれば挨拶くらいはするようになる。
公共銭湯の暖簾をくぐり、帰路へ向かう男。
「あーあ…はぁー」
口に出すわけにはいかない愚痴がため息になる。正面から歩いてくる女は、男を見て苦く笑う。足音に気づいた男も、苦く笑う。
「お帰りですか。今日もお疲れ様です」
「お疲れ様です。気をつけてお帰りください」
「はい。ありがとうございます」
男女は別れる。その足取りは少しだけ軽くなっている。
暑い日も、寒い日も、一日の区切りに欠かせない風呂。制度が変わって運営方針に影響が出て、収支が悪化。一部は廃業の危機にあったが、衛生環境を維持するために公的機関が管理することで残された。高温に対応できる貞操帯の開発も盛んに行われている。運営方針が大きく変わり、利用の客層も変わった。全ては自己責任とされている。
女は公共銭湯の暖簾をくぐり、扉を閉めて管理人へ顔を向ける。
「こんばんは」
「こんばんは。お疲れ様です。遅いけど、帰りは大丈夫ですか?」
管理人は帰り支度の手を止めて、女と向き合う。
「大丈夫です。何かあっても、返り討ちにしてやりますよ」
「そうですか。気をつけて帰ってください。そろそろ自動警備に切り替えます」
「はい。お疲れ様です」
「あなたも、今日一日お疲れ様です」
場に静けさだけが残った。女は慣れた廊下を歩いて、監視カメラの目が届かない脱衣場へ。手早く脱いで、浴場へ。
すると、すでに入って身を清め終えた男が笑う。
「ああ、きた。待っていたんですよ」
「ごめんなさい。意外と時間がかかって」
「約束は約束。罰は受けてもらいます」
男は女を抱き寄せ、近くにある壁へ手をつかせた。男の手は迷わず女の尻を撫で、閉ざされている蜜壺を開こうとする。
「ごめんなさい。次は守るから、ぁ…んっ、やぁあっ、そっちはいやぁあっ」
「我慢できたら、いつも通り気持ち良くなれます。入れるから、足を開いてください」
「あっ…あぅうっ…が、まんっ、がまんんっ…はぁあんっ、あっ…ぁんっ…ぃやあぁあああっ」
女は泣きながら絶頂し、男へすがるような眼差しを送る。
「よく頑張りました。辛かったですね。屈辱ですよね。でも、私は体の性別も含めて気に入っていますので」
「あっ…ぅうっ…ぬいて、ください…っ」
「名残惜しいですが、そうですね。ご褒美、です。出しても妊娠しないから、遠慮ないのがいいですね」
「ぁあああっ、んんっ、もっとぉっ…あ、あっ」
「部屋にくるなら、良い玩具をプレゼント、します。偽物ですが、無いよりは慰めになると、いい、ですね」
「なっ、にが、ぁひっ…はっ…ぅうっ」
「後付の張り型。あなたが求めても、叶わない…この、男の象徴です」
「ぁああっ、ぃくっ、いくっ、ほしぃいっ、ふぁあああっ」

世の中には、様々な人で溢れている。対処しきれないと判断した社会は、全てを自己責任とし配慮をやめた。それぞれに必要なものを、自分で選ぶことにした。
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