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他様生
求めるのは結果だけ
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昼の集合団地は、今日も賑わっている。
腕に子を抱いた人間の女は、笑顔で隣人の近くへ向かう。全てが無機質な隣人は、人類を真似て笑う。
「あ、おかえりなさい。今日、創造日でしたね。あなたの遺伝子が良いので、キレイにできてます。おそらく、良い値が付きます」
「ただいま。お母さん。無事に作られました。キレイにできて安心です。治験も色々ですね」
隣人に受け入れられた女は、目を細めて抱く子を見つめる。
「おめでとうございます。次の遺伝子提供日と、孤児院の手配は終えています」
異種の存在が実生活の中で、親子のような関係になった。
人間同士が支え合えるために使える人間の数が確保できるまでの処置として、ロボットが育児を担うようになった。個体差があることを学習させれば精度も上がり、今は制御を管理するだけで良い。
異種の親子を、通りがかった中年男性は嗤う。
「人間同士で育てないと、人間にならないぞ」
ロボットは、男性の健康確認を瞬き三回で終えた。
「我が子よ。彼は生産性の低い人間ですが、存在を受け入れ共存しましょう。彼の健康状態には、問題があります。旧世代の貞操帯で負担がかかった影響か、生殖器に異常があるようです」
ロボットは、無感情で無機質に話すだけ。男性は、嗤う。嗤う。嗤って、ため息を吐く。
「なんだ。ロボットの分際で。お得意のスキャン結果か?努力義務を義務と思い込んだ連中に合わせないと、生きてこれなかったんだ」
「え。義務って報道…しか、知らない。お母さん、本当?」
「彼の発言は事実です。メディアでは、努力義務を義務と表記して報道し続けていました。反対運動や副作用について、報道時間は極わずかです」
「副作用…まさか、そんな。出ても治せるって、生産性を損なうことはないって…嘘なの?」
「貞操帯に副作用はありますが、治せることが多いです。生産性への影響は、最小限度です」
女性がロボットの発言に安心したときには、すでに男性の背が遠かった。
中年男性は、苦い顔で繁華街へ向かう。すれ違うように、若い男が横切った。女を見つけると口元だけで笑う。
無機質な母は、来訪者に気づく。
「我が子よ。遺伝子提供の相手が着ました。あなたと相性の良い遺伝子の方です」
足音が止まる。向かい合った男女は、見つめ合って笑みを交わす。
「用事を思い出しました。鍵をしめます。我が子も外出してください」
決定事項の報告をしたように場を去った母を見た女の目。
「わかりました、お母さん…っ?」
男にキスされたと女が自覚したのは、唇が離れてから。
「ちゃんと人間っぽい。実は発表前の人型モデルではないよね?」
からかうように笑った男は、女へ手を伸ばし頬を撫でる。
「遺伝子提供に、キスは必要ですか?ちゃんと人間です。親が遺伝子お見合いのおかげが、整いやすいだけです…っ…んんっ…ぅ、ん…っ」
「…キスが必要かは、時と場合による。生まれが同じだね。お母様の言うとおり、そろそろ出かけるか。車は、すぐそこ」
男は空いている腕で女の腰を抱き寄せた。
「はい。どこへ行きますか?」
車の助手席に収まった女は、男に足を撫でられても笑みを崩さない。だが、すでに肌の温度は上がっている。
「どこへ、行きたい?一応、らしくデートもする?」
「そうですね。食事はしたいです。適度な栄養は健康維持に必要です」
「了解。食事に関しては同感だね」
食事を終えた男女は、ホテルへ消えた。
部屋の扉が閉まると、風呂場へ行こうと女の手が誘導する。
「まあ順番通りが無難だよね。一緒に早く済ませよう」
「はい」
「早くっ、と、いったのにぃっ」
女は、立ったまま男に背を預ける。男の手で執着に全身を弄られ、すでに発情している。
「わかりやすい症状がないか、一応点検?終わったけど。肌キレイだね。明るいからよく見える。慣らさなくても良さそうだし」
男は指先まで細やかに使い、女の性感帯を愛撫する。男に応える女は、雄を求めて滴り誘う。
「ふぁああああっ…指っ、指ぃっ…なんで、早くいれてっ、終わらせてっ」
「あれ?今までの提供者、愛撫もしてくれなかった?デートも知らない?一緒に買い物したことある?」
「ひゃんっ、あんっ、しらあぁああっ…しら、なぃいいっ…ひっつよう、ないぃっ」
「まあ、ヤればできるし。種回収が目的ならしかたないか。今回は、こっちに合わせてね。痛いのは嫌だから」
「ぁあああっ…ぃやあぁああっ、壊れるっ、しぬっ、あっ、ぁああっ」
女は絶頂を迎え、口をわずかに開けたままぐったりと男へもたれる。焦点が合わない目で男を見つめる。
「壊れても、産むのは機械だから大丈夫」
男は目を細めて笑い、女の頬を撫で手をそえる。
「ぁ…あ、ぁっ?んっ…ふ、ぅっ…っ」
「……っ、キスだけで、気持ち良くなれる…逸材を母体だけにするのは惜しい、ね」
「んぅ…っ?は、ぁ…っ、私、価値ある?」
「価値ある。少なくとも自分にとっては、ある。壊れるまで、壊れても抱き潰したい」
「壊れても、捨てない?」
「捨てない」
「嘘でも、嬉しいです…早く、ほしい…っ」
男は愛撫をとめ、女を抱き上げた。優しくベッドへ下ろすと、キスから愛撫を再開する。女は抵抗することなく、引き出される快楽を受け入れた。
翌日、頬が赤い女の腰を抱きながら車へ誘導する男。席につけば求め合うようキスを交わして、惜しみながら離れる。
「まだ帰りたくないです」
「同感だね。生涯目標額まで、一緒に住む?」
「良い案ですが、下見して決めてもいいですか?」
「いいよ。今日は帰さないけど」
「…はい」
女の瞳は完全に蕩けて男を見つめる。男は女へ触れるだけのキスをして、車を走らせた。
人間は、理性ある獣となることを選んだ。
産まれた命は、高値で孤児院へ売られている。
そして、社会を回す歯車の一部として生きている。
腕に子を抱いた人間の女は、笑顔で隣人の近くへ向かう。全てが無機質な隣人は、人類を真似て笑う。
「あ、おかえりなさい。今日、創造日でしたね。あなたの遺伝子が良いので、キレイにできてます。おそらく、良い値が付きます」
「ただいま。お母さん。無事に作られました。キレイにできて安心です。治験も色々ですね」
隣人に受け入れられた女は、目を細めて抱く子を見つめる。
「おめでとうございます。次の遺伝子提供日と、孤児院の手配は終えています」
異種の存在が実生活の中で、親子のような関係になった。
人間同士が支え合えるために使える人間の数が確保できるまでの処置として、ロボットが育児を担うようになった。個体差があることを学習させれば精度も上がり、今は制御を管理するだけで良い。
異種の親子を、通りがかった中年男性は嗤う。
「人間同士で育てないと、人間にならないぞ」
ロボットは、男性の健康確認を瞬き三回で終えた。
「我が子よ。彼は生産性の低い人間ですが、存在を受け入れ共存しましょう。彼の健康状態には、問題があります。旧世代の貞操帯で負担がかかった影響か、生殖器に異常があるようです」
ロボットは、無感情で無機質に話すだけ。男性は、嗤う。嗤う。嗤って、ため息を吐く。
「なんだ。ロボットの分際で。お得意のスキャン結果か?努力義務を義務と思い込んだ連中に合わせないと、生きてこれなかったんだ」
「え。義務って報道…しか、知らない。お母さん、本当?」
「彼の発言は事実です。メディアでは、努力義務を義務と表記して報道し続けていました。反対運動や副作用について、報道時間は極わずかです」
「副作用…まさか、そんな。出ても治せるって、生産性を損なうことはないって…嘘なの?」
「貞操帯に副作用はありますが、治せることが多いです。生産性への影響は、最小限度です」
女性がロボットの発言に安心したときには、すでに男性の背が遠かった。
中年男性は、苦い顔で繁華街へ向かう。すれ違うように、若い男が横切った。女を見つけると口元だけで笑う。
無機質な母は、来訪者に気づく。
「我が子よ。遺伝子提供の相手が着ました。あなたと相性の良い遺伝子の方です」
足音が止まる。向かい合った男女は、見つめ合って笑みを交わす。
「用事を思い出しました。鍵をしめます。我が子も外出してください」
決定事項の報告をしたように場を去った母を見た女の目。
「わかりました、お母さん…っ?」
男にキスされたと女が自覚したのは、唇が離れてから。
「ちゃんと人間っぽい。実は発表前の人型モデルではないよね?」
からかうように笑った男は、女へ手を伸ばし頬を撫でる。
「遺伝子提供に、キスは必要ですか?ちゃんと人間です。親が遺伝子お見合いのおかげが、整いやすいだけです…っ…んんっ…ぅ、ん…っ」
「…キスが必要かは、時と場合による。生まれが同じだね。お母様の言うとおり、そろそろ出かけるか。車は、すぐそこ」
男は空いている腕で女の腰を抱き寄せた。
「はい。どこへ行きますか?」
車の助手席に収まった女は、男に足を撫でられても笑みを崩さない。だが、すでに肌の温度は上がっている。
「どこへ、行きたい?一応、らしくデートもする?」
「そうですね。食事はしたいです。適度な栄養は健康維持に必要です」
「了解。食事に関しては同感だね」
食事を終えた男女は、ホテルへ消えた。
部屋の扉が閉まると、風呂場へ行こうと女の手が誘導する。
「まあ順番通りが無難だよね。一緒に早く済ませよう」
「はい」
「早くっ、と、いったのにぃっ」
女は、立ったまま男に背を預ける。男の手で執着に全身を弄られ、すでに発情している。
「わかりやすい症状がないか、一応点検?終わったけど。肌キレイだね。明るいからよく見える。慣らさなくても良さそうだし」
男は指先まで細やかに使い、女の性感帯を愛撫する。男に応える女は、雄を求めて滴り誘う。
「ふぁああああっ…指っ、指ぃっ…なんで、早くいれてっ、終わらせてっ」
「あれ?今までの提供者、愛撫もしてくれなかった?デートも知らない?一緒に買い物したことある?」
「ひゃんっ、あんっ、しらあぁああっ…しら、なぃいいっ…ひっつよう、ないぃっ」
「まあ、ヤればできるし。種回収が目的ならしかたないか。今回は、こっちに合わせてね。痛いのは嫌だから」
「ぁあああっ…ぃやあぁああっ、壊れるっ、しぬっ、あっ、ぁああっ」
女は絶頂を迎え、口をわずかに開けたままぐったりと男へもたれる。焦点が合わない目で男を見つめる。
「壊れても、産むのは機械だから大丈夫」
男は目を細めて笑い、女の頬を撫で手をそえる。
「ぁ…あ、ぁっ?んっ…ふ、ぅっ…っ」
「……っ、キスだけで、気持ち良くなれる…逸材を母体だけにするのは惜しい、ね」
「んぅ…っ?は、ぁ…っ、私、価値ある?」
「価値ある。少なくとも自分にとっては、ある。壊れるまで、壊れても抱き潰したい」
「壊れても、捨てない?」
「捨てない」
「嘘でも、嬉しいです…早く、ほしい…っ」
男は愛撫をとめ、女を抱き上げた。優しくベッドへ下ろすと、キスから愛撫を再開する。女は抵抗することなく、引き出される快楽を受け入れた。
翌日、頬が赤い女の腰を抱きながら車へ誘導する男。席につけば求め合うようキスを交わして、惜しみながら離れる。
「まだ帰りたくないです」
「同感だね。生涯目標額まで、一緒に住む?」
「良い案ですが、下見して決めてもいいですか?」
「いいよ。今日は帰さないけど」
「…はい」
女の瞳は完全に蕩けて男を見つめる。男は女へ触れるだけのキスをして、車を走らせた。
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