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1.一人の兎-愛してるから傍にいて
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夜駆 一兎は、生まれた瞬間から苦労すると決まっていた。
ことに気づいたのは5歳の誕生日。
次の教会長になるからと選ばれた教育係だけが僕の会話できる人。
唯一の話し相手の保波 流錬さんが体調を崩して療養すると言ってから姿を見ない。覚えている誕生日の全ては彼女と二人きりだったと自覚した。
そして、母親を知らないことにも気づく。写真すら見たことがない。
寂しいが、彼女が残した勉強道具はあったから大丈夫だった。
窓越しに見る他の孤児たちは、時々だが囲いの外側に親らしき気配を見せるのが羨ましいだけで。
6歳になってから服装が変わった。
孤児の女の子が着ていた服だった。
初めて父親から贈られたものだった。
綺麗な箱の中にあったのは服と、着る方法が親切に書いてある紙が同封されていた。
嬉しいと、思った。
愛されていると、思いたかった。
夜駆 一兎は、死んだ母親に似ているらしい。
時々、父親が僕を見て母親の名前を呼ぶから、そう思うことにした。
拒否することすら考えたことがなく、当たり前になった女装。
7歳で僕のために整えられた小さな庭をもらい、8歳で女の子の嗜みを覚えた。
9歳になり孤児がいる場所の出入りのみが許され、所作も窓越しにみえていた女の子を観察し習う。
10歳になる頃には、娘として振る舞うことにも慣れた。
次の長だから、とニコニコしてくる子供は無視していいと言われた。
勉強道具と、銀の髪と赤い目が見知らない母親との唯一の思い出だけが癒しになった。
まず、親が孤児の保護先で有名な教会長の夜駆 間灯の時点で並の楽ができないと気づいたのは成人した15歳。
16歳になって少し後、一人の女の子が孤児として来た。
風に揺れるサラサラした白銀の髪が印象に残っていた。
毎日窓越しに、時には近くで眺めていると、初めて父親が面会の許しをくれた。
ご飯は支給する材料を自分で料理するのが代償だった。
話を受けて、初めて紫の目と視線が合ったとき、体がゾクりと震えた。
ほしい。
この子がほしい。
僕のお姫様にしたい。
女の子同士だからか、安心して遊ぶ少女の名は三目 咲夜 。
一緒に昼寝をして、キレイな庭が見える場所で支給されるおやつを食べる。
たまに勉強会もするようになって、近づく距離にドキドキした。
遅くまで勉強して、そのまま部屋で夕飯を作って一緒に食べたり寝ることもあった。
冗談を言い合える仲にもなった咲夜ちゃんも15歳で大人になる。
いつものように誰もいない庭の長椅子で肩を並べてお菓子を食べていると、咲夜ちゃんの口の端にクリームがついていた。
とるついでに、初めてキスをした。
温かい。
唇が柔らかくて、もう一回。
もう一回。
もっとしたくなって、肩を抱き寄せてまた一回。
息が苦しそうな咲夜ちゃんが口をあけて、舌がみえた。
あれも温かくて柔らかいと思って、咲夜ちゃんの背中ごと寄せたら舌を押し当てた。
気持ちいい。
咲夜ちゃんの体が熱くなってきて、抱きつき心地もいい。
続けていると、急に咲夜ちゃんが逃げようとする。
だめ。逃げないで。
ことに気づいたのは5歳の誕生日。
次の教会長になるからと選ばれた教育係だけが僕の会話できる人。
唯一の話し相手の保波 流錬さんが体調を崩して療養すると言ってから姿を見ない。覚えている誕生日の全ては彼女と二人きりだったと自覚した。
そして、母親を知らないことにも気づく。写真すら見たことがない。
寂しいが、彼女が残した勉強道具はあったから大丈夫だった。
窓越しに見る他の孤児たちは、時々だが囲いの外側に親らしき気配を見せるのが羨ましいだけで。
6歳になってから服装が変わった。
孤児の女の子が着ていた服だった。
初めて父親から贈られたものだった。
綺麗な箱の中にあったのは服と、着る方法が親切に書いてある紙が同封されていた。
嬉しいと、思った。
愛されていると、思いたかった。
夜駆 一兎は、死んだ母親に似ているらしい。
時々、父親が僕を見て母親の名前を呼ぶから、そう思うことにした。
拒否することすら考えたことがなく、当たり前になった女装。
7歳で僕のために整えられた小さな庭をもらい、8歳で女の子の嗜みを覚えた。
9歳になり孤児がいる場所の出入りのみが許され、所作も窓越しにみえていた女の子を観察し習う。
10歳になる頃には、娘として振る舞うことにも慣れた。
次の長だから、とニコニコしてくる子供は無視していいと言われた。
勉強道具と、銀の髪と赤い目が見知らない母親との唯一の思い出だけが癒しになった。
まず、親が孤児の保護先で有名な教会長の夜駆 間灯の時点で並の楽ができないと気づいたのは成人した15歳。
16歳になって少し後、一人の女の子が孤児として来た。
風に揺れるサラサラした白銀の髪が印象に残っていた。
毎日窓越しに、時には近くで眺めていると、初めて父親が面会の許しをくれた。
ご飯は支給する材料を自分で料理するのが代償だった。
話を受けて、初めて紫の目と視線が合ったとき、体がゾクりと震えた。
ほしい。
この子がほしい。
僕のお姫様にしたい。
女の子同士だからか、安心して遊ぶ少女の名は三目 咲夜 。
一緒に昼寝をして、キレイな庭が見える場所で支給されるおやつを食べる。
たまに勉強会もするようになって、近づく距離にドキドキした。
遅くまで勉強して、そのまま部屋で夕飯を作って一緒に食べたり寝ることもあった。
冗談を言い合える仲にもなった咲夜ちゃんも15歳で大人になる。
いつものように誰もいない庭の長椅子で肩を並べてお菓子を食べていると、咲夜ちゃんの口の端にクリームがついていた。
とるついでに、初めてキスをした。
温かい。
唇が柔らかくて、もう一回。
もう一回。
もっとしたくなって、肩を抱き寄せてまた一回。
息が苦しそうな咲夜ちゃんが口をあけて、舌がみえた。
あれも温かくて柔らかいと思って、咲夜ちゃんの背中ごと寄せたら舌を押し当てた。
気持ちいい。
咲夜ちゃんの体が熱くなってきて、抱きつき心地もいい。
続けていると、急に咲夜ちゃんが逃げようとする。
だめ。逃げないで。
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