瞬く間に住む魔

秋赤音

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愛は番の運命に溺れる

4.満たされた欲望と、生まれる願い

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舞踏会は、記念すべき運命の日になった。
俺の番だと印をつけるための噛み痕は、初めての夜をより艶やかにした。
痛むであろうと舌を這わせると、悲鳴を上げて啼く声は甘い。
親からもらった遺伝子を開花させ、訓練を重ねて操ることができる植物たち。
その香りで俺の番を淫らにさせて、可愛く飾った。

実験開始の宣言が下ると、毎日抱いた。
食前も食後も、急な仕事がなければベッドと浴室を往復する日々。
回収された遺伝子の調査結果は良好だと、研究者は言う。


ルシアと出会って二か月が過ぎた。
ふと、腕の中で呻くルシアの声で夜中に目が覚める。
様子を見ると、うなされているようだった。
ルシアの身元を調べたときに知った恋人の名を呼ぶルシア。
番にこだわる動物族の家ではないことも、恋人と相思相愛だったことも知っている。
それでも、離す気はない。
だから、せめて少しでも楽になれば、と思う。
幻を見せる花の香りを近づけると、呻き声は静かになった。
うなされるくらいなら、思い出さないようにすればいい。
幸せな記憶を上書きするほどの何かを与えよう。
ルシアの体は動物に近く、真人族にある月経が無いことも知っている。
恋人の名を呼び小さく喘ぎ始めたルシアの服を暴くと見えたのは、事後の名残と新たな蜜で濡れる秘部。
起きているときと同じように、熱くなる自身で敏感な奥を突いた。
恋人の名を呼びながら、艶やかに微笑み腰を振るルシア。
俺には怯え、されるがままでイくばかりだ。
羨ましくなった。
どうすれば、同じことをしてくれるだろうか。

翌朝。
ルシアは夢を見ていたことを覚えていない、と言った。
うなされていると、知らなかった。
すぐに別の話題に切り替え、日常を楽しむ。
立場の違いもあり、ルシアは聞けば過去も答えてくれる。
しかし、恋人のことだけは曖昧に終わらせてしまう。
それが気遣いなのか、離したくないのか、怖さからなのか分からない。
だが、知らなければ、つけた傷の深さを知ることもできない。

窓の外で月が輝く頃。
抱かれぐったりと疲れ眠る直前のルシアに、幻想を見せ自白効果がある花の香りを吸わせた。
そろそろ効果ができはずだ。
腕の中で寝返りをうとうとするルシアを抱き寄せる。
すると、ルシアは恋人の名を囁いた。
だから、俺も答える。

「ルシア。久しぶりに思い出話をしたいな。
ルシアの気持ちが知りたい」

「アルト…」

「きっと、夢の中くらい、許してもらえるよ」

「そう、よね。
私の指輪は壊れたけど、思い出だけは永遠よ―――」

頬を胸に摺り寄せて、楽しそうに話すルシアは可愛い。
男の名が俺でないことだけが不満だが、過去は変えられない。
適当に相槌を返しながら、交尾をするよう話の流れを作り、ルシアも同意して交わる。

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