瞬く間に住む魔

愛は番の運命に溺れる

8.戻して

スノウ・クラフと街で会った一か月後。
屋外で交尾をした状態の遺伝子がほしいと言われた。
培養器の性能を上げるために、ルシアの体を調べることも決まった。
ルシアには計画を言わないで、連れ出した。
目的のための手段である買い物は終えた。
あとは交尾をして遺伝子を回収してルシアと共に研究所へ向かう、はずだった。
しかし、問題が発生した。
ルシアと別行動になってしまった。
思い出すたびに、悔いを重ねる。
嫌がってでも、腕をつかんで離さなければよかった。

「寄った店に忘れ物をした」と言うルシアは、ついて行こうとする俺を止めて足早に移動した。
人ごみに紛れたルシアの背を追うのは難しかった。
普段からは考えられない速度だが、閑散としていれば簡単に追えていた。
香りを辿り、目的の店に着いたがいなかった。
さらに辿ると、人の気配が少ない裏路地にいた。
聞き馴染んだ甘い嬌声がする。
呼んでいるのは、恋人の。

「ルシア！」

目にしたルシアは、ドレスを着崩し、幸せそうな笑みで男に抱かれていた。
ルシアは男に抱えられていて、その首によく知る腕を回している。
見たことがない様に、体が動かない。
男は夢中で腰を振っている。
俺に気づいていないようだ。

「ルシアさん、また締めつけが強く…何度も出したのに。
嬉しいです…もう一度、さしあげますね」

「ひ、ゃぁあ…もう、だめ…っ、きた、からぁ…あっ！だめ、なの…んぁあっ！」

ルシアは俺と目が合った瞬間に、甘いばかりの瞳へ絶望を加えた。
悲鳴まじりの甘えた声に、男は応えるようさらに激しく動く。
ルシアも合わせて腰を振り始めた。
俺は、震える体を無理やり動かし路地を出る。
番を奪われた自分の弱さに苛立つ思考を落ち着かせる。