瞬く間に住む魔

秋赤音

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花は愛を乞う

狩る人

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一目惚れ、だった。
街ですれ違った、青の髪と緑の瞳。
調べると、あのスノウ・クラフ様だと知る。
実験が取柄の平民に機会があるわけないのに、焦がれた。

培養器繁殖実験と実験体が内々に選ばれ、一部に知らされた。
番を選ぶ舞踏会は六か月後。
その前に、実験繋がりで知ることができたことは幸いだった。
そして、スノウ・クラフ様の異母姉様が選ばれたことも幸いだった。
スノウ・クラフ様の母親が人の目を忍んで会いに来た。
「自分も優れている」と、娘の身を生贄に実験と同じことをさせろと言う。
もちろん、引き受けた。
対価は、スノウ・クラフ様の二人目の夫になることだった。
体を快楽に慣らすための道具を探していたので、遊びで造った後は放置していた男性器に似せた玩具を渡した。

六か月後。
スノウ・クラフ様は、舞踏会で夫を選んだ。
同行を調べると、選ばれたアルトと名乗る男には恋人がいた。
舞踏会で強制的に関係を切られた女性は、ウォル・ガディ様の妻になっている。
番主義が選んだと言うことは、本能が求める番になったことを意味する。
怖い程の執着だから、スノウ・クラフ様はきっと安心して夫と仲良く暮らせるだろう。

スノウ・クラフ様が結婚して七日が過ぎた。
買い物をするために一人で街を歩いていると、うつむくスノウ・クラフ様を避けきることができなかった。
足をねん挫したスノウ・クラフ様の手当を何度もお願いし、許しを得た。
実験室がある建物に案内し、手当を終えるとうつむく理由を聞いた。

「夫には恋人がいたのです。合意で別れているわけではないので…あ、ごめんなさい。
初対面の方に、こんなこと」

暗い声でこぼした後、作った微笑みを向けた。
未来の妻になる人の憂いを消したい。
幸せになってほしい。

「気にしないでください。
できることがあれば、ぜひ協力したいです。
生まれた子供が繋がりを強くしてくれるかもしれません。
今なら一度でたくさん作れますし。
先に体から魅了すれば、心はついてくるかもしれないですから」

「子供?たくさん?培養器がないと「あると言ったら?」

耳元で囁くと、スノウ・クラフ様は息をのんだ。

「…っ、本当、ですか?」

「本当です。ですが、個人が研究しただけの産物ですが」

「それでも、いいです。使うには、どうすればいいですか?」

必死な声で、綺麗なドレスを強く握っているスノウ・クラフ様。
スノウ・クラフ様が求めるなら、応じるだけ。
今自分にできることをするだけだ。

「定期的に私と会い、目隠しをした状態で抱かれること。
よりよい培養環境を整えるために、母体の細胞を提供すること。
夫と性交した後に子種を回収して提供することです」

「分かりました。誰にも秘密の契約です」

「はい。誰にも、秘密です」

初めて名を交わし、熱を交わし、スノウ・クラフ様の隅々まで味わった。
「こうすれば男は悦ぶ」と言えば、なんでも、してくれた。
三日に一度の逢瀬の約束は、守られている。
夫婦生活も良好らしいのは、回収した道具の本数でわかった。
自分だけが管理する培養器は、スノウ・クラフ様と私の遺伝子用とスノウ・クラフ様夫妻用がある。
夫の心の向きに悩むスノウ・クラフ様に、記憶操作の薬の存在を知らせた。
興味を持った様子だった。
求められれば渡そう。
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