瞬く間に住む魔

秋赤音

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合いし愛して

異変

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彼の様子がいつもと違う。なぜだろう。今はゆっくり考えている時間がない。
まずは逃げる、ことができないなら少しでも距離をとること。
だが、わずかにできた隙間を許さないような彼の腕が私の体を寄せる。下肢で事中に聞きなれた音がした。
離れなければ。
嫌な予感しかしない。使いたくなかったが今だけは血の力に頼ろう。ベッドに染みこんだ体液を元に拘束用の触手を造る。彼の腰や関節を固定して身動きを止める。

「フィーナ…フィーナが使うなら、俺も、いいのかな。お屋敷にきて、ずっと我慢していたけれど」

「ええと?待って?今は、少し休ませてほしっ、ぃ…リン、待って。触手を触手で撫で…っ?!」

彼の出した触手が私の造る触手に絡みつく。色素が違うそれらが美しい螺旋となって、皮膚接触と違う感触に戸惑う。
植物族同士の交配でできた凶器にもなる私の触手より淡色で繊細な優しい触手。惑わせて誘い込むにはちょうどよさそうな触手だ。幸い距離ができている。このまま彼を拘束して、ベットに固定しよう。

「わっ…さすが純植物交配。強いなあ。そうだ、後始末も触手でしよう。俺も、頑張るから。こう、して…」

ベッドの隅へ仰向けに押さえつけられた彼が微笑む。私はそっと反対側の隅に逃げて、彼と繋がる触手を断つ。さらにゆっくりと距離をとる。雄の証はまだ滴り雌を誘っている。新たに生まれた触手もベッドに押さえつける。
だが、突然に背後からナカに、

「ぁ、あ…っ」

細い触手が。間に合、わない。

「ふぁあああっ、なんで、もう…体がぁああっ」

するりと入りきた触手がナカで育ち、奥まで大胆に強くうねり吸われながら蹂躙される。
彼は気性が穏やかな交配の遺伝子のはずだった。あるいは四男として生きてきた性格か。わからない。目的外の行為に何の意味がある。

「今、キレイにするから、動かないでね」

数を増やしながら足首を這い、彼の方へ尻が向くよう固定された。さらに腹の表面をなぞりながら腕まで拘束された。さらに枝分かれした繊細な一本ずつが強く吸いつき汗まで消す。
抗えず何度か絶頂しながら後処理まで終わると、所々にうっ血した痕が残っていた。
彼の拘束を解き、疲れきった私を抱き上げた彼そのまま浴室の湯へつかる。体を彼に預けたまま結果の原因を考えるが、わからない。
ふと、彼がため息をついた。

「ごめんなさい。でも、俺だって番を得た直後の症状は出てもしかたないの、わかりますね」

「そうね」

本能的な行動は考えやすい。だが、私には分からないこともある。発情しても外出していた両親を見て育ったせいだろうか。姉妹はいても母体が違うし、護衛を連れて出歩いていれば知らない誰かと肌を重ねる両親も見たことがある。
半分は獣の血でも気性は穏やかな彼が何にこだわっているのか、わからない。

「二度と、誰かに奪われそうな状況に向かおうとしないでください。
俺は、自分が考えていたよりも獣の本能が疼いて我慢が難しいようです」

「もし、意図せず起こった場合はどうなるのよ?」

「…させません。奪われるくらいなら」

不自然に切れた言葉を待っていると、彼が私の腕をとり舌でなぞる。驚いて肩をはねてしまうが、同じ場所へ彼の歯が立てられ少しの痛みがあった。
血がにじむ腕を慈しむように舐める彼は幸せそうに微笑む。

「痛かったですよね…ごめんなさい。フィーナは血まで甘いです」

「痛かったですけれど。不安にさせて、ごめんなさい。私が求めるのはリンだけよ」

「俺もフィーナだけです。フィーナ…俺、我慢も、優しくするのも頑張りますから」

縋るように抱きしめられ、返す言葉が分からなかった。彼と役割を果たすために、私にまだ足りないものがあることだけは分かる。生家では不要だった、得る機会が無かった何かだろう。
湯からあがると、寝られるようベッドをキレイに直した。開き直れば触手は便利だ。
互いに背を向けて、彼の気配を感じながら眠ることには慣れた。
体力を使い切る限界を見極める事を確実に身につけなければ、と目的達成の手段になる一つを確認し、眠る。

5日目の昼。気怠い体で申請される様子を眺めていた。夕刻には届けられ、ようやく本来の練習に戻れると安心した。
しかし、私の発情が完全に収まったのは蜜月の後。あっという間に3か月が過ぎていた。
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