瞬く間に住む魔

秋赤音

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合いし愛して

2.思案

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出会いから六か月後。
本能的な肉欲に偏らない行為を行うために決めごとをした。原因は互いの理性不足だった。
3か月という長めだった雌の発情が終わった後も、肉欲が優位になっていた発情期とあまり変わらない日が続いていた。採取を忘れかけることもあり、目的に合っていない行為を問題とした。解決するために決めた追加の決まりは、今のところ守られている。
彼が暴走する理由はまだ分からないが、少なくとも番を奪われる危機意識に触れないよう行動している。
分からないのは、本能的危機でない場面での暴走が増えていること。外出のために気合を入れて身なりを整えたときも、作った料理を褒められて嬉しかったときもそう。外出先で異性に声をかけられてから、稀に甘噛みされることもそう。彼がくれた贈り物にお礼を言ったときも、なぜ暴走するのか、
しかし、万が一にも妊娠すると問題しかない。幸い触手で清掃できるおかげか、今のところ兆しがないことに安心しながら今後の管理を徹底しなければいけない。

今夜も約束の時間が来る。あとは眠るだけの夜着を着てソファに座り、窓越しに月の傾きを眺めていた。
すると、いつの間にか耳に馴染んだ足音が聞こえる。足音の主である彼は目の前でとまって、私へ手を差し出した。

「昨日はとてもよくしてもらいました。
今日は、全部俺がします。動かないでください」

「はい」

「そういって、二度に一度は逃げようとするのは誰ですか」

差し出された手をとると、体が浮く。これも約束の内と、迷うことなく抱き上げた彼の首に腕を回す。歩き始めた彼が向かうのは、当然ベッド。まだ睡眠をとるために用意されているだけのベッドが、今日も儀式の場となる。
事後に必ず行うベッドの皺直し。どうせ後で皺が寄ったとしても綺麗に直すのは自分が落ち着くためでしかない。

「二度に一度は採取を忘れそうになるのは誰ですか」

「俺です。でも、約束の日は自分で道具を入れようとしないでください。
試されていると勘違いしてしまいます」

「試したことは一度もないから、勝手に勘違いしないで」

「採取するか疑っていますね?」

それは彼も悪いと思うが、採取されず肉欲的な行為になりそうだと逃げてしまう。逃げて、安全を確保してから採取するのが一番良い。当然のことだと思う。
疑っているのではなく、確実に目的達成するためだけの行動でしかない。

「いいえ」

「いいえ。少なくとも俺はそう感じています。
採取し損じやすいとき、よく逃げられます。俺も悪いですが、信じられないのは寂しいです」

「では、逃げないよう拘束すればいいでしょう。互いの不安は良質な遺伝子採取に影響が出るかもしれない」

「…そう、ですね。できれば、しなくないですけれど。今日は、拘束します」

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