魔界饗宴 ・外伝 ケルベロスの花嫁

由宇ノ木

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装いが整うと、スタイリストに促されて、少し動いてみた。

コルセットがきついかと思ったが、意外とそうでもなく、これなら食べたいものも食べられそうだと思った。

ドレスをふくらませるためのパニエの何重にもなったチュールが豪華で、これだけでもいいんじゃないかしら?と思った。

なんにしろ普段の服と変わりなく動けることに安堵した。

「おきれいですよ」

後ろから声がしてびっくりして振り向くと、スタイリストはもうおらず、かわりに黒髪の青年がいた。

整った顔立ち、瞳はグレイ。

『貴女のお世話をするように仰せつかりました。おそばに控えておりますのでわからないことがあったらお聞きください』とその青年は言った。

女は大広間へと案内された。音楽が聞こえる。

「お早くいらした方々がもう踊ってるんです。」

青年が言いながら扉を開けると、すぐに男たちが近寄ってきた。ここに招いてくれた社長もいた。

「これは美しい。最初のダンスはもちろん私とだろうね?」と笑いながら声をかけてきた。

「もちろんです」と微笑んで二人は踊りの輪の中に入っていった。

夢のような時間だった。

次々とダンスの相手を申し込まれた。

小鳥のようにいろんな男性の間を渡り歩いて手をとって踊り、他愛ないおしゃべりに花を咲かせ、甘いお酒に軽く酔う。

どこで踊っていても、黒髪の青年が控えていてくれる。

こんな世界を体験できるなんて、
夢のようってこういうことを言うのねきっと――

酔いがまわり、庭に出てくると言うと、黒髪の青年がお供いたしますと言ってくれたが、一人になりたくて断った。

庭に咲くバラが暗闇に一瞬しなやかに揺れ、この夜は生涯忘れまいと思った。



そう、忘れられない夜となった。




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