魔界饗宴 ・外伝 ケルベロスの花嫁

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サタンの横にはリリスの座がある。やはり人間であるが、こちらは男達で造られた座だった。

サタンの第一夫人・魔界の女王リリスは黒の薄い総レースのドレスでその座についており、赤いワインを口にふくむとクスリと笑い、サタンに話しかけた
「あなた・・、悪魔どもがひそひそと噂話をしていてよ」
サタンはリリスの言葉に笑みをこぼすと、
「退屈しのぎにちょうどよい・・」
そう言うと、サタンは真正面をみつめた。

真正面は魔王ルシフェルの席であった。
ルシフェルの右横に白いドレスにマリアベールのジョゼフィーヌがいた。魔王の第三夫人。
左横には、ネイビーカラーのシックなドレスに身を包んだ、第二夫人リュドミラがいた。

魔王ルシフェルの第一夫人もまたリリスであった。
天界を裏切り悪神サタンに忠誠を誓った日、サタンは己の妻をルシフェルに与えた。リリスを共有することで、ルシフェルはサタンの忠実なる者として、魔界の王の座を手にしていた。

「見たまえ。どこもかしこも美しい。フランスのベルサイユ宮の趣もあるが、それらを凌ぐ素晴らしさだ」

ルシフェルがジョゼフィーヌの腰を抱いて引き寄せた。

 「・・はい、とても美しゅうございます」

 何かを言いかけたがジョゼフィーヌはそれを口にしなかった。

「ああ、そういえば君はベルサイユ宮には出向いたことがなかったね。スイスの屋敷から外に出ていないだろう？人間界に戻ったらセルジュを連れて訪ねてみるといい」

ルシフェルには何気ない言葉だったかもしれない。
しかしジョゼフィーヌの心には哀しみばかりが広がった。