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しおりを挟む「何が聖女だ!ただの雌ではないか!他の女とたいしてかわらん!」
ベールの真向かいに座するベルゼブブが、ジョゼフィーヌの踊る姿を見て言葉を吐き捨てた。
ベルゼブブもまた魔界の四大実力者に名を連ねる悪魔である。
しかし、魔界の統率を任せられる王の地位をルシフェルに突然奪われ、ルシフェルに対する反発は誰よりも大きかった。
かつて魔界の王の地位をベールと争い、あと一歩のところだったのを、サタンはルシフェルと密約を結び、あっさりと王の地位を与えてしまったのだ。
「サタン様もどうかしておられる!あのような女に・・!」
「ただのお戯れでしょう。退屈しのぎの。」
ベルゼブブの忠実なる召使いヘンリーは、焼きあがったばかりのレアな肉をナイフで切り分け皿に盛りつけると、上から真っ赤なソースをかけた。そして、肉の横には主人ベルゼブブの好きな、女の白く長い指を三本添えた。爪が変色しないよう気をつけたが、口にした時の触感はどうだろう?
ベルゼブブは気にいらないと即座に首を跳ね飛ばす。
今までどれだけの召使いが首を落とされたことか。
それでも以前よりはマシだ。即座に死ねるなら。
以前のベルゼブブは拷問好きで簡単には死なせてはくれなかったからだ。
ヘンリーは細心の注意を常に払っていなくてはならなかった。
「ワインに合うように少し甘めに味付けました」
「ふむ・・。美味そうだ」
ベルゼブブは真っ先に女の指を口にした。
骨の触感がベルゼブブは好きだった。
「良い触感だ」
舌で唇を舐め、ベルゼブブは満足した。
「だが・・、退屈しのぎか。お前はそう思うか?」
「はい。魔界に堕ちながらも魔界には属さず、かといって天界にも属していない。なのに人でもない。あの不老不死の肉体は解せぬ存在ですので、興味がおありなのでしょう」
「確かにな。解せぬ存在なのは確かだ。だが、気に食わん!」
「今宵の宴であの者がどのように乱れるか・・、一興かと思いますが・・。」
ヘンリーの言葉に、ベルゼブブはふと気付いた表情をし、声を出して笑った。
「なるほどな!今宵の宴、そういう楽しみがあったか!」
「なにやら馬鹿が大声で笑っておるな」
ベールは肩肘をつき、真向かいのベルゼブブの席をちらりと見てつぶやいた。
ジェイスンは新しいワインの瓶をあけ、グラスに注ぎ、困惑がちに言葉を口にした。
「ご主人様、先ほども申し上げましたが・・・」
「かまわぬ。気付くまいよ。馬鹿だから」
「・・・」
主人の言葉にジェイスンが小さくため息をつくと、ベールはクックッと小さく笑った。
大広間の中央では、軽やかに踊るルシフェルとジョゼフィーヌを見て、皆、感嘆のため息をこぼしていた。
容姿の美しさだけでなく、本来なら天界の神に仕える二人である。その二人を魔界は手に入れたのだという事実は自尊心をくすぐり、悪魔達を心地良くさせていた。
二人の境遇のギャップは悪魔達には魅力的であった。
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