魔界饗宴 ・外伝 ケルベロスの花嫁

由宇ノ木

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魔界一陽気な悪魔と囁かれるアスタロト公爵は、小悪魔達や下級悪魔達だけでなく、他の高位上級悪魔達からも礼を受ける。

魔界の大公爵と言われる、魔界でも高い地位は、魔王・ルシフェルの部下になったとは言え失われてはいなかった。
なによりも、かつての戦いでのアスタロトの冷酷さを知る者も多く、ほとんどの上級悪魔はアスタロトを怒らせることは避けている、というのが本当だった。

ただ一人をのぞいては。


「いいかげんにせんか!!貴様!!!サタ・・、ご城主様に真っ先に挨拶もせずに何様のつもりだ!!!」

怒りに我を忘れて、『サタン様』と言いかけてすぐに言い直したのは、後ろで控えていた召し使いヘンリーの慌てた声がしたからだ。
アスタロトが来ないと知ってせいせいしていたのに、前触れもなく突然現れたのだ。腹が立って仕方がなかった。だからといって軽々しくサタンの名を口にしていいわけではない。招待された生け贄の人間達の耳に入れてはいけない。記憶が消えるからと言って、わずかな瞬間でも何かを気づかせてはもともこもない。希ではあるが、妙にカンの鋭い、疑問を忘れない人間が紛れ込んでいるときがあるのだ。


ベルゼブブは観覧席から身をのりだし、アスタロトに向かって正当な言い分としての罵声を浴びせた。


「だいたい貴様は列席を断ったではないか!貴様の席など用意されてはおらん!!とっととね!」

ベルゼブブに応じる気はなかったが、いつまでも罵声を浴びるのは趣味じゃない。
アスタロトはとりあえず挨拶だけはしておくかと、振り向いた。


「ご城主様ー!私、ちょっと立ち寄っただけですからーー、席はお気になさらずにー!!豪華なお城ですねー!本日は完成おめでとうございまーーす!!」
両手をブンブン振り、最後は万歳ポーズをしながら高座にいるサタンに向かって叫んだ。


「貴様!!!サ・・、ご城主様に向かってなんたる態度!!礼儀をわきまえろ!!!来て挨拶せんか!!!」


「やれやれ、去れと言ったり来いと言ったり五月蝿うるさい奴だな。さすが蝿王はえおう

アスタロトが呆れ顔でポソリとつぶやくと、ベールがクッと口元をおさえつつ笑い、ベルゼブブがすぐさまさらに興奮した形相で叫んだ。


「貴様ら!!いまオレをバカにしたな!!」


「貴様らとは私も入っているのか?」
ベールが不本意そうにアスタロトに聞いた。
「だろうね」
「大変な巻き込み事故だな。一緒にしないでくれたまえ」
「そんなこと言うなよベール、私達はお友達じゃないか。遠慮せず巻き込まれておくれよ」
「ごめんこうむる」


三人のやり取りを、大広間の悪魔達は見てみぬふりでやりすごしていた。笑いたくとも笑えず、下手に笑ったらベルゼブブに恨みを買うことになる。
それこそ巻き込まれるのはごめんだった。





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