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しおりを挟む「本当はもう少し早く迎えに来れるはずだったが、あの少女達を森から追い出すのに手間取ってね。あのあたりを歩いているということは、すぐ戻ってきたんだろうな。一度は外界に戻ったのに自分達の意志でここまで来たのだ。忠告を受け入れず己の意志を貫くならば私に出来ることはもうない。かわいそうだが獣の餌食になっても仕方がない。それでも」
アスタロトが何か言いかけたが、馬車の外から護衛隊が大声でアスタロトの名を叫んでいた。
「アスタロト様!アスタロト様!!」
それでも城にたどり着く前に獣の餌食になるならその方がまだましだ
城で彼女達を待ち受けているのは━━━
「ケルベロスです!ケルベロスが追いかけてきます!!」
「ケルベロスか、これまためんどくさいのを放ったな。リリス様も意地の悪いお方だ」
「アスタロト様・・!」
「結界を張ろう。少し息苦しいかもしれないが、我慢しておくれ」
アスタロトはジョゼフィーヌの両手を握りしめ指先に口づけをすると、左手の手袋を外した。
青い左手。
アスタロトの左手からは青い炎が吹き出し、馬車全体を包みこんだ。と、同時に、アスタロトは馬車の上に飛び乗った。
ケルベロスが猛追してきている。
「3・・・4・・」
5頭か・・・。
アスタロトは最小限の力でケルベロスを倒さなければならなかった。
今宵、祝宴の夜、不用意に力を出して派手に戦えば、それは魔界の神・サタンへの宣戦布告とも取られかねない。
その頃、リリスは高座から大広間に降りて、宴に訪れた者達をもてなしていた。
姿を現した城主の夫人・リリスの艶やかな笑みに、皆、我先にと、こぞって挨拶に伺っていた。
リリスが現れるのは、最も機嫌の良い証だった。
ケルベロスを放ってやったが、何頭いようと、アスタロトなら殺さずに倒すだろう。
問題はどの程度の力を使うのか。
我々の知らないアスタロトの未知の力を引っ張り出せれば面白いのだが
興味深い展開になったとリリスは思った。
だが、リリスの機嫌が良かったのはそこではなかった。
森の番人から、アスタロト公爵に追い払われた人間の少女が二人、再び城に向かっていると報告を受けたのだ。
思いもかけない報告に、リリスの胸が踊った。
今宵の宴の最高の生け贄になるではないか。
生娘ならばなお素晴らしい凌辱の夜を過ごせるだろう。
アスタロトはケルベロスを倒すのに手がいっぱいで、人間の少女達を助ける余裕などは今度はないのだから。
リリスは魔界の饗宴の始まりを高らかに告げた。
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