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肩まであるまっすぐな黒髪をきっちりと後ろに撫で付けて、黒の衣装に身を包んでいるベール。
ベールのテールコートは黒と銀糸の刺繍が施され、落ち着きながらも華やかさを醸し出している。
端正な顔立ちが優男のように思わせるが、魔界の四大実力者の地位にいるベールは、ルシフェルにとってかわって、魔界の統率者・王になってもおかしくない悪魔であった。
「ルシフェル、君の美しい新たな奥方を紹介してくれないか?私はサタン様との目通りの夜会にはいなかったのでね」
「ベール・・。そうか、君はあのとき領地の視察に行ったんだったね」
「小さな火種はあっという間に大きな炎になる。放っておくほど馬鹿ではないよ」
ベールの言葉にルシフェルはクスリと微笑んだ。
「ジョゼフィーヌ、こちらはベール公爵だ。魔界でも大変身分の高い方だ。挨拶を」
ジョゼフィーヌはベールの瞳をみることなく深く礼をした。瞳をあわせれば、自分がいまどんなに男を欲しがっているかを見透かされそうで怖かった。
ベールはそんなジョゼフィーヌの手をとりくちづけた。
「美しいかた、次に貴女と踊る名誉を私に与えていただきたい」
ジョゼフィーヌはベールの礼儀正しさにやや戸惑いをみせ、返事に困った。
「踊ってきたまえ。今後は彼の主催する夜会に招かれることもあるだろうから。私は席で君たちの舞いを堪能させてもらうよ」
グラスに注がれているのは果たしてワインなのだろうか?
トロリとした紅い液体を、サタンは味わうように一口だけ口にした。漆黒の瞳はジョゼフィーヌとその手をとるベールをとらえたままだった。
「ベール公爵もジョゼフィーヌをお気にめしたようですわね」
リリスが微笑んでささやくと、サタンもまた微笑んだ。
「くそっ!ベールの奴、早々にあの雌に取り入る気か!」
ベルゼブブはベールに出し抜かれたことを感じ、踊り始めた二人に悪態をついた。
体を引き寄せられ、ジョゼフィーヌは自身の体がますます男を求め崩れ落ちそうなのを耐えていた。
体の熱にいつまで耐えられるだろう?
濡れだす両足の間から滴る女の蜜に気付いて、男たちははやるだろう。
そして―――
ジョゼフィーヌは歯を食いしばった。
「私の瞳を見なさい。美しいかたよ」
ベールの声にドキリとした。
「さあ、早く。少しは落ち着くはずだ」
ジョゼフィーヌは意味がわからずふとベールを見上げた。
紺碧の瞳にとらわれたと思った瞬間、ジョゼフィーヌの淫欲の火種は消えた。
「私の力は淫欲を静めることができるのだ。悪魔にあるまじき力かもしれぬが」
静かに微笑みながらベールが言うと、ジョゼフィーヌがためらいがちに言葉を発した。
「・・・ベール公爵様のお立場が悪くなるのでは・・」
「心配は要らぬ。ルシフェルは確かに魔界の統率者だが、立場で言えば私とルシフェルは同等の地位なのだ。それに・・早いところ借りの一つを返さねばならぬしな。彼はこのような場で貴女が辱めを受けるのを好まないだろうから」
「━━━」
彼?誰のことを言ってるのだろう?
ジョゼフィーヌは思った。
「ほら、来たようだ。貴女の二人目の━━」
言いかけたベールの目が大広間の扉に向けられた。扉の向こうから何やら声がして、やがて扉が開けられた。
「アスタロト公爵様、お着きでございます」
その名に場内がざわついた。
列席を断ったはずの魔界の大公爵・アスタロトが現れたのだ。
ベールのテールコートは黒と銀糸の刺繍が施され、落ち着きながらも華やかさを醸し出している。
端正な顔立ちが優男のように思わせるが、魔界の四大実力者の地位にいるベールは、ルシフェルにとってかわって、魔界の統率者・王になってもおかしくない悪魔であった。
「ルシフェル、君の美しい新たな奥方を紹介してくれないか?私はサタン様との目通りの夜会にはいなかったのでね」
「ベール・・。そうか、君はあのとき領地の視察に行ったんだったね」
「小さな火種はあっという間に大きな炎になる。放っておくほど馬鹿ではないよ」
ベールの言葉にルシフェルはクスリと微笑んだ。
「ジョゼフィーヌ、こちらはベール公爵だ。魔界でも大変身分の高い方だ。挨拶を」
ジョゼフィーヌはベールの瞳をみることなく深く礼をした。瞳をあわせれば、自分がいまどんなに男を欲しがっているかを見透かされそうで怖かった。
ベールはそんなジョゼフィーヌの手をとりくちづけた。
「美しいかた、次に貴女と踊る名誉を私に与えていただきたい」
ジョゼフィーヌはベールの礼儀正しさにやや戸惑いをみせ、返事に困った。
「踊ってきたまえ。今後は彼の主催する夜会に招かれることもあるだろうから。私は席で君たちの舞いを堪能させてもらうよ」
グラスに注がれているのは果たしてワインなのだろうか?
トロリとした紅い液体を、サタンは味わうように一口だけ口にした。漆黒の瞳はジョゼフィーヌとその手をとるベールをとらえたままだった。
「ベール公爵もジョゼフィーヌをお気にめしたようですわね」
リリスが微笑んでささやくと、サタンもまた微笑んだ。
「くそっ!ベールの奴、早々にあの雌に取り入る気か!」
ベルゼブブはベールに出し抜かれたことを感じ、踊り始めた二人に悪態をついた。
体を引き寄せられ、ジョゼフィーヌは自身の体がますます男を求め崩れ落ちそうなのを耐えていた。
体の熱にいつまで耐えられるだろう?
濡れだす両足の間から滴る女の蜜に気付いて、男たちははやるだろう。
そして―――
ジョゼフィーヌは歯を食いしばった。
「私の瞳を見なさい。美しいかたよ」
ベールの声にドキリとした。
「さあ、早く。少しは落ち着くはずだ」
ジョゼフィーヌは意味がわからずふとベールを見上げた。
紺碧の瞳にとらわれたと思った瞬間、ジョゼフィーヌの淫欲の火種は消えた。
「私の力は淫欲を静めることができるのだ。悪魔にあるまじき力かもしれぬが」
静かに微笑みながらベールが言うと、ジョゼフィーヌがためらいがちに言葉を発した。
「・・・ベール公爵様のお立場が悪くなるのでは・・」
「心配は要らぬ。ルシフェルは確かに魔界の統率者だが、立場で言えば私とルシフェルは同等の地位なのだ。それに・・早いところ借りの一つを返さねばならぬしな。彼はこのような場で貴女が辱めを受けるのを好まないだろうから」
「━━━」
彼?誰のことを言ってるのだろう?
ジョゼフィーヌは思った。
「ほら、来たようだ。貴女の二人目の━━」
言いかけたベールの目が大広間の扉に向けられた。扉の向こうから何やら声がして、やがて扉が開けられた。
「アスタロト公爵様、お着きでございます」
その名に場内がざわついた。
列席を断ったはずの魔界の大公爵・アスタロトが現れたのだ。
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