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「記憶を消したのではないの?ケルベロス」
紅茶を一口のみ、ティーカップを置く仕草ですら優雅なリリス。
リリスは叫び声を聞いて、窓辺に立つ青年に問いかけた。
まだティーンエイジャーのような顔つきの青年はリリスに向かって振り向くと、口の端を少しだけあげて微笑みを浮かべた。
「・・彼女には僕らと交尾したことを忘れてほしくない」
青年の後ろから差し込む朝の陽光が眩しい。グレイの髪が陽光に透けて、銀色に輝きをましている。
まるで、神聖さを漂わせた、陽光に染まる一枚の絵のように美しい。
自由に人の形をとることができる高位の魔獣でも、これだけ原型とかけはなれたものはいるまいとリリスは思った。
「ずいぶん気に入ったようね」
「ようやくみつけた花嫁ですからね」
「では逃がさないようにしなくてはね。この城で飼う?」
「いいえ、彼女には人間社会に帰ってもらいます」
「なぜ?」
「彼女は帰る必要があるからです」
「・・いいわ。好きになさい。彼女はあなたのものなんだから」
リリスはティーテーブルから立ち上がると、青年に近づいた。すぐ目の前に来ると、頬にそっと手を寄せた。
リリスのひんやりとした手の心地良さを少しの間感じ、「やっとみつけたんです」と静かに言った。
リリスはそんな青年の頬を愛しそうに撫でさすり、深い口づけを与えた。
まるで年若い男を情夫にしてる女主人のようだ。
長い口づけのあと、リリスは青年の胸に顔を埋めて抱き締めた。
「ケルベロス・・いいえ、人型のときはケインだったわね」
「はい」
「アスタロト公爵が異空間に閉じ込めたあなたの分身がさっき戻ってきたわよ。あとで労ってあげなさいな。アスタロトの隠された能力を一つ、暴いてくれたのだから」
「ええ、そうします」
人の形をとっているケルベロス・・、ケインは、リリスの部屋を出て、泣き叫ぶアンバーの元へと向かった。
これまでも人間の女は試してきたが、どの女もすぐに死に至った。死ななかった女も精神が崩壊し、結局は死に至った。
人間としての尊厳が失われた時、自分の中の隠されていた悪夢に似た性癖に気づかされた時、たいていの人間の精神は耐えきれないのだと知った。
自ら花嫁になりたいと申し出る女たちもいたが、そういう輩は魔犬たちに拒否をされた。
魔獣の頂点に立つケルベロスの花嫁になれたら、魔界での権力を得られるとでも思っているのか。
魔犬たちはすぐに見抜いてしまうのに。
獣姦という性癖の持ち主でも試したが、妊娠の段階を迎えると狂うのだ。子供ができるとは思いもよらぬことなのだから。例え狂っても産めるならまだいい。
だが、異常をきたした女たちから産まれる子どもたちは体が弱く、育たなかった。
だが、アンバーという女は、尊厳の消失も、己の性への欲望も受け入れた。快楽を得るために、魔犬たちに肉体を開いたアンバーに、ケインは期待した。
今いる魔犬たちは、野犬のメスとケインが交尾して産まれた魔犬だ。そのせいか、野犬の性質が強く、魔犬としてはあまり長くはもたないだろうとケインは考えていた。
とにかくアンバーは、第一段階をうまくクリアしたのだ。
あとは彼女に己の変化を理解させるだけだった。
紅茶を一口のみ、ティーカップを置く仕草ですら優雅なリリス。
リリスは叫び声を聞いて、窓辺に立つ青年に問いかけた。
まだティーンエイジャーのような顔つきの青年はリリスに向かって振り向くと、口の端を少しだけあげて微笑みを浮かべた。
「・・彼女には僕らと交尾したことを忘れてほしくない」
青年の後ろから差し込む朝の陽光が眩しい。グレイの髪が陽光に透けて、銀色に輝きをましている。
まるで、神聖さを漂わせた、陽光に染まる一枚の絵のように美しい。
自由に人の形をとることができる高位の魔獣でも、これだけ原型とかけはなれたものはいるまいとリリスは思った。
「ずいぶん気に入ったようね」
「ようやくみつけた花嫁ですからね」
「では逃がさないようにしなくてはね。この城で飼う?」
「いいえ、彼女には人間社会に帰ってもらいます」
「なぜ?」
「彼女は帰る必要があるからです」
「・・いいわ。好きになさい。彼女はあなたのものなんだから」
リリスはティーテーブルから立ち上がると、青年に近づいた。すぐ目の前に来ると、頬にそっと手を寄せた。
リリスのひんやりとした手の心地良さを少しの間感じ、「やっとみつけたんです」と静かに言った。
リリスはそんな青年の頬を愛しそうに撫でさすり、深い口づけを与えた。
まるで年若い男を情夫にしてる女主人のようだ。
長い口づけのあと、リリスは青年の胸に顔を埋めて抱き締めた。
「ケルベロス・・いいえ、人型のときはケインだったわね」
「はい」
「アスタロト公爵が異空間に閉じ込めたあなたの分身がさっき戻ってきたわよ。あとで労ってあげなさいな。アスタロトの隠された能力を一つ、暴いてくれたのだから」
「ええ、そうします」
人の形をとっているケルベロス・・、ケインは、リリスの部屋を出て、泣き叫ぶアンバーの元へと向かった。
これまでも人間の女は試してきたが、どの女もすぐに死に至った。死ななかった女も精神が崩壊し、結局は死に至った。
人間としての尊厳が失われた時、自分の中の隠されていた悪夢に似た性癖に気づかされた時、たいていの人間の精神は耐えきれないのだと知った。
自ら花嫁になりたいと申し出る女たちもいたが、そういう輩は魔犬たちに拒否をされた。
魔獣の頂点に立つケルベロスの花嫁になれたら、魔界での権力を得られるとでも思っているのか。
魔犬たちはすぐに見抜いてしまうのに。
獣姦という性癖の持ち主でも試したが、妊娠の段階を迎えると狂うのだ。子供ができるとは思いもよらぬことなのだから。例え狂っても産めるならまだいい。
だが、異常をきたした女たちから産まれる子どもたちは体が弱く、育たなかった。
だが、アンバーという女は、尊厳の消失も、己の性への欲望も受け入れた。快楽を得るために、魔犬たちに肉体を開いたアンバーに、ケインは期待した。
今いる魔犬たちは、野犬のメスとケインが交尾して産まれた魔犬だ。そのせいか、野犬の性質が強く、魔犬としてはあまり長くはもたないだろうとケインは考えていた。
とにかくアンバーは、第一段階をうまくクリアしたのだ。
あとは彼女に己の変化を理解させるだけだった。
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