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恋人はメリーさん 1
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パリコレにも出展している洋平先生の直営店で店長をしている私・東雲結は、長年想ってきた男性に失恋し、失恋ついでにさっさと違う人と結婚してしまうという、なかなかハードな人生を歩んでいます。
結婚後も仕事は続け、本日から冬の50%OFFセールウィークに突入することもあり、気合いがみなぎっているところでもあります。
私は今日も店の優秀なハイエナ達を操り、店の売り上げNo.1を目指し、邁進するのであります。だからボーナスたんまりクレクレ。
開店前、朝のミーティング。
伝達事項、注意、その他いろいろ。
ハイエナは三名全員出勤。
「当店は本日から50%OFFセールウィークに入ります。普段は来店しないお客様も多数来店すると予測されるので、どのようなお客様にも笑顔で丁寧な接客を心がけるようにしてください」
「カモネギ来襲ウィーク突入」
宝飾等アクセサリー専門の
ハイエナ一号・小林真奈
「下手な鉄砲も数打ちゃ当たるとな?」
帽子・靴専門のハイエナ二号・富田洋子
「どのようなカモネギ様にも笑顔で罠を仕掛けて打ち落とせとは店長もなかなかワルですな」
服飾デザイナーをやめたあと、占い師に転職した一番の変人、(当店に勤めながら現在も占い師をやっている)ハイエナ三号・須藤七瀬
「やかましい!わかったらさっさと店開けろ!!」
ほんとにこいつらの頭の中はどうなってるんだ。
「ん?」
なんだろう?
背筋がざわざわする。
誰かが私を見ている・・?
誰だ!
私は素早く振り向いた。
国を死守する防衛の要の大学で鍛えられたこの俊敏さに敵う者などいない!
「・・・・」
あれ?
誰もいない。
気のせいか・・・
「店長、何してるんですか?」
「遊んでるんですか?」
「あなたの後ろに誰かいるごっこ?」
「いや、なんだかずっと見られていたような気がして・・」
「ストーカーですか?」
「変質者に目をつけられたとか?」
「あなたの隣に誰かいるごっこ」
「気のせいだったのかな・・」
「あなたの前に誰かいるごっ」
「前にいるのはお前らだよ!!しつこい!!仕事しろよ!仕事をよ!!」
それにしても・・・
なんか気になるな・・・
私のカンは当たっていた。
確かに私は見られていたのだ。
彼女に。
「あのひとが新しいメリーさん・・・」
向かい側の建物の影から私を見つめていた女性は、
この時すでに私のことをメリーさんと名付けていた。
私は不思議に思いながらも、
きっと誰かが50%OFFのウインドウを見てたんだろうと自分に言い聞かせていた。
ウインドウの仕上がりはいいと思うんだけど、
色違いのバッグをおいてもう少しメリハリをつけるか・・
店の顔とも言えるショーウインドウの役割は大変重要だ。
いかにお客様の興味を惹くか、店長の腕の見せ所でもある。
私はバッグをひとつ持ちウインドウに近づいた。
「あ、・・・」
仙道先輩だ。
ウインドウの外、仙道先輩の車が止まった。
「仙道先輩にちょっと挨拶してくるわ。このバッグも出してちょうだい」
「結婚したばかりなのに」
「早くも不倫」
「修羅場劇場開幕」
「無理やりこじつけんな!ただの挨拶だよ!挨拶!!」
こいつら隙あらば修羅場を作り上げようとしやがる。
油断禁物だな。
「先輩、」
「東雲」
「お早うございます」
「どうだ?新婚生活は」
仙道京司朗━━━
大学時代の憧れの先輩。某組織若頭・・というか、結婚したから違うんだろうか?代表とか社長とかになったんだろうか?
「新婚生活と言っても一年一緒に暮らしてましたし、なんかいつもと変わらないです。先輩こそどうですか?」
先輩は思い出したようにクスリと笑って、
「そうだな、予想外の連続でなかなか面白くて困ってる」
ああ、ほんとにいい顔で笑うなぁ。
困っちゃうくらい幸せかぁ。
「ごちそうさまっス」
というと、「ばかやろう」と照れ隠しの咳払いににらみをきかされた。
先輩、変わったな。
以前の先輩ならそんな顔、絶対しなかったもの
私達は軽い会話を交わし、仙道先輩は三階のオーダースーツの店へと行った。
このビルに立ち寄るのはほとんどスーツの新調の為だ。
それにしても奥様はどんな女性なんだろう?一回お会いしてみたい。
惣領会長のお嬢様と聞いて、もしや政略結婚かと思ったけど、先輩の顔を見てるとほんとに惚れてるんだろうなとわかる。
抗争相手から守るために隠して育てたお嬢さんなんだとか。
きっとおしとやかなかわいいお嬢さんなんだろうな。
先輩の去ったほうを見つつ、店内に戻ると、ハイエナどもが円陣組んで何かこそこそしていた。
「おいこら何を企んでいる」
私はハイエナ達に声をかけた。
が、ドアベルが鳴ったため私は急いで営業用ニッコリでとりつくろい、「いらっしゃいませ」と声をかけた。
さっそく50%OFFのカモ・・じゃない、お客様か。
「あの」
おや、招き猫ちゃんじゃないか。
「まあ、こんにちは、お久しぶりです」
招き猫ちゃんはこの店のオープニングスタッフの一人であった。
ただのバイトだったのに、一日の売り上げ最高記録を連続で叩き出したのと、彼女がいるとなぜか来店客が多くなることから、洋平先生に『招き猫ちゃん』と崇められている。
この子がいたら来店者が増えるなんて話は個人的には懐疑的だ。
なんせそういう場に遭遇してないからな。
私がこの店に移動してくる前の話だからなんとも判断がつかない。
しかし洋平先生は常にこの招き猫ちゃんをスタッフに迎えいれようと画策に余念がない。
いっこうになびいてこないが。
私としてはチュールで釣ればよいのではないかと常々考えている。
今度試してみたい。
そういやこの子、名前なんだっけ?
花屋に勤めてたのは知ってるが。
「あの・・」
もじもじと照れた態度が初々しい。
うちのハイエナどももこれくらい謙虚だったら・・・。
「もしかして洋平先生にご用かしら?」
「あの、違うんです。あの・・」
「はい?」
どうした招き猫ちゃん。洋服の相談ならなんでも聞くぞ。お姉さんに任せなさい。
「あの!京さんをよろしく!!!」
私の手をガッシリと両手で握りしめ、真剣な眼差しでそれだけ言うと彼女は猛スピードで店から出ていった。
・・・・・。呆然とする私。
いまのなに?
きょうさんをよろしく?
「なんのことかわかる?」
とりあえずハイエナ達に聞いてみた。
「共産党をよろしく?」
「選挙?」
「青年部のノルマ?」
???
なんだったんだ?
「それより店長」
「招き猫ちゃん来店の為マニュアル発動」
「臨戦態勢に入ります」
「は?」
何言ってんだこいつら
再びドアベルが鳴った。
私は振り向き「いらっしゃいませ」と愛想をふりまく。
またドアベルが鳴った。
「いらっしゃいませ」
さらにドアベルが鳴った。
「いらっ・・・」
客は途切れることなくはいってくる。
何ごと?!
ハイエナ達は入ってきた客をカモにして次々と打ち落とすかの如くアレコレ売りまくっている。
50%OFF効果なのか?
なんか知らんが一般客と得意客が入り乱れて物が売れまくった。
客足が落ち着いたのは昼過ぎ。
あー、疲れた。もう閉店したい。
「一時過ぎか、休憩入っていいわよ」
ハイエナ達も頑張った。
ゆっくり休め。
性格はアレでも頑張りは正当に評価する。ボーナスは期待してもいいぞ。
今日の売り上げはきっと良いだろう。
なんせ値下げじゃない通常の服やバッグも売れたからな。
善きかな善きかな。
はっ!
もしやこれが招き猫ちゃん効果?
なーんてね。
偶然。偶然。
この日は午後も客足が途絶えず、私達はひたすら商品を売りまくることに追われたのであった。
閉店後の一日の売り上げに洋平先生はヒャッハーしながら私達に金一封を出してくれた。
自宅マンションに帰ると、三歳年下の旦那、椎那がごはんを作って待っていてくれた。
よく出来た旦那で、私は幸せ者だと最近特に思い知っている。
「ねえ、しーちゃん」
今夜はパスタ。ペペロンチーノにローストビーフサラダ。すごく美味しい。
「なに?」
「きょうさんをよろしくってどういう意味だと思う?」
「共産党?」
「それ以外で!」
自分の旦那がハイエナと同じ思考回路だとは考えたくない。
「うーん、ぎょうさんよろしく?」
「『ぎょうさん』って『たくさん』って意味の?」
「他にはそうだなぁ、協賛?」
「協賛・・か」
花屋さん、何かの計画があるのかな?
参加してほしいとか?
「あり得るかも・・」
明日花屋さんに聞いてみよう。
結婚後も仕事は続け、本日から冬の50%OFFセールウィークに突入することもあり、気合いがみなぎっているところでもあります。
私は今日も店の優秀なハイエナ達を操り、店の売り上げNo.1を目指し、邁進するのであります。だからボーナスたんまりクレクレ。
開店前、朝のミーティング。
伝達事項、注意、その他いろいろ。
ハイエナは三名全員出勤。
「当店は本日から50%OFFセールウィークに入ります。普段は来店しないお客様も多数来店すると予測されるので、どのようなお客様にも笑顔で丁寧な接客を心がけるようにしてください」
「カモネギ来襲ウィーク突入」
宝飾等アクセサリー専門の
ハイエナ一号・小林真奈
「下手な鉄砲も数打ちゃ当たるとな?」
帽子・靴専門のハイエナ二号・富田洋子
「どのようなカモネギ様にも笑顔で罠を仕掛けて打ち落とせとは店長もなかなかワルですな」
服飾デザイナーをやめたあと、占い師に転職した一番の変人、(当店に勤めながら現在も占い師をやっている)ハイエナ三号・須藤七瀬
「やかましい!わかったらさっさと店開けろ!!」
ほんとにこいつらの頭の中はどうなってるんだ。
「ん?」
なんだろう?
背筋がざわざわする。
誰かが私を見ている・・?
誰だ!
私は素早く振り向いた。
国を死守する防衛の要の大学で鍛えられたこの俊敏さに敵う者などいない!
「・・・・」
あれ?
誰もいない。
気のせいか・・・
「店長、何してるんですか?」
「遊んでるんですか?」
「あなたの後ろに誰かいるごっこ?」
「いや、なんだかずっと見られていたような気がして・・」
「ストーカーですか?」
「変質者に目をつけられたとか?」
「あなたの隣に誰かいるごっこ」
「気のせいだったのかな・・」
「あなたの前に誰かいるごっ」
「前にいるのはお前らだよ!!しつこい!!仕事しろよ!仕事をよ!!」
それにしても・・・
なんか気になるな・・・
私のカンは当たっていた。
確かに私は見られていたのだ。
彼女に。
「あのひとが新しいメリーさん・・・」
向かい側の建物の影から私を見つめていた女性は、
この時すでに私のことをメリーさんと名付けていた。
私は不思議に思いながらも、
きっと誰かが50%OFFのウインドウを見てたんだろうと自分に言い聞かせていた。
ウインドウの仕上がりはいいと思うんだけど、
色違いのバッグをおいてもう少しメリハリをつけるか・・
店の顔とも言えるショーウインドウの役割は大変重要だ。
いかにお客様の興味を惹くか、店長の腕の見せ所でもある。
私はバッグをひとつ持ちウインドウに近づいた。
「あ、・・・」
仙道先輩だ。
ウインドウの外、仙道先輩の車が止まった。
「仙道先輩にちょっと挨拶してくるわ。このバッグも出してちょうだい」
「結婚したばかりなのに」
「早くも不倫」
「修羅場劇場開幕」
「無理やりこじつけんな!ただの挨拶だよ!挨拶!!」
こいつら隙あらば修羅場を作り上げようとしやがる。
油断禁物だな。
「先輩、」
「東雲」
「お早うございます」
「どうだ?新婚生活は」
仙道京司朗━━━
大学時代の憧れの先輩。某組織若頭・・というか、結婚したから違うんだろうか?代表とか社長とかになったんだろうか?
「新婚生活と言っても一年一緒に暮らしてましたし、なんかいつもと変わらないです。先輩こそどうですか?」
先輩は思い出したようにクスリと笑って、
「そうだな、予想外の連続でなかなか面白くて困ってる」
ああ、ほんとにいい顔で笑うなぁ。
困っちゃうくらい幸せかぁ。
「ごちそうさまっス」
というと、「ばかやろう」と照れ隠しの咳払いににらみをきかされた。
先輩、変わったな。
以前の先輩ならそんな顔、絶対しなかったもの
私達は軽い会話を交わし、仙道先輩は三階のオーダースーツの店へと行った。
このビルに立ち寄るのはほとんどスーツの新調の為だ。
それにしても奥様はどんな女性なんだろう?一回お会いしてみたい。
惣領会長のお嬢様と聞いて、もしや政略結婚かと思ったけど、先輩の顔を見てるとほんとに惚れてるんだろうなとわかる。
抗争相手から守るために隠して育てたお嬢さんなんだとか。
きっとおしとやかなかわいいお嬢さんなんだろうな。
先輩の去ったほうを見つつ、店内に戻ると、ハイエナどもが円陣組んで何かこそこそしていた。
「おいこら何を企んでいる」
私はハイエナ達に声をかけた。
が、ドアベルが鳴ったため私は急いで営業用ニッコリでとりつくろい、「いらっしゃいませ」と声をかけた。
さっそく50%OFFのカモ・・じゃない、お客様か。
「あの」
おや、招き猫ちゃんじゃないか。
「まあ、こんにちは、お久しぶりです」
招き猫ちゃんはこの店のオープニングスタッフの一人であった。
ただのバイトだったのに、一日の売り上げ最高記録を連続で叩き出したのと、彼女がいるとなぜか来店客が多くなることから、洋平先生に『招き猫ちゃん』と崇められている。
この子がいたら来店者が増えるなんて話は個人的には懐疑的だ。
なんせそういう場に遭遇してないからな。
私がこの店に移動してくる前の話だからなんとも判断がつかない。
しかし洋平先生は常にこの招き猫ちゃんをスタッフに迎えいれようと画策に余念がない。
いっこうになびいてこないが。
私としてはチュールで釣ればよいのではないかと常々考えている。
今度試してみたい。
そういやこの子、名前なんだっけ?
花屋に勤めてたのは知ってるが。
「あの・・」
もじもじと照れた態度が初々しい。
うちのハイエナどももこれくらい謙虚だったら・・・。
「もしかして洋平先生にご用かしら?」
「あの、違うんです。あの・・」
「はい?」
どうした招き猫ちゃん。洋服の相談ならなんでも聞くぞ。お姉さんに任せなさい。
「あの!京さんをよろしく!!!」
私の手をガッシリと両手で握りしめ、真剣な眼差しでそれだけ言うと彼女は猛スピードで店から出ていった。
・・・・・。呆然とする私。
いまのなに?
きょうさんをよろしく?
「なんのことかわかる?」
とりあえずハイエナ達に聞いてみた。
「共産党をよろしく?」
「選挙?」
「青年部のノルマ?」
???
なんだったんだ?
「それより店長」
「招き猫ちゃん来店の為マニュアル発動」
「臨戦態勢に入ります」
「は?」
何言ってんだこいつら
再びドアベルが鳴った。
私は振り向き「いらっしゃいませ」と愛想をふりまく。
またドアベルが鳴った。
「いらっしゃいませ」
さらにドアベルが鳴った。
「いらっ・・・」
客は途切れることなくはいってくる。
何ごと?!
ハイエナ達は入ってきた客をカモにして次々と打ち落とすかの如くアレコレ売りまくっている。
50%OFF効果なのか?
なんか知らんが一般客と得意客が入り乱れて物が売れまくった。
客足が落ち着いたのは昼過ぎ。
あー、疲れた。もう閉店したい。
「一時過ぎか、休憩入っていいわよ」
ハイエナ達も頑張った。
ゆっくり休め。
性格はアレでも頑張りは正当に評価する。ボーナスは期待してもいいぞ。
今日の売り上げはきっと良いだろう。
なんせ値下げじゃない通常の服やバッグも売れたからな。
善きかな善きかな。
はっ!
もしやこれが招き猫ちゃん効果?
なーんてね。
偶然。偶然。
この日は午後も客足が途絶えず、私達はひたすら商品を売りまくることに追われたのであった。
閉店後の一日の売り上げに洋平先生はヒャッハーしながら私達に金一封を出してくれた。
自宅マンションに帰ると、三歳年下の旦那、椎那がごはんを作って待っていてくれた。
よく出来た旦那で、私は幸せ者だと最近特に思い知っている。
「ねえ、しーちゃん」
今夜はパスタ。ペペロンチーノにローストビーフサラダ。すごく美味しい。
「なに?」
「きょうさんをよろしくってどういう意味だと思う?」
「共産党?」
「それ以外で!」
自分の旦那がハイエナと同じ思考回路だとは考えたくない。
「うーん、ぎょうさんよろしく?」
「『ぎょうさん』って『たくさん』って意味の?」
「他にはそうだなぁ、協賛?」
「協賛・・か」
花屋さん、何かの計画があるのかな?
参加してほしいとか?
「あり得るかも・・」
明日花屋さんに聞いてみよう。
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