さざんかの咲く道 ~若頭と私 3 ~

由宇ノ木

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「何故俺を見ないんですか?」


怜悧な目つきが、整った顔立ちのなかでいっそう際立っている。

男は片手をスッと上げ、先が鋭く尖ったハサミを私に見せつけた。
切っ先が逆光に煌めく。

オールバックの黒髪に黒いスーツだが、態度が葬式帰りではないことを如実に示している。

この男は━━━━━

刺す、打つ(撃つ)、刻む(損壊)が得意な世界の男だ。

そんな男が私を見下ろしているのだ。



果たして、何故こんなことになっているのか。



事の発端は、私が白い山茶花さざんかの咲く道を見つけたことから始まった。

仕事帰り、近道ができるのではないかと、たまたま自転車で入った路地だった。

塀の代わりなのか、白い山茶花は道路と敷地を隔てている。
高さは二メートルほど、横幅は五メートルくらい。

純白の清楚なさざんかに心奪われ、今度の休みの日に歩いて通ろうと決めた。

そして今日がその休みの日であった。


さざんかは庭木としてはあまり好まれないという。
チャドクガという毒を持った毛虫が発生するからだ。
触らなくても、側を通っただけで人の皮膚は毒の影響を受けてしまう。
さざんかに罪はないのに敬遠されてしまうとのことだった。

私はチャドクガが発生していないかを確認しつつ眺めて歩いた。

うん、見当たらない。側を歩いても良さげだ。

松の木もすごく整えられているから、もしかして庭師さんが手入れしてるのかもね。

いろいろ想像しながら花を眺めて歩いていると、枝葉の隙間から敷地内が見えた。

人がいる。

決してのぞき趣味ではない。
さざんかの花に見とれていたら、自然に敷地内まで見えてしまっただけ。

お家のご主人かな?


瞬間━━━━━


私はその場にしゃがんだ。







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