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71. 揺れ動く心
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『もし破損箇所があるならすぐ修理をするように会長に言われましたので、調べさせてもらってもいいですか?』
どこまでも優しい組長先生。
黒岩さんが家のあちこちをみてくれて、破損箇所はないと言われてわたしは安心した。
窓はお母さんが随分頑丈に直したと言ってたけど、それでも心配になるくらい今回はひどい雨風だった。
帰って来た。自分の家に。
独りの家に。
ベッドに転がると、安心したような、寂しいような、おかしな気分だった。
ずっと、独りで生きていくんだと思っていたし、そうしようと考えていた。
組長先生の娘になるって・・・、
きっと甘やかされて甘やかされて、わたしはわがままな甘ったれた人間になるんじゃないかと怖い。
そして組長先生は後悔するかもしれない。
娘にするんじゃなかったって。
後悔されたらどうするんだろう?
縁組みの解消?
また独りになる?
放りだされて、また独りになって・・・、
また独りになるくらいなら、最初から一人のほうがいい。
どうしたら・・
気がついたら朝になっていた。
考えても整理がつかなくて、ごはんも食べずにそのまま寝てしまった。
お店は午後からだから、少しゆっくりしようかな。
うだうだゴロゴロしよう。
・・・・・、
今は考えるのはよそう。
昨日話をもらったばかりだし、
組長先生も今すぐの返事は望んじゃいない。
少し考えを切り離してみよう。
そうしたら冷静に物事を見れるようになる。
自分の人生だけじゃない。
組長先生の人生もかかってる。
組長先生の為にも、自分の為にも何が良いかを考えよう。
一時的な感情に振り回されるのではなくて。
そうだ。若頭から借りたハンカチ。
新しいのを買って返さないといけない。
お屋敷ですぐ洗ったけど、もう一度洗ってワイドハイターしてクリーニングに出してから新しいハンカチと一緒に返そう。
他人様のものを勝手に手元に置くのも処分するのもどうかと思うし、処分するなら本人に処分してもらおう。
たぶんブランドものだと思うけど、ブランド名がついていないからわからないな。
こういう時頼る人はひとり。
出勤前にちょっと寄って行こうかな。
いないかもしれないけど、いないときは店長さんに相談すればいい。
「あら、珍しい、どうしたの?とうとううちに勤める気になったのかしら?招き猫ちゃん」
居た。
午後の出勤前、わたしは『Fiore Fiore』という洋服のお店を訪ねた。花屋の良客の一人、パリコレ先生のお店。
「違います。パリコレ先生、教えてほしいことがあってきました」
「・・相変わらずはっきり言うわね。それとそろそろパリコレ先生って呼ぶの変えてほしいわ」
最近どこにでもいるオネエ系男子の不思議なデザイナー。
どこが不思議かと言うと、この人もわたしのことを猫だと思っている節がある。わたしのことを『招き猫ちゃん』と呼ぶ。
「洋平先生でいいですか?」
「そうね、いいわね。何?教えてほしいことって?」
「このハンカチ、どこのブランドかわかりますか?」
「男物のハンカチね・・誰の?」
「組長先生のとこの若頭です。汚してしまったので同じものを買って返そうと思って」
「・・ブランド名がついてないけど、仙道君ならオーダースーツのお店の物かもね」
「オーダースーツ?」
「彼も惣領会長も、スーツはオーダーで作ってるから。ネクタイもハンカチも小物類はその時に全て揃えてもらってるはずよ」
「どこのお店ですか?」
「このビルの三階よ。『オーダースーツ 町田』っていうお店」
パリコレ先生・・洋平先生が人差し指で天井を差す。わたしも釣られて天井をじっと見た。
「・・・ここから三階は見えないわよ」
「わかってます。つられただけです」
「ほんと、相変わらずね・・。そうだわ、来週バラを50本ほどお願い。色は真紅か・・濃いピンクでもいいわ。社長に言っておいてくれる?」
「わかりました。いつもご利用ありがとうございます。ハンカチ情報もありがとうございました」
わたしは出勤時刻が迫っていたため、洋平先生のお店をあとにした。
わたしが花屋に就職する前に、バイトしていたのがこのショップだった。
オープニングスタッフのバイトだった。
主に雑用、裏方のはずが店頭に立つことになってしまったのだ。
大人って嘘つきって思った。
『もし破損箇所があるならすぐ修理をするように会長に言われましたので、調べさせてもらってもいいですか?』
どこまでも優しい組長先生。
黒岩さんが家のあちこちをみてくれて、破損箇所はないと言われてわたしは安心した。
窓はお母さんが随分頑丈に直したと言ってたけど、それでも心配になるくらい今回はひどい雨風だった。
帰って来た。自分の家に。
独りの家に。
ベッドに転がると、安心したような、寂しいような、おかしな気分だった。
ずっと、独りで生きていくんだと思っていたし、そうしようと考えていた。
組長先生の娘になるって・・・、
きっと甘やかされて甘やかされて、わたしはわがままな甘ったれた人間になるんじゃないかと怖い。
そして組長先生は後悔するかもしれない。
娘にするんじゃなかったって。
後悔されたらどうするんだろう?
縁組みの解消?
また独りになる?
放りだされて、また独りになって・・・、
また独りになるくらいなら、最初から一人のほうがいい。
どうしたら・・
気がついたら朝になっていた。
考えても整理がつかなくて、ごはんも食べずにそのまま寝てしまった。
お店は午後からだから、少しゆっくりしようかな。
うだうだゴロゴロしよう。
・・・・・、
今は考えるのはよそう。
昨日話をもらったばかりだし、
組長先生も今すぐの返事は望んじゃいない。
少し考えを切り離してみよう。
そうしたら冷静に物事を見れるようになる。
自分の人生だけじゃない。
組長先生の人生もかかってる。
組長先生の為にも、自分の為にも何が良いかを考えよう。
一時的な感情に振り回されるのではなくて。
そうだ。若頭から借りたハンカチ。
新しいのを買って返さないといけない。
お屋敷ですぐ洗ったけど、もう一度洗ってワイドハイターしてクリーニングに出してから新しいハンカチと一緒に返そう。
他人様のものを勝手に手元に置くのも処分するのもどうかと思うし、処分するなら本人に処分してもらおう。
たぶんブランドものだと思うけど、ブランド名がついていないからわからないな。
こういう時頼る人はひとり。
出勤前にちょっと寄って行こうかな。
いないかもしれないけど、いないときは店長さんに相談すればいい。
「あら、珍しい、どうしたの?とうとううちに勤める気になったのかしら?招き猫ちゃん」
居た。
午後の出勤前、わたしは『Fiore Fiore』という洋服のお店を訪ねた。花屋の良客の一人、パリコレ先生のお店。
「違います。パリコレ先生、教えてほしいことがあってきました」
「・・相変わらずはっきり言うわね。それとそろそろパリコレ先生って呼ぶの変えてほしいわ」
最近どこにでもいるオネエ系男子の不思議なデザイナー。
どこが不思議かと言うと、この人もわたしのことを猫だと思っている節がある。わたしのことを『招き猫ちゃん』と呼ぶ。
「洋平先生でいいですか?」
「そうね、いいわね。何?教えてほしいことって?」
「このハンカチ、どこのブランドかわかりますか?」
「男物のハンカチね・・誰の?」
「組長先生のとこの若頭です。汚してしまったので同じものを買って返そうと思って」
「・・ブランド名がついてないけど、仙道君ならオーダースーツのお店の物かもね」
「オーダースーツ?」
「彼も惣領会長も、スーツはオーダーで作ってるから。ネクタイもハンカチも小物類はその時に全て揃えてもらってるはずよ」
「どこのお店ですか?」
「このビルの三階よ。『オーダースーツ 町田』っていうお店」
パリコレ先生・・洋平先生が人差し指で天井を差す。わたしも釣られて天井をじっと見た。
「・・・ここから三階は見えないわよ」
「わかってます。つられただけです」
「ほんと、相変わらずね・・。そうだわ、来週バラを50本ほどお願い。色は真紅か・・濃いピンクでもいいわ。社長に言っておいてくれる?」
「わかりました。いつもご利用ありがとうございます。ハンカチ情報もありがとうございました」
わたしは出勤時刻が迫っていたため、洋平先生のお店をあとにした。
わたしが花屋に就職する前に、バイトしていたのがこのショップだった。
オープニングスタッフのバイトだった。
主に雑用、裏方のはずが店頭に立つことになってしまったのだ。
大人って嘘つきって思った。
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