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217. ロンド~踊る命~ -34- 百花繚乱②
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さあ、逃げるんだ。
正気を取り戻したみふゆは自分の服を探した。
ベッドの横に脱ぎ散らかした服や下着がある。
ベッドから降りようと動くと体が重苦しくて痛い。
みふゆはヘッドボードのクッションをひとつ手にして抱きしめた。体の支えになって少しだけ楽になった気がした。
「・・・・・」
自分の軽率さを嘆いても今さらどうしようもない。
青木家は、青木みふゆの家は燃えてしまった。
そして、京司朗に縋ってしまったのだ。
悲しみのあまり、苦しみのあまり、京司朗に縋り、体で慰めてもらったのだ。
なんて恥ずかしい真似をしたのか━━━━
みふゆの気持ちは沈んだ。しかし意気消沈している場合ではない。とりあえず逃げなければ。
抱きしめていたクッションを横に置き、服を拾おうと立ち上がった。
「どこに行くんだ?」
「うわああっっ!」
逃亡しようとしていたみふゆは驚いてしゃがみこんだ。
逃亡計画が早くも頓挫してしまった。
京司朗が裸の上半身をヘッドボードにもたせかけ、煙草に火をつけた。クッションが京司朗の体の形に合わせてへこんだ。
京司朗はベッドに戻るようみふゆに促した。
「あの・・これは、その・・」
気まずい。超気まずい。針のムシロだ消えてしまいたい。
京司朗は煙草の煙を吐くと神妙な面持ちで、
「・・・ゆうべは」
と言いかけたが、みふゆはすぐにかぶせて
「ごめんなさい!!ほんっとにごめんなさい!!ゆうべのことは人生一生の不覚でした!忘れてください!わたしも忘れますから!!」
と叫んだ。
自分が浅はかだったのだ。
京司朗に何かを言われる前に、京司朗のせいではないと伝えたかった。
京司朗の迷惑になりたくなかった。
「・・・・」
京司朗は黙ってしまった。静かな沈黙が漂う。
「━━━━忘れる?だ?」
「は、はい・・。だ、だめ・・ですか・・?」
何かまずいことを言ったのか。男の側のせいではないと言えば安心するのではないかと考えたみふゆは口元がヒクついた。
「忘れるだと?!俺に抱かれておいて忘れるだと?!ふざけてんのか!!」
京司朗が怒った。
みふゆは京司朗の怒る理由がわからなかった。
京司朗の男としてのプライドを傷つけたとはみじんも思ってないみふゆはびっくりした。
「ふざけてませんっ!ごめんなさい!まじめですっっっ!」
「ふざけてねぇならよけい悪い!」
「なんで!?この人おかしい!!」
「おかしいのはお前だ!」
京司朗はみふゆが持っている服を奪い取ると遠くに放り投げた。
「忘れられるような抱き方だったなら、忘れられねぇようにしてやるよ」
京司朗の怒った真剣な眼差しは男の情欲で満たされている。みふゆは焦った。かわし方がわからない。
「こ、こんな状況でよくもそんな早口言葉みたいな台詞をかまずにスムーズに言えますね!!何なんですか!いったい!!」
焦るあまりにみふゆも怒った。セリフの内容が状況にふさわしいかどうかはともかく。
怒られてばかりでは理不尽だ。
「早口言葉?・・そうか、お前はどこまでも俺をおちょくるつもりか」
「そんな!おちょくるだなんて!この真面目なわたしがこの状況でおちょくりをするような人間に見えるんですか!眼科に行ったらどうですか!」
みふゆ、やぶれかぶれ。
「もういい。黙らせてやる」
京司朗は、みふゆを力ずくで引き寄せると覆い被さり、おそらくゆうべよりかなり乱暴にみふゆを扱った。
「若頭・・!」
「京司朗と呼べ」
からだの上を這う男の指が、くちびるが、男のからだの重さが、みふゆから言葉を奪う。
終われば始まるを繰り返して━━━━━
何度目かの行為が終わったあと。
京司朗がみふゆを後ろから抱きしめ髪を優しくすいてから口づけた。
「・・・疲れたか?」
みふゆは黙ったままだ。
「・・・」
どつぼにハマッた気分だった。
京司朗は満足げに笑みを作ると
「まあ、そのうち慣れる」
とみふゆの頭を撫でた。
不穏な発言に、みふゆは驚きの表情で振り向いた。
「え・・?・・慣れる・・・って・・?」
「毎日ヤッたら慣れるだろう」
「・・だ、・・・、誰と?」
みふゆは混乱中である。
京司朗は呆気にとられて、
「・・・お、ま、え、は・・どこまでふざけてるんだっ!」
「だからふざけてませんってば!」
「それが余計悪いって言ってるんだ!何度言わせる気だ!!」
甘い余波を残すはずの行為のあとで、みふゆと京司朗は言い合いを続けることになってしまった。
「・・わ、若頭が何を考えてるのかわかりません!!」
「それはこっちのセリフだ!」
「ひどいです!」
「どっちがだ!」
「わたしがひどいっていうんですか?!わたしのどこが!?わたしは善良なただのしがない小市民じゃないですか!」
みふゆは叫ぶと枕に顔を埋めた。
「わ、わたしは・・そりゃ社会に多大な貢献してるわけじゃないけど、迷惑にならないようにって・・社会の片隅でいいから、お母さん達を弔いながらひっそりと生きていこうって・・今までずっと・・。苦しくて若頭に縋ってしまって申し訳ないって思って・・・!」
あとは言葉にならなかった。
みふゆは泣きじゃくる。こうなってしまうと、京司朗は謝るしかない。惚れた相手ならなおさら。
「・・・すまない・・」
「若頭なんか・・・!!」
みふゆは振り向きざまクッションを京司朗に投げつけ、ベッドに伏せってしゃくりあげる。
京司朗は受け止めたクッションを置き、ふとため息をついた。こんな風に泣かせるつもりはなかったのだが。
「社会になんか貢献しなくてもいい。俺に貢献すればそれでいいじゃないか」
「!?何それ!!」
みふゆはガバッと起きて涙顔の不服顔だ。
「さあ、屋敷に帰るぞ」
「・・・お屋敷・・」
「結婚の報告をする」
「結婚!?」
「・・まさか俺がプロポーズしたのも忘れてんじゃねぇだろうな?」
「・・・、・・えーと、」プロポーズ?そう言えばそうでしたね、今思い出しました。
声に出ずとも、京司朗はみふゆの表情で読んだ。
「あー・・、いえ、うーん、えーと、お、お父さんは!?お父さんは・・」
みふゆは話題をそらした。京司朗が唯一敵わない相手、『惣領貴之』という印籠を手にして出した。虎の威を借る狐的な手段だ。みふゆにとって養父・惣領貴之の名はもはや印籠だ。水戸黄門様だ。
「・・会長は朝方に帰ってきたそうだ」
「・・お父さん・・・」
自分で貴之の名を出しておいて、みふゆは気持ちが落ち込んだ。あんなにも会いたかった貴之なのに、今は会いづらさが大きい。どんな顔をして会えばいいのだ。
「お、お父さんがかわいそう・・こんな・・こんなふしだらな娘を持ってしまって・・・!」
みふゆがまた泣き出した。
「ふしだらって・・お前なぁ・・・」
京司朗は途中で言うのをやめた。
みふゆの本気度がわからない。
「━━━━とにかく、お前にはしっかり責任をとってもらう」
「!わたしが?!」
「そうだ。お前がだ」
「どうして!!」
「プロポーズした俺に縋っておいてどうしてと俺に聞くのか」
「だから忘れ・・」てくれと言ったのに!!、と言おうとしたら、京司朗がギロリと睨んだ。
眼力に殺される━━━━
「忘れ・・な草はかわいいお花なんです・・・・」
みふゆは顔を背けた。京司朗に負けたのだ。
「シャワーを浴びてこい」
「・・・・・」
命令口調にみふゆはムッとしたまま返事をしなかった。
「じゃあ、俺が隅々まで洗ってやろう」
「浴びてきます!一人でできます!大丈夫です!!」
「今さら遠慮しなくていい」
京司朗がみふゆの体に触り、みふゆの体は跳ね上がった。
「できますできます!!できます!!!もう歩けるんだからひとりでできるもん!!若頭のバカ!!」
京司朗に捨て台詞を吐くとベッドカバーを体にかぶってズルズルと引きずりバスルームに向かった。
後ろで京司朗が含み笑いをしている。
悲しみに溺れるより、何かに怒っているほうが、怒鳴っているほうがまだマシだと、京司朗は二本目の煙草に火をつけた。
さあ、逃げるんだ。
正気を取り戻したみふゆは自分の服を探した。
ベッドの横に脱ぎ散らかした服や下着がある。
ベッドから降りようと動くと体が重苦しくて痛い。
みふゆはヘッドボードのクッションをひとつ手にして抱きしめた。体の支えになって少しだけ楽になった気がした。
「・・・・・」
自分の軽率さを嘆いても今さらどうしようもない。
青木家は、青木みふゆの家は燃えてしまった。
そして、京司朗に縋ってしまったのだ。
悲しみのあまり、苦しみのあまり、京司朗に縋り、体で慰めてもらったのだ。
なんて恥ずかしい真似をしたのか━━━━
みふゆの気持ちは沈んだ。しかし意気消沈している場合ではない。とりあえず逃げなければ。
抱きしめていたクッションを横に置き、服を拾おうと立ち上がった。
「どこに行くんだ?」
「うわああっっ!」
逃亡しようとしていたみふゆは驚いてしゃがみこんだ。
逃亡計画が早くも頓挫してしまった。
京司朗が裸の上半身をヘッドボードにもたせかけ、煙草に火をつけた。クッションが京司朗の体の形に合わせてへこんだ。
京司朗はベッドに戻るようみふゆに促した。
「あの・・これは、その・・」
気まずい。超気まずい。針のムシロだ消えてしまいたい。
京司朗は煙草の煙を吐くと神妙な面持ちで、
「・・・ゆうべは」
と言いかけたが、みふゆはすぐにかぶせて
「ごめんなさい!!ほんっとにごめんなさい!!ゆうべのことは人生一生の不覚でした!忘れてください!わたしも忘れますから!!」
と叫んだ。
自分が浅はかだったのだ。
京司朗に何かを言われる前に、京司朗のせいではないと伝えたかった。
京司朗の迷惑になりたくなかった。
「・・・・」
京司朗は黙ってしまった。静かな沈黙が漂う。
「━━━━忘れる?だ?」
「は、はい・・。だ、だめ・・ですか・・?」
何かまずいことを言ったのか。男の側のせいではないと言えば安心するのではないかと考えたみふゆは口元がヒクついた。
「忘れるだと?!俺に抱かれておいて忘れるだと?!ふざけてんのか!!」
京司朗が怒った。
みふゆは京司朗の怒る理由がわからなかった。
京司朗の男としてのプライドを傷つけたとはみじんも思ってないみふゆはびっくりした。
「ふざけてませんっ!ごめんなさい!まじめですっっっ!」
「ふざけてねぇならよけい悪い!」
「なんで!?この人おかしい!!」
「おかしいのはお前だ!」
京司朗はみふゆが持っている服を奪い取ると遠くに放り投げた。
「忘れられるような抱き方だったなら、忘れられねぇようにしてやるよ」
京司朗の怒った真剣な眼差しは男の情欲で満たされている。みふゆは焦った。かわし方がわからない。
「こ、こんな状況でよくもそんな早口言葉みたいな台詞をかまずにスムーズに言えますね!!何なんですか!いったい!!」
焦るあまりにみふゆも怒った。セリフの内容が状況にふさわしいかどうかはともかく。
怒られてばかりでは理不尽だ。
「早口言葉?・・そうか、お前はどこまでも俺をおちょくるつもりか」
「そんな!おちょくるだなんて!この真面目なわたしがこの状況でおちょくりをするような人間に見えるんですか!眼科に行ったらどうですか!」
みふゆ、やぶれかぶれ。
「もういい。黙らせてやる」
京司朗は、みふゆを力ずくで引き寄せると覆い被さり、おそらくゆうべよりかなり乱暴にみふゆを扱った。
「若頭・・!」
「京司朗と呼べ」
からだの上を這う男の指が、くちびるが、男のからだの重さが、みふゆから言葉を奪う。
終われば始まるを繰り返して━━━━━
何度目かの行為が終わったあと。
京司朗がみふゆを後ろから抱きしめ髪を優しくすいてから口づけた。
「・・・疲れたか?」
みふゆは黙ったままだ。
「・・・」
どつぼにハマッた気分だった。
京司朗は満足げに笑みを作ると
「まあ、そのうち慣れる」
とみふゆの頭を撫でた。
不穏な発言に、みふゆは驚きの表情で振り向いた。
「え・・?・・慣れる・・・って・・?」
「毎日ヤッたら慣れるだろう」
「・・だ、・・・、誰と?」
みふゆは混乱中である。
京司朗は呆気にとられて、
「・・・お、ま、え、は・・どこまでふざけてるんだっ!」
「だからふざけてませんってば!」
「それが余計悪いって言ってるんだ!何度言わせる気だ!!」
甘い余波を残すはずの行為のあとで、みふゆと京司朗は言い合いを続けることになってしまった。
「・・わ、若頭が何を考えてるのかわかりません!!」
「それはこっちのセリフだ!」
「ひどいです!」
「どっちがだ!」
「わたしがひどいっていうんですか?!わたしのどこが!?わたしは善良なただのしがない小市民じゃないですか!」
みふゆは叫ぶと枕に顔を埋めた。
「わ、わたしは・・そりゃ社会に多大な貢献してるわけじゃないけど、迷惑にならないようにって・・社会の片隅でいいから、お母さん達を弔いながらひっそりと生きていこうって・・今までずっと・・。苦しくて若頭に縋ってしまって申し訳ないって思って・・・!」
あとは言葉にならなかった。
みふゆは泣きじゃくる。こうなってしまうと、京司朗は謝るしかない。惚れた相手ならなおさら。
「・・・すまない・・」
「若頭なんか・・・!!」
みふゆは振り向きざまクッションを京司朗に投げつけ、ベッドに伏せってしゃくりあげる。
京司朗は受け止めたクッションを置き、ふとため息をついた。こんな風に泣かせるつもりはなかったのだが。
「社会になんか貢献しなくてもいい。俺に貢献すればそれでいいじゃないか」
「!?何それ!!」
みふゆはガバッと起きて涙顔の不服顔だ。
「さあ、屋敷に帰るぞ」
「・・・お屋敷・・」
「結婚の報告をする」
「結婚!?」
「・・まさか俺がプロポーズしたのも忘れてんじゃねぇだろうな?」
「・・・、・・えーと、」プロポーズ?そう言えばそうでしたね、今思い出しました。
声に出ずとも、京司朗はみふゆの表情で読んだ。
「あー・・、いえ、うーん、えーと、お、お父さんは!?お父さんは・・」
みふゆは話題をそらした。京司朗が唯一敵わない相手、『惣領貴之』という印籠を手にして出した。虎の威を借る狐的な手段だ。みふゆにとって養父・惣領貴之の名はもはや印籠だ。水戸黄門様だ。
「・・会長は朝方に帰ってきたそうだ」
「・・お父さん・・・」
自分で貴之の名を出しておいて、みふゆは気持ちが落ち込んだ。あんなにも会いたかった貴之なのに、今は会いづらさが大きい。どんな顔をして会えばいいのだ。
「お、お父さんがかわいそう・・こんな・・こんなふしだらな娘を持ってしまって・・・!」
みふゆがまた泣き出した。
「ふしだらって・・お前なぁ・・・」
京司朗は途中で言うのをやめた。
みふゆの本気度がわからない。
「━━━━とにかく、お前にはしっかり責任をとってもらう」
「!わたしが?!」
「そうだ。お前がだ」
「どうして!!」
「プロポーズした俺に縋っておいてどうしてと俺に聞くのか」
「だから忘れ・・」てくれと言ったのに!!、と言おうとしたら、京司朗がギロリと睨んだ。
眼力に殺される━━━━
「忘れ・・な草はかわいいお花なんです・・・・」
みふゆは顔を背けた。京司朗に負けたのだ。
「シャワーを浴びてこい」
「・・・・・」
命令口調にみふゆはムッとしたまま返事をしなかった。
「じゃあ、俺が隅々まで洗ってやろう」
「浴びてきます!一人でできます!大丈夫です!!」
「今さら遠慮しなくていい」
京司朗がみふゆの体に触り、みふゆの体は跳ね上がった。
「できますできます!!できます!!!もう歩けるんだからひとりでできるもん!!若頭のバカ!!」
京司朗に捨て台詞を吐くとベッドカバーを体にかぶってズルズルと引きずりバスルームに向かった。
後ろで京司朗が含み笑いをしている。
悲しみに溺れるより、何かに怒っているほうが、怒鳴っているほうがまだマシだと、京司朗は二本目の煙草に火をつけた。
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