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18 休日3日目
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三連休も今日が最後。
前日の雨で泥濘んではいるが今日は昨日と打って変わって晴々としている。
今日は出掛けられるなと私室から外を見て予定を立てる。
タジオの喜ぶ顔が見たい。
昨日は散々泣かせてしまったと反省するハイドラは詫びに何かプレゼントして宥めようと考えついた。
確か以前買い物に行った時は服を眺めていた。
紺地に金の刺繍が施されタジオが着たら凛としてみえるだろう。
ハイドラからタジオへプレゼントするつもりだった。
「以前見かけた時、ハイドラ様に似合うのではないかと思っていました!美しいです」
この店は好みに合う物が多くありハイドラの持つ服はほとんどここのメーカーで揃えられているが、この服はどちらかと言うと自身よりもタジオの方が似合うと思っている。
「ありがとう。でもこれは君の方がよく似合うのではないかな?
どうだい、オーナー?」
「えぇ、勿論アルペンジオ様によくお似合いではありますが、髪と瞳の色のバランスからもタジオ様に馴染む色合いですね」
「ほら、私よりも君に着てもらった方がいい」
貴族は既製品を買うことは滅多にしないが変わり者な宰相様は「正式な場以外では楽な服を着たい」と柔軟でいらっしゃる。
従者のタジオ様にこうして宛てがう程に仲がよろしくてついアルペンジオ様の発言に乗ってしまう。
話が上手いお方だ。
それにこの服も実はタジオ様をイメージした物で本人に着て貰えるとは思いもしませんでした。
アルペンジオ様をイメージした服も作ろうかと思いましたが流石に宰相様に失礼かと思いとどまったのですが、これは…後で打診した方が良さそうですね。
服飾士としての勘がそう言っている気がします。
「良くお似合いですね」
ハイドラの着ていた服を今度はタジオが着てみせる。
似合わないはずもないが当たり障りのない褒め言葉に留めた。
「うん、やはりタジオに着せて正解だね。
オーナー、これと対になる服を今度は私の為に作ってくれないかな」
こちらから話をもちかける前に本人からの打診とはとても有難い。勘は正しかったようだと自らを褒める。
「承りました」
ハイドラがタジオへ選んだ服なのだからと支払いをしたがタジオが慌てふためいていた。
高すぎるという程でもないにしろ、そこそこ値段のする服だった。
「昨日の詫びだ」と告げれば顔を赤くして押し黙る。
服屋を後にして馬車へ案内しようとするタジオの手を引いてハイドラは歩き出した。
何故、だなんて言わない。
馬車で回る事自体普段からないのだ。
民衆と同じように歩いて回るのが楽しいのだと今日も穏やかな笑顔で店を覗く。
「ここは確か先週出来たばかりのお店だったね」
「はい、紅茶のお店ですね。まだ品揃えはさほど良くないらしいですが入りますか?」
返事を待たずして扉を開く。
「ありがとう」
「いらっしゃいませ」
建物自体はずっとあるが内装は綺麗に直したらしい。
ダークブラウンの壁と床、紅茶の品揃えはさほど良くないとタジオは言っていたがマイナーな物が多く置いてあった。
この辺りでは見かけない紅茶を手に取る。
新店舗とはいえ元々この地域出身である店長はハイドラへ丁寧に話しかけてくる。
「ご来店ありがとうございます。
この店内に置いてある紅茶は全て試飲できますので何時でもお申し付けください。そちら、試飲なさりますか?」
「いくつか見てからお願いします」
ハイドラが紅茶選びに夢中になっている間にタジオが代わりに答えた。
「では後ほどまたお声がけ下さい。テーブルはあちらへ」
既にリザーブの札が置いてあるテーブルへ目をやりタジオから紅茶店への印象がぐっと上がる。
提案された通りいくつかの紅茶を指定して試飲をさせてもらう事にした。
カフェも併設しているこの店は出入口正面にレジがありそこを境に左に茶葉棚、右に10席程のテーブルが設置してあった。
紅茶に合う菓子を店長おまかせで注文をしてひと種類の茶菓子が用意されていた。
選んだのは4つでそれぞれ育った気候の違う茶葉。
全く味も色も違い淹れ方も異なるそうだが果たしてハイドラはどれを選ぶのか。
「これはとても香りがいいね…華やかでいて飲みやすい」
試飲用の小さめのカップソーサーへハイドラが選んだ銘柄が添えてある。
どれも選びがたいと結局4種とも買うことにした。
酸化しにくい素材を使った容器に入れて販売しているらしく店長も店構えも雰囲気がいい。
ハイドラの様子からしてもきっとこれから通う事になると想像に難くない。
こうして丸一日、デートらしい事はしていないもののとても有意義な日を過ごせたと大満足の休日を終えた。
前日の雨で泥濘んではいるが今日は昨日と打って変わって晴々としている。
今日は出掛けられるなと私室から外を見て予定を立てる。
タジオの喜ぶ顔が見たい。
昨日は散々泣かせてしまったと反省するハイドラは詫びに何かプレゼントして宥めようと考えついた。
確か以前買い物に行った時は服を眺めていた。
紺地に金の刺繍が施されタジオが着たら凛としてみえるだろう。
ハイドラからタジオへプレゼントするつもりだった。
「以前見かけた時、ハイドラ様に似合うのではないかと思っていました!美しいです」
この店は好みに合う物が多くありハイドラの持つ服はほとんどここのメーカーで揃えられているが、この服はどちらかと言うと自身よりもタジオの方が似合うと思っている。
「ありがとう。でもこれは君の方がよく似合うのではないかな?
どうだい、オーナー?」
「えぇ、勿論アルペンジオ様によくお似合いではありますが、髪と瞳の色のバランスからもタジオ様に馴染む色合いですね」
「ほら、私よりも君に着てもらった方がいい」
貴族は既製品を買うことは滅多にしないが変わり者な宰相様は「正式な場以外では楽な服を着たい」と柔軟でいらっしゃる。
従者のタジオ様にこうして宛てがう程に仲がよろしくてついアルペンジオ様の発言に乗ってしまう。
話が上手いお方だ。
それにこの服も実はタジオ様をイメージした物で本人に着て貰えるとは思いもしませんでした。
アルペンジオ様をイメージした服も作ろうかと思いましたが流石に宰相様に失礼かと思いとどまったのですが、これは…後で打診した方が良さそうですね。
服飾士としての勘がそう言っている気がします。
「良くお似合いですね」
ハイドラの着ていた服を今度はタジオが着てみせる。
似合わないはずもないが当たり障りのない褒め言葉に留めた。
「うん、やはりタジオに着せて正解だね。
オーナー、これと対になる服を今度は私の為に作ってくれないかな」
こちらから話をもちかける前に本人からの打診とはとても有難い。勘は正しかったようだと自らを褒める。
「承りました」
ハイドラがタジオへ選んだ服なのだからと支払いをしたがタジオが慌てふためいていた。
高すぎるという程でもないにしろ、そこそこ値段のする服だった。
「昨日の詫びだ」と告げれば顔を赤くして押し黙る。
服屋を後にして馬車へ案内しようとするタジオの手を引いてハイドラは歩き出した。
何故、だなんて言わない。
馬車で回る事自体普段からないのだ。
民衆と同じように歩いて回るのが楽しいのだと今日も穏やかな笑顔で店を覗く。
「ここは確か先週出来たばかりのお店だったね」
「はい、紅茶のお店ですね。まだ品揃えはさほど良くないらしいですが入りますか?」
返事を待たずして扉を開く。
「ありがとう」
「いらっしゃいませ」
建物自体はずっとあるが内装は綺麗に直したらしい。
ダークブラウンの壁と床、紅茶の品揃えはさほど良くないとタジオは言っていたがマイナーな物が多く置いてあった。
この辺りでは見かけない紅茶を手に取る。
新店舗とはいえ元々この地域出身である店長はハイドラへ丁寧に話しかけてくる。
「ご来店ありがとうございます。
この店内に置いてある紅茶は全て試飲できますので何時でもお申し付けください。そちら、試飲なさりますか?」
「いくつか見てからお願いします」
ハイドラが紅茶選びに夢中になっている間にタジオが代わりに答えた。
「では後ほどまたお声がけ下さい。テーブルはあちらへ」
既にリザーブの札が置いてあるテーブルへ目をやりタジオから紅茶店への印象がぐっと上がる。
提案された通りいくつかの紅茶を指定して試飲をさせてもらう事にした。
カフェも併設しているこの店は出入口正面にレジがありそこを境に左に茶葉棚、右に10席程のテーブルが設置してあった。
紅茶に合う菓子を店長おまかせで注文をしてひと種類の茶菓子が用意されていた。
選んだのは4つでそれぞれ育った気候の違う茶葉。
全く味も色も違い淹れ方も異なるそうだが果たしてハイドラはどれを選ぶのか。
「これはとても香りがいいね…華やかでいて飲みやすい」
試飲用の小さめのカップソーサーへハイドラが選んだ銘柄が添えてある。
どれも選びがたいと結局4種とも買うことにした。
酸化しにくい素材を使った容器に入れて販売しているらしく店長も店構えも雰囲気がいい。
ハイドラの様子からしてもきっとこれから通う事になると想像に難くない。
こうして丸一日、デートらしい事はしていないもののとても有意義な日を過ごせたと大満足の休日を終えた。
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