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迎えにきたお父さんと――きょうだい!?
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しおりを挟むシオン・ヴォルグ――くん、と名乗った不思議な魅力をまとった男の子と、きょうだいになる?
と、いうことは、お母さんは外国でシオンくんのお父さんと結婚したってこと?
わたしの頭の中は混乱の渦。
グルグル思考が回って、うまく整理整頓できない。
そうこうしているうちに、わたしはシオンくんにしっかり手を握られ、安藤家に戻ってしまった。
たった二時間の家出になってしまい、非常に気まずい。
やっぱり、というか、案の定、叔母さんは超不機嫌顔でリビングのソファに座り、わたしを睨みつけている。
リビングにはおじさんと――グレーの髪をオールバックにした中年の英国風のオジサマ。
渋さが全面に出ていてなんというか、「ロマンスグレー」という言葉を思い出すほどカッコいい。
海外の俳優さんを生で見たようで、思わず声が出そうになるのを頑張って耐えた。
そして、オジサマの後ろにはスーツ姿のお兄さん。黒髪で彫りが深くてどこか厳しそう。
そうか、眼光が鋭いからそう見えるのかも。この人も外国人だ。
伊月さんと唯奈ちゃんは部屋に戻っているのか、この場にはいなかった。
「連れてきたよ」
ロマンスグレーのオジサマはシオンくんの言葉と同時、立ち上がり、わたしに近づくと、屈んだ。
わたしの目線に合わせてくれたんだと思う。
わたしも小学六年生にしては平均身長より高いけれど、オジサマはもっと高い。百九十センチくらいはありそう。
オジサマはわたしを懐かしそうな目で見つめて、話しかけてきた。
「橋崎莉緒、さん?」
オジサマの日本語はとても綺麗で聞き取りやすい。
わたしは安心して頷いた。
「は、はい」
「君のお母さまの名前は、莉奈だね?」
「はい。橋崎莉奈です。――お母さんを知っているんですよね? シオンくんから、お母さんのことを含めてあとで話すと言われて、戻ってきました」
「うん、驚いたよ。ようやく莉緒に会えると思ったら、出ていったというものだから。いくら日本が他の国と比べて安全だとはいえ、夜に小さな女の子一人で外に出ては危険だからね」
「……はい。ごめんなさい」
優しい風が体を凪いでいくような、そんな口調。
低くて穏やかで安心する声に、わたしは素直に謝罪を口にした。
オジサマはわたしを横に座らせた。
シオンくんはわたしの後ろに立つ。まるで護衛の騎士みたいだ。
「長く連絡が取れなかったこと、重ねてお詫びいたします」
オジサマは「改めて」と付け加え、叔母さんとおじさんに頭を下げた。
オジサマの話によると――
わたしのお母さん「梨奈」は、オジサマが日本支社に転勤中に出会って、恋に落ちたという。
プロポーズしたとき、さる国の王族の血を引いていること、そしてお母さんが勤めていた会社の親会社である大会社を経営する幹部の一人だと告白したそう。
名刺をもらってびっくり!
IT・通信分野でいつもトップ3内に入っている、わたしもよく耳にする大企業だった。
そしてイギリスとスウェーデンに城を持っているみたい。
はっきり言わなかったけれど、どちらかの王族の血を引いてるってことかな?
それに驚いたお母さんは「育った環境が違いすぎる」と、退職してオジサマから離れてしまった。
しばらく探していたけれどお母さんは見つからなくて、オジサマは一族の事情で国へ戻らなくてはならなくなって諦めた。
けれど十数年ぶりに母国で梨奈と再会し、子供が生まれていたと知り、今度こそ――と。
「説得している途中で、彼女は会社を辞めて、忽然と消えてしまったのです」
握り拳をつくって哀しそうに話すオジサマに、叔母さんはイライラとした様子で口を開いた。
「そんなこと言って騙されるものですか! 姉さ……梨奈を愛しているですって? なら――そこにいる子供は? どう見たって莉緒と同い年か少し上じゃありませんか。ということは、梨奈と同じ時期に付き合っていた、もしくは結婚して子供をもうけたってことですよね? あなたから逃げたってことは、あなたが嫌で逃げているってことでしょう?」
「それは、わたしの一族が特殊だからなのです」
「『特殊』?」
「はい。今、それを教えることはできませんが『特殊』な血を引くために、梨奈にとって受け入れられなかったというのが、一番の理由だと思います」
「なにかの『遺伝子的病』を抱えているのですか?」
おじさんが初めて口を開いた。
確かに、それなら説明がつく。
「そうとらえても間違いではありません」
オジサマは頷いた。
「冗談じゃないわ! あなたのせいでわたしは引き取りたくもない子供を引き取ったのよ! 姉さんが、莉緒を置いて失踪した理由もようやくわかったわ。遺伝なんてずっと受け継ぐものじゃないの! 『病持ちの子』を育てたくなかったんだわ、姉さんは!」
――遺伝子的病を持つ子。
眼の前がクラクラする。
体中の血液が凍ってしまったように震えてしまう。
そういう子だからお母さんは、わたしを置いていったの?
そうか、だからなんだ。
仕方、ないんだ――
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