王子さまは二人いる

鳴澤うた

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家族の秘密は、莉緒にはまだ内緒

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 それから買い物を済ませたわたしたちは、しばらく屋上庭園を散策さんさくしてお茶を飲み、また買い物。
 
 今度は、お手頃なお店が入っている商業施設に移動した。
 そこで小物を買って、ホテルに帰宅。
 
 わたしは今夜は、アリナ姉さんと同じ部屋に泊まる。
 といっても、昨晩わたしが泊まった部屋なんだけれどね。

「じゃあ、三十分後に、こっちの部屋にきてね。ルームサービス頼むから」
「All right」
「おーけー」 

 カタカナっぽい英会話でも、それなりに通じることに安心するわたし。

「夕飯、なに食べようか?」
「和食が食べたいです。うーんと、焼き魚とかってあるんでしょうか?」
 
 アリナ姉さんに聞かれて、即答そくとうするわたし。
 今日一日パン食だったから、ご飯が恋しい。

「いいわね。和食はヘルシーだし」
 アリナ姉さんも大賛成。
 
 わたしとアリナ姉さんは買った服を袋から出して、整頓してから隣の部屋へ。
 靴は新調した。
 革靴だから、早く履きなれたほうがいいしね。

「莉緒は和食がいいって」
 部屋に入ったらさっそく、メニュー表を見ながらみんなで決める。

「俺は中華にしようかな」
「でも、莉緒が食べたがってる焼き魚ってないな」
「なくても、メニュー表から決めるので平気です」
「わたし、いくら丼にしようかな。いくらって真っ赤なルビーみたいで素敵よね」
 
 四人でワイワイいいながら、メニューを決める。
 わたしはお刺身定食。
 アリナ姉さんはいくら丼と野菜と豆腐のお味噌汁。
 シオンくんは中華丼とワンタンスープ。レフくんはカットステーキ。
 
 ここには子供しかいない。
 とても素敵なホテルに子供だけで泊まって、ワイワイしながらご飯を食べてお喋りして、すごく豪華!
 
 昨日から、自分の周りが目まぐるしく変わってる。
 最初はドキドキしたり、戸惑ったり、哀しかったりしたけれど、今は「嬉しい! 楽しい!」という気持ちが上回ってる。
 
 きっと、自分にきょうだいがいて、お父さんがいて。一人ぼっちじゃないってことが、ジワジワと体に染みわたってきて、ようやく理解したんだ。
 だからきっと、こんなに心から笑っていられるんだ。
 
 それからみんなで夕食を食べて、そのままお喋りタイムに入って、たくさん話した。
 イギリスにいたころ、シオンくんとレフくんは寮生活で、アリナ姉さんと小さな双子で別れて暮らしていたんだって。

「わたしはモデルをやっているから、時間に厳しい寮生活は難しいのよ。それに小さな双子を家に残しておくわけにもいかないでしょ?」
「父さんも忙しくて、なかなか家に帰ってこられないしな」
「日本で暮らすって言ってましたけれど……父さん仕事が忙しくて、留守がちになりそうですね」
 
 ちょっと寂しいな。ようやく親子の再会を果たせたのに。

「でも、ペイドホリデーは長くとってくれるわよ。今まではスイスとか、あちこちの海外へ旅行に行ったけれど、しばらくは日本旅行ね!」
「わたし、海外どころか日本に住んでるのにあちこち行ったことないので、行ってみたいです。……み、みんなで!」
 
 思い切って口にだした。
 アリナ姉さんもシオンくんもレフくんも、ビックリした顔になって、それから口の端をあげてくれる。
「もう! 莉緒ったら! なんて可愛いの! このままイギリスに連れていきたい! 鞄の中に入れていきたーい!」
 
 抱き着いて、ギュウとしてくるアリナ姉さん。
 そうだ、明日からしばらくいないんだ。レフくんも。
 
 寂しいな。
 
 寂しくなって、アリナ姉さんを抱きしめ返す。

「卒業式終わったら、一緒に住めるんですよね。すごく楽しみにしてます」
「……うん。寂しくなっちゃったかな? ごめんね。少しの我慢だから、そうしたらわたしたち、一緒に住めるよ」
「はい」
 
 ――家族として。
 
 言い方に少し、心にひっかかる。
 けれど、今、この時間が楽しくて、わたしはその意味を深く考えようとしなかったんだ。





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