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ごめんなさい、シオンくん
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次の日、アリナ姉さんとレフくんは、お昼前にホテルをあとにした。
「十二時間以上飛行機に乗ってるんだよねぇ。だるくなっちゃう」
ブツブツ文句言ってるアリナ姉さんに、レフくんは「よしよし」なんて頭を撫でてる。
レフくんのほうがお兄さんみたいで、それがすごく和やかで、わたしの口が緩んでしまう。
あと、シオンくんいれて三人並ぶと、雑誌の表紙みたいに絵になる。
わたしは、等身大の華やかな人たちを目の前にして「ほう」と息をついてしまう。
憧れの芸能人や歌手が目の前に現れたらきっと、みんなわたしのように、ただずっと見とれちゃうんだろうな。
アリナ姉さんとレフくんを空港まで見送ったわたしとシオンくんは、交通機関を使って帰ることにした。
ホテル暮らしで特にやることもないし、わたしは卒業式まで学校に行かなくていいし。
ただ、予習はしたほうがいいかな? 特に英会話……。
――つらつらと考え込んでいたわたし、ふと、今の状況に冷や汗をかいた。
シオンくんと二人きり――。
一気に緊張が全身をおそってきた。
昨日、一日四人でいてわかったことは、シオンくんはあまり喋るのが得意じゃなさそうってこと。
それはわたしにも言えることで……。
口下手同士、会話がなくてちょっと張り詰めた空気が出てしまう。
「どうする? 買い物して帰るか?」
「えっ? なにを買いに行くんですか?」
シオンくんの突然の提案に、慌てながらも返すわたし。
昨日、普段着や日常的に使う物の買い物は済んだはずだけど。
「別に、昨日買ったから今日は買わなくていい、なんてことないじゃん」
「うううん、でもたくさん買ったし……」
そう、デパートでウン万円するバッグや洋服に靴に……、子供たちだけで大丈夫なの? と思うブランド店に入って購入した。
『大丈夫だよ。パパが事前に話してあるって』
実際にそうだった。日頃、日本に来ると寄るお店を中心に回ってくれたので、店員さんとは顔見知りだったらしい。とても丁寧な接客をされた。
慣れていないわたしは、いかにも高級店という雰囲気と接客に緊張して、あまり服とか見ていない。ほとんどアリナ姉さんの見立てだ。
「気楽に着られる服とかほしくない? 俺、けっこう動くからすぐに破っちゃうんだ。だから高いのより、お手頃の服がほしいんだ。莉緒はどうなんだ?」
「わ、わたしは……」
どう返事していいのか、わからない。
シオンくんの口調は、いつもぶっきらぼうでキツイ。
レフくんやアリナ姉さんが優しい口調なせいもあって、余計にそう感じちゃうのかもだけれど。
四人でいたときは、平気だった。なのにこうして二人きりになると、シオンくんのぶっきらぼうで強めの口調に、思い出してしまう。
――クラスの女子たちからの虐めを黙って見つめている男子たちが時々、声をかけてくるときのキツさに似ている。
似ていると思ってしまうと、余計に喉が縮こまってしまって声がだせない。
シオンくんは違うのに。わたしは俯いてしまって、シオンくんの顔を見ることができない。
はぁ、と呆れたように漏れた息に、ますます肩を強張強張らせてしまう。
「……わかったよ。買い物は俺だけで行く。莉緒はホテルに戻ってて」
わたしは無言で頷く。
「絶対に外に出るなよ。喉が渇いたら部屋の冷蔵庫の中に入っているの、飲めよ」
そう言ってシオンくんは、途中の駅で電車から降りてしまった。
「十二時間以上飛行機に乗ってるんだよねぇ。だるくなっちゃう」
ブツブツ文句言ってるアリナ姉さんに、レフくんは「よしよし」なんて頭を撫でてる。
レフくんのほうがお兄さんみたいで、それがすごく和やかで、わたしの口が緩んでしまう。
あと、シオンくんいれて三人並ぶと、雑誌の表紙みたいに絵になる。
わたしは、等身大の華やかな人たちを目の前にして「ほう」と息をついてしまう。
憧れの芸能人や歌手が目の前に現れたらきっと、みんなわたしのように、ただずっと見とれちゃうんだろうな。
アリナ姉さんとレフくんを空港まで見送ったわたしとシオンくんは、交通機関を使って帰ることにした。
ホテル暮らしで特にやることもないし、わたしは卒業式まで学校に行かなくていいし。
ただ、予習はしたほうがいいかな? 特に英会話……。
――つらつらと考え込んでいたわたし、ふと、今の状況に冷や汗をかいた。
シオンくんと二人きり――。
一気に緊張が全身をおそってきた。
昨日、一日四人でいてわかったことは、シオンくんはあまり喋るのが得意じゃなさそうってこと。
それはわたしにも言えることで……。
口下手同士、会話がなくてちょっと張り詰めた空気が出てしまう。
「どうする? 買い物して帰るか?」
「えっ? なにを買いに行くんですか?」
シオンくんの突然の提案に、慌てながらも返すわたし。
昨日、普段着や日常的に使う物の買い物は済んだはずだけど。
「別に、昨日買ったから今日は買わなくていい、なんてことないじゃん」
「うううん、でもたくさん買ったし……」
そう、デパートでウン万円するバッグや洋服に靴に……、子供たちだけで大丈夫なの? と思うブランド店に入って購入した。
『大丈夫だよ。パパが事前に話してあるって』
実際にそうだった。日頃、日本に来ると寄るお店を中心に回ってくれたので、店員さんとは顔見知りだったらしい。とても丁寧な接客をされた。
慣れていないわたしは、いかにも高級店という雰囲気と接客に緊張して、あまり服とか見ていない。ほとんどアリナ姉さんの見立てだ。
「気楽に着られる服とかほしくない? 俺、けっこう動くからすぐに破っちゃうんだ。だから高いのより、お手頃の服がほしいんだ。莉緒はどうなんだ?」
「わ、わたしは……」
どう返事していいのか、わからない。
シオンくんの口調は、いつもぶっきらぼうでキツイ。
レフくんやアリナ姉さんが優しい口調なせいもあって、余計にそう感じちゃうのかもだけれど。
四人でいたときは、平気だった。なのにこうして二人きりになると、シオンくんのぶっきらぼうで強めの口調に、思い出してしまう。
――クラスの女子たちからの虐めを黙って見つめている男子たちが時々、声をかけてくるときのキツさに似ている。
似ていると思ってしまうと、余計に喉が縮こまってしまって声がだせない。
シオンくんは違うのに。わたしは俯いてしまって、シオンくんの顔を見ることができない。
はぁ、と呆れたように漏れた息に、ますます肩を強張強張らせてしまう。
「……わかったよ。買い物は俺だけで行く。莉緒はホテルに戻ってて」
わたしは無言で頷く。
「絶対に外に出るなよ。喉が渇いたら部屋の冷蔵庫の中に入っているの、飲めよ」
そう言ってシオンくんは、途中の駅で電車から降りてしまった。
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