王子さまは二人いる

鳴澤うた

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ごめんなさい、シオンくん

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 情けない。
 二週間、シオンくんと一緒に過ごすって、昨日から知ってたのに。
 
 本当に二人きりになったとたん、よそよそしくなったらシオンくんだって嫌なはず。
 急にきょうだいができたという緊張じゃない、違う緊張だってシオンくんは絶対に気づいてる。

「どうしよう……追いかけたほうがいいかな?」
 
 でも、降りた駅はわかるけれど、どこのお店に買い物に行ったのかわからない。
 スマホだって持っていないんだもの、シオンくんと連絡が取れない。

「帰ろう……」
 
 わたしはそのまま、ホテルの最寄り駅まで乗っていった。
 駅からホテルまですぐだけど、足が重くて道のりは遠く感じられる。
 
 肩を落としたまま、コンシェルジュからカードキーを受けとって、エレベーターを待つ。
 わたしはなんの気なしに、光って階数を掲示するインジケーターを眺めていた。
 
 扉が開いたので中へ入ると、もう一人、スーツ姿の男性が入ってきた。
 気まずいなぁ、なんて思いながら入って、最上階のボタンを押して気づいた。
 わたしが乗ったこのエレベーター、最上階のわたしとシオンくんが泊まる部屋にしか、いかないはず……。
 
 この男の人、誰?
 
 咄嗟に開ボタンを押そうとしたけれど、それよりもっと早く男の人は閉ボタンを押す。

「大人しくしな。なぁに、いい子にしていれば痛いことなんかしない。ちょっと金目のものがほしいだけだ。子供だけでホテル暮らしてるってこと、ちゃあんとわかってるんだ」
 
 脅す押し殺した声が耳元で聞こえる。
 
 怖い――
 
 足が震えるのに、体はまるで縄で縛られたように動けない。
 頭の中が真っ白になって、なにも考えられない。
 
 助けて、誰か。
 
 ようやくその考えにいたったとき、すでに遅くてエレベーターは最上階に止まった。

「部屋を開けな」
 
 どうしよう、どうしよう。
 部屋を開けて、それからダッシュで逃げる?
 
 でも、わたし逃げられるの? 相手は大人の男の人だよ?
 
 それに、わたしの後ろにピッタリとくっついてきて、とても逃げられない。
 
 誰か助けて。ギュッと目を瞑る。
 
 シオンくん――!





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