矛盾国家

八手 嵐佞

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矛盾国家

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 とある世界に一つの国が存在した。その国は、「ヒツノメ国」と言う名で通っている。そこの宰相 チヌヨレはとても国民から愛されていた。なんでも、有言実行で政策を進めていくというのだ。支持率が常に90%以上というのは当然のことである。

 ある時、チヌヨレは国民の前に立った。チヌヨレを愛する国民たちはチヌヨレの言葉に耳をたてる。
  胸を張り、こぶしを握った右手を前に出したチヌヨレは演説を始めた。「国民のみなさま!私は新しい政策を進めたいとおもっております。それは…」国民たちはチヌヨレの言葉に体を前のめりにした。
です」
 ここで普通なら「ふざけるな!」や「生活していけない!」などの野次が飛ぶことであろう。しかし、チヌヨレは有意義な増税を行うと国民は知っていた。いつも、こんな感じなのだ。一見、国民に不利と感じる政策かと思えば、よくよく考えると利益をもたらしているのだ。
「今回の増税もただの増税ではありません!」そらきた、と国民。「簡潔に言えば、です!」ふむふむとうなづく国民。「私は思いました。この世の中、いつ何が起こるか予測できないものです。もし、なにかが起こったときすぐに財政出動する必要があります。それが、今かもしれないし、遠い遠い未来のことかもしれない。それ緊急時に財政出動を迅速に行うには…と頭を抱え込んでいたときにこの政策を思い付きました。」チヌヨレはトレードマークの七三分けを崩しながら、懸命に演説をした。「この政策を許可するのは国民のみなさまです!」最後にこの決まり文句を言うのがチヌヨレだ。国民はもちろん、「あぁ、頼みます!」「チヌヨレ宰相、お願いします!」とチヌヨレの政策に大賛成だ。
「ありがとうございます!」チヌヨレは深く深く頭を下げ、国民の前から消えた。


 「チヌヨレ閣下。今日も見事な演説ホラでございました。」チヌヨレの側近たちは口々にこう言った。
「こんなもんだよ、あの国民アホたちを騙すというのは。」チヌヨレは嫌な笑みを溢して言った。側近たちはさらにこう言う。「あいつらが金を出してくれるだけこちらが潤うって言うのに…。」
 チヌヨレとその側近たちはとある部屋のドアを開けた。そこは、チヌヨレが国民から徴収したかねで作られたきんの部屋だ。
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