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第一章 悪役令嬢と女神様
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私は今日、衝撃の事実を知った。
「この世界にモブという言葉は存在しない…?」
そう。そんな言葉は無かったのである。そうしたら主人公やヒロインとかも無いのかと思ったら、それらはあった。本というのは高級品なので読む人の大半は貴族だが、一応物語も存在している。だからそういう言葉自体がない訳ではない。この世界でモブは脇役に分類されるらしい。確かにモブは脇役だ。脇役だけど、でも脇役じゃないんだ!
モブが分からないと豪語するロランとミシェルに私は話す辞書のごとく解説を始めた。
「まずモブとは群衆、暴徒、群れなどを意味する言葉で群衆状態になっているキャラクター達をモブキャラクターと言います。またこれらの意味が転じて物語のエキストラの端役キャラクターや狂言回しの無名キャラクター…つまり、明確な設定のないキャラクターのことを『モブ』といいます。」
その説明を聞いてミシェルは首を傾げる。それと反対にロランは納得したようだった。要約して聞き返してくる。
「つまり物語には出ているものの物語が進むことに必要ではない存在、ということ?…例えば通行人とかクラスメイトとか」
その説明にミシェルが納得したようだった。うん、私も完璧過ぎてビックリした。どうやらロランの理解力と頭の回転の速さは尋常ではないらしい。
「なるほど~、やっぱりロランの話は分かりやすいなぁ」
「まぁ、俺の武器だからな」
少し頬を染めて話す二人。なんだこいつら、できてるのか。既に恋仲なのか。ハイハイ、こっちをチラチラ見ないで特にロラン。どうぞ二人の世界を作り出してくださいよ。私はお気になさらずさ。空気だとでも思ってください~。え?いや別に寂しくなんかないし。ふん。
私がひねくれたのを察したのか、ロランが慌てて話を戻した。
「で、どうしてシルヴィラはモブになりたいんだ?」
「BLを間近で見たいから」
即答する私にミシェルが苦笑した。彼女は毒舌で話す事が多いが基本的に常識人なので一番まともな反応が返ってくる。ロランはもう慣れたものでやっぱり、というような顔をしていた。
「それ、普通の…男女の恋愛じゃダメなの?」
断じてダメである。そもそも普通の恋愛イコール男女の恋愛と言うのは大きな勘違いだと思う。古代ローマでは異性と結婚し、同性の愛人を持つというのが普通だった。それに本当に異性しか恋愛対象にならない人は人類の半数にも満たないと聞いたことがある。
つまり、同性愛は普通ではないか?
断じて否である。むしろノーマルである。
「色恋なら私が一から十まで教えるが?」
ドアに背を向けて同性愛について力説していた私は分からなかった。向かい側に座る二人の飽きれ顔は私だけに向けられていた訳ではないということを。そして私は忘れていた。
この小部屋が誰の所要物であるかということを。
「さ、何から教えてほしい…?」
後ろから伸びて来た手が私の唇をなぞり、私の背中には冷や汗が伝った。それから、慣れない甘い痺れに喉がコクリと音をたてた。
「今日は王宮に泊まるのだろう?なんならいっしょに寝るかい?」
え、なにそれ初耳なんですけど…!?
「この世界にモブという言葉は存在しない…?」
そう。そんな言葉は無かったのである。そうしたら主人公やヒロインとかも無いのかと思ったら、それらはあった。本というのは高級品なので読む人の大半は貴族だが、一応物語も存在している。だからそういう言葉自体がない訳ではない。この世界でモブは脇役に分類されるらしい。確かにモブは脇役だ。脇役だけど、でも脇役じゃないんだ!
モブが分からないと豪語するロランとミシェルに私は話す辞書のごとく解説を始めた。
「まずモブとは群衆、暴徒、群れなどを意味する言葉で群衆状態になっているキャラクター達をモブキャラクターと言います。またこれらの意味が転じて物語のエキストラの端役キャラクターや狂言回しの無名キャラクター…つまり、明確な設定のないキャラクターのことを『モブ』といいます。」
その説明を聞いてミシェルは首を傾げる。それと反対にロランは納得したようだった。要約して聞き返してくる。
「つまり物語には出ているものの物語が進むことに必要ではない存在、ということ?…例えば通行人とかクラスメイトとか」
その説明にミシェルが納得したようだった。うん、私も完璧過ぎてビックリした。どうやらロランの理解力と頭の回転の速さは尋常ではないらしい。
「なるほど~、やっぱりロランの話は分かりやすいなぁ」
「まぁ、俺の武器だからな」
少し頬を染めて話す二人。なんだこいつら、できてるのか。既に恋仲なのか。ハイハイ、こっちをチラチラ見ないで特にロラン。どうぞ二人の世界を作り出してくださいよ。私はお気になさらずさ。空気だとでも思ってください~。え?いや別に寂しくなんかないし。ふん。
私がひねくれたのを察したのか、ロランが慌てて話を戻した。
「で、どうしてシルヴィラはモブになりたいんだ?」
「BLを間近で見たいから」
即答する私にミシェルが苦笑した。彼女は毒舌で話す事が多いが基本的に常識人なので一番まともな反応が返ってくる。ロランはもう慣れたものでやっぱり、というような顔をしていた。
「それ、普通の…男女の恋愛じゃダメなの?」
断じてダメである。そもそも普通の恋愛イコール男女の恋愛と言うのは大きな勘違いだと思う。古代ローマでは異性と結婚し、同性の愛人を持つというのが普通だった。それに本当に異性しか恋愛対象にならない人は人類の半数にも満たないと聞いたことがある。
つまり、同性愛は普通ではないか?
断じて否である。むしろノーマルである。
「色恋なら私が一から十まで教えるが?」
ドアに背を向けて同性愛について力説していた私は分からなかった。向かい側に座る二人の飽きれ顔は私だけに向けられていた訳ではないということを。そして私は忘れていた。
この小部屋が誰の所要物であるかということを。
「さ、何から教えてほしい…?」
後ろから伸びて来た手が私の唇をなぞり、私の背中には冷や汗が伝った。それから、慣れない甘い痺れに喉がコクリと音をたてた。
「今日は王宮に泊まるのだろう?なんならいっしょに寝るかい?」
え、なにそれ初耳なんですけど…!?
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