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竜の花嫁
しおりを挟む竜の加護する王国ディサイヴ。
この王国には数百年に一度、魔力を持たない人間を竜へと嫁がせるという決まりがあった。
「ノエル様、間も無くディオーンへ到着致します」
「…」
そしてここに500年振りに竜へと嫁ぐ者の姿があった。
ノエルと呼ばれたその人間はディサイヴの王とメイドの間に産まれた子どもだった。
他に愛する者のいたメイドと気まぐれにそのメイドを手篭めにした王。
産まれる子が愛情を受ける事などないのは誰の目にも明らかであった。
事実、産まれたノエルは物心つく前から母親にさえ疎まれ、蔑まれ、物置然とした離宮に閉じ込められていた。
全てを恨み母は自死を選んだ。
それでもノエルの世界は何も変わらなかった。
(外に出られると思えば今度は竜へ嫁げ、か)
諦めることにはもう慣れている。
『国の安寧となれる事を誇りに思え』
実の父親である国王が初めて俺に向けて発した言葉はただそれだけだった。
(馬鹿馬鹿しい…誰がお前らの言う通りになんかするものか)
今まで一度も離宮を出た事のない俺にとって国の安寧なんてどうでもいいものなんて、分かっていないのだろう。
「ノエル様、ここからはお一人で」
馬車が止まったのは王国から随分離れた場所にある深い森。
森の奥には大きく聳え立つ山。
それこそがノエルの行き先である竜の国ディオーンであった。
そしてディオーンとディサイヴを隔てるこの森は花嫁となる人間以外は入ってはならないという決まりがある。
「それでは、お元気で」
幼い頃から世話係とは名ばかりの初老の執事は何の感情もない声でノエルにそう告げ、ノエルが今まで乗ってきた馬車と共に去って行った。
「あいつ、俺から解放されてさぞ喜んでいるだろうよ、っ!」
そう独りごちたノエルの前に突風と共に姿を現したのは一台の“馬車の様なもの”。
「何、これ…?」
一見すれば馬車で間違いない乗り物だが、それを引いている2頭の生き物は馬ではなかった。
「竜…?」
「驚かせてしまい、申し訳ございません」
恭しく頭を下げた2頭は瞬く間に人の形となりノエルへと告げる。
「ディオーン国王より勅命を受け、お迎えにあがりました」
さぁどうぞ、と優しい笑顔で促され何も言えずにそれに乗り込んだノエルは初めての感覚に戸惑っていた。
(今、俺に笑顔を見せた…?)
産まれてから一度も誰かの笑顔など見たことはなかった。
本来であれば一等愛情を注いでくれるはずの母親でさえ俺に向けたのは憎悪だったのに。
(でも、絆されるな。俺は……)
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