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いもシリーズその1 いもや誕生
しおりを挟むむかーしむかし。いもの世が始まってしばらくときが流れてからのお話。
小さな家の庭の片隅に暮らすいもたちがいました。何しろ小さな一画でしたから、お互いのことをみんなが知っていました。一日のうちの少しの時間は、おしゃべりだって楽しみました。みんな立派ないもになろうと一生懸命でした。そんな仲間がたくさんいて、いもたちは幸せでした。少なくとも多くのいもは、そう思っていました。
そのなかにスギナといういもがいました。このお話にはこれからしつこく登場することになると思います。彼には少し変わった特徴がありました。それは、草や虫や鳥たちの声を聴けること。生きているものだけではありません。風や石や、お日さまとだっておしゃべりできました。だからスギナは一日の大半を、風と歌を歌ったり、土の中の目には見えない小さな生き物たちのおしゃべりに加わったり、草ひとつひとつの名前を覚えたりしながら過ごしました。仲間の虫が暑さで弱っているときには、葉っぱで日陰をつくってやったし、隣の草の喉が乾いているときには、自分の飲みかけのお水を少し分けてやりました。逆にスギナが困ったときには、いろんな生き物たちが力になってくれました。
こんなふうに気の赴くままに過ごす毎日のなか、いもとしてやるべきこと(と周りのいもたちは思っていること)をあまり無理してやろうとしなかったからでしょうか、周りのいもがどんどん立派に美味しそうに育っていくなか、スギナはいつまでたっても小さなやせっぽちのいものままでした。スギナは自分が周りと違うぶん、いろいろなことを考えるようになりました。
「ぼくが他のいもたちと一緒に掘りおこされたとしても、人間たちはそれほど喜んではくれないだろう。いもの仲間たちも、ぼくをなんだかあわれむような目でみてくるんだ。仲間のことは大好きだけれど、でも、周りと比べて体が小さいっていうだけで、可哀想っていうことに本当になるんだろうか。人間たちに歓迎されないっていうだけで、ぼくの価値は低くなってしまうのだろうか…」
草に風に虫に、スギナは話しかけました。いつだって相談にのってくれる仲間たちです。話しながら、こんなふうに思いました。
(それじゃあまるで、ぼくたちが、おいしい立派ないもになるためだけに生まれてきたみたいじゃないか)
でも、今この瞬間生きているのは、いつか食べられるためだけではないことを、スギナはちゃんと知っていました。頭ではわかっていながらも、その後もグルグル考え込んでしまうスギナに、降りだした雨の雫がやさしく語りかけました。
「ひとりで考え込まないで、他のいもたちに聴いてごらん。いろんなところで暮らしているいろんないもたちに」
スギナは途端にキラキラと目を輝かせ始めました。この庭以外にも、いもの住む世界があるなんて!これからのいもたちとの出逢いを思うと、楽しくて楽しくて仕方がなくなりました。するとどうしたことでしょう、瞬く間に仲間たちがいもの抜け道をつくってくれて、そこを抜けるとスルリと宙に舞い上がりました。広く広く世界を見渡すことができました。庭の仲間のいもたちに心のなかでサヨナラを告げて改めて下を眺めると、そのなかに、ひときわ目立つ大きないも畑があります。そこは草ひとつなく、とてもきれいに管理されているようでした。スギナは、いつも隣にいた草が、いなくなった世界のことを想像しようとしましたが、うまく頭に思い描くことができませんでした。
(だってあんなにケンカしたのに…)
うっとうしいって思うことも何度もありました。いなくなってしまえばどれほど楽だろうと。でも、雨が少なくて、その草が辛そうにしていたときには、スギナはいつだってお水をわけてあげずにはいられませんでした。
スギナのいたところでは、うるさいほどきこえた生き物の声が、その畑ではほとんどきこえないから、少し寂しい感じもしました。でもそのまま見過ごすこともできなくて、まずはそこに行ってみることにしました。
入ってみればそこは、想像していたよりもずっと静かで、なんだか生きた心地のしないような世界でした。いもたちはみんな同じような姿かたちで、誰ひとりとして休むことなく黙々と働いています。いも仲間はたくさんいるのに、どのいもも言葉を交わすことなく、疲れたような顔をして動き続けるばかりでした。いったいどうしたことなのでしょう。
スギナはそこにいるいもひとりひとりに声をかけ始めました。でもどのいももとても忙しそうで、おしゃべりに構っている暇なんてないんだと言わんばかりに、みんな無視を決め込みました。日が暮れる頃になってもそんなふうだったからもう諦めて別のところへ行こうかと考え始めたちょうどそのとき、話しかけてきてくれたいもがいました。
「どうしたんだい、君、ここのいもじゃないよね?」
そのいもは他のいもとは様子が違って見た目はスギナと同じように小さく、まるで今にも死んでしまいそうな、弱々しい姿でした。名前をシグレといいました。
スギナは驚いてこたえました。
「こんなにたくさんいもがいるのに、どうしてぼくがここのいもじゃないってわかったの?」
「わかるさ。ここにいるいもたちは、基本的には他のいもには無関心で、気にするときといったら自分が周りと比べてどれだけ優れているか、あるいは劣っているかを確認するときぐらいなんだ。でもぼくは、いもとして生まれてきたからには、ありのままのいも同士として関わりたい。その気持ちは誰にだってぼくの片想いで終わるということはわかっているけど、せめて自分は、どのいものことも真っ直ぐに見ていたいと思う。そういうふうに見るうちに、みんなのこと覚えちゃったさ」
「どうしてこんなに仲間がいるのに、誰もおしゃべりすらしようとしないんだろう?」
「みんな自分のことで精一杯なんだ。どれだけ立派ないもになるか。ひとときたりとともその考えが、頭を離れることはない。ここの畑の持ち主さんは、とても一生懸命でいい人だけれど、ここまでしっかり草を除かれ、大量のご飯を与えられたら、ぼくたちも頑張ってこたえなくちゃってなるよね。頑張るあまり息が詰まって周りが見えなくなっちゃうんだ」
シグレはまるで風に揺れる柳のようにつかみどころがなくふわふわしていて、その年も、まだ若いといえばそうだとも思うし、芋生(人生の芋版)のあれこれを経験してきた老齢だと言われればそれも納得できる様子でした。あるいはまだ若いけれど、あまりに激しい見えないいも争いに疲れきって、こんなふうになったというのが、いちばんしっくりくるかもしれません。悲しいことにシグレのいるいもの世界では、やさしいいもほど辛くなってしまうのです。とにかくスギナが感じたことは、そのままシグレを放っておくと、消えてしまいそうということだったので、そのまま一緒に連れて行くことにしました。
再び宙の世界に出ると、辺りはもう暗くなっていて、一瞬何も見えなくなりましたが、しばらくして暗闇に慣れた目に飛び込んできたのは、キラキラと月の光に反射する、小さな湖の景色でした。その湖の真ん中近くに、さらに小さな島があります。近寄るとそこは草花が咲き乱れ、たくさんの生き物の息づかいの感じられる場所でした。そこがあまりに心地よいので、スギナとシグレは座り込み、ときを忘れて物思いに沈み始めました。そしてどうやらそのまま二人は眠ってしまったようでした。
どのくらいの時間がたったでしょう。気がつくと辺りはほのかに光が差し始め、二人が目を開けるとすぐ前に、ひとりのいもが立っていました。見るところかなりの高齢ですが、二人が思わず目を細めるほど、エネルギーがみなぎっている様子でした。名をイスズといいました。
「こんにちは、お二人さん!よく寝たねえ。今何時だと思ってんだよ」
シグレはその勢いに圧倒されるばかりでした。
スギナは少し怒り口調で言い返しました。
「何時だっていいじゃないか。だってこの世界で、時間なんてなんの意味があるの」
イスズは少し遠くをみるような目になってつぶやきました。
「それもそうだねえ。つい、昔の癖で」「よし、散歩だ散歩!」
というわけで、気づいたら散歩をすることになっていて、スギナとシグレは慌ててイスズの後ろについてゆきました。その島の景色はやはりとても美しく、どこへ行っても生き物の声で満ちていて、スギナはそれだけでもう幸せでした。しばらくそれに浸っていると、気づいたらイスズがいなくなっていました。
「あそこだよ」
シグレの声のするほうを振り返ったときに目に入ったのは、小さな木に向かって静かに手を合わせるイスズの姿でした。そのイスズはさっきまでのパワフルな様子とは打って変わって、ひとまわりもふたまわりも小さく、そして老けて見えました。
「あれは私の友だちの墓なんだ」イスズはいいました。「墓にその友だちが今もいるわけではないってことはわかっているけどね」さらにこう続けます。
「君―スギナと言ったかな―は、いも以外のものの声を聴くことができるのだろう。私もかつては聴けた。それだけでなく、人の声まで聴けたのよ。人間の友だちもできた。私はゆかちと呼んでいた―
ゆかちの話をしてもいいかい?」
※ゆかちさん、勝手に名前使ってごめんなさい。たまたま頭に降りてきたのがこの名前だったけど、実在するゆかちさんとは関係ないのでご了承ください🙇
イスズは二人の返事も待たず、語りだした。
「いもはほとんどの場合、人に食べられる運命にあるから、人と深い仲になるまでのときを共に過ごせることなんて滅多にないものだけど、ゆかちは私をなぜだか食べずに匿って、ことあるごとに話しかけてきた。ゆかちは人に好かれる人だったから、友だちはたくさんいたのに、どうしてわざわざそんなことをしたのか今となってはわからんがねえ。聞きたいけど、もうどうにもならん。
あるときゆかちの手作り木船にのって、湖に出たことがあった。そうしてこの島にたどり着いた。秘密の宝物を見つけたようで嬉しくて、長い間ときを忘れてここでふたりで遊んでいた。さて帰ろうって思って来た場所まで戻ったとき、ゾッとしたよ。乗ってきたはずの木船がなかったのだから。
もう帰れない。そのことをゆかちに伝えると、『そうなんだー』とだけ言って、そこからが凄かった。ゆかちのサバイバル能力が全開になった。島には至るところに食べられるものがあったから、それで自然に暮らしてゆくことができた。ただし、冬がくるまではね。食べるものがなくなるとゆかちはどんどん衰弱していき、最後に私が願ったことは、もうわかると思うけど、『私を食べて、少しでも生き延びて』ということだった。でもゆかちは悲しくて悲しくて、どうしてもそれができなかった。いもと人が最初から言葉を交わせなければ、仲良くなることがなかったなら、『悲しい』なんて気持ちも感じることはなかったのに。そのとき私はとっさにいものお師匠さんにお願いして、ゆかちの記憶を消してもらった。つまり私と出会ってからの記憶をね。そうすればためらうことなく私を食べることができるだろう。ほっとひと息ついたのもつかの間、湖の向こう岸から、ゆかちの友だちっぽい人が歩いてきた。ゆかちはその人を『あやちゃん』と呼んだ。『迎えに来たっす』とあやちゃんは言った。ゆかちはしばらくボーッとしていたが、あやちゃんがふたたび『行きませう』というとゆかちは黙って、あやちゃんとふたりお空に昇っていきました。それ以来私は、いも以外のものと話す力を失った」
唐突に、イスズの長めの昔話が終わった。
「ぼくはスギナと出会ってから、どうしてほとんどのいもは、いも以外のものと話せないんだろうって何度も思ったけど―」
シグレが言いかけるのに被せるように、イスズが相づちをうって言いました。
「どんなものとも話せる世界は、楽しいことも多いけれど、同時に、厄介なこともそれなりにあるもんなんだよ。だって例えば、人がいちいち生き物たちと話せていたら、ゆかちのように何もできなくなっちゃうものね」
と口にはしたものの、
(あら嫌だ。こんな言い方はしたくないわ。自分にも、どんないのちとも心を通わすことのできる世界にまだ生きたことのないおいもさんにも)
とすぐに思い直したイスズは、こう続けました。
「でもなんだか、やっぱり寂しいなあ」
このとき、いくつになっても寂しいときに、寂しいなあって声に出して言える自分に、救われた気持ちになるイスズなのでした。
ちょうどその頃お空の上では、ゆかちとゆかちが「あやちゃん」と呼ぶ友だちが、ふたりで話していました。
「イスズちゃんの話をしよう」ゆかちがいいました。
「記憶けされたんじゃないの?」とあやちゃん。
「消えたのは脳みそのなかでだけね。いのちに刻みこまれたそれは、たやすくは消えないものなのよ」
「ふうん、そうなんだー」
「まあいいや。あやちゃんは、今度生まれたらきっといいいもやになる気がする。そのときはイスズちゃんをよろしくね」
「なりまするか。よろしくですか」
こうこたえたあやちゃんは、珍しく、少し興奮しているみたいでした。
島でたくさん遊んだ後、スギナとシグレはふたたび、いもの旅を始めました。しばらく進むと後ろに気配を感じるので振り返って見てみると、イスズがなんてこともないような顔をして、少し離れたところにいます。歩いても歩いても、その距離は縮まりはしない代わりに離れもしないので、二人は顔を見合わせてうなずき合い、イスズもおいでと合図しました。イスズは嬉しそうでした。
こういうとき素直に喜べるイスズを、ちょっぴりうらやましく感じたのは、土の下からこの様子をじっと見ていた、アザミという名のいもでした。気づいたら3人は、あるいも畑に着いていたのです。でもそこは、シグレのいた畑とは対照的に、草ぼうぼうで、3人はそこがいも畑であるということに、すぐには気づくことができませんでした。アザミに呼び止められるまでは。
「おーい」土の下から声が聞こえた気がしました。その瞬間、小さないもが土から顔を覗かせました。
「今素通りしようとしただろう。まあいいけど」アザミがぶっきらぼうにいいました。
「ごめんよ」シグレがあまりに申し訳なさそうな顔をするので、アザミは少しやさしい顔になって続けました。
「びっくりしただろう。これでもここは畑なんだ。土の下にはちゃんと仲間がいる。ただ草が他と比べて多いだけ。ここの畑に関わる人は、しろさんっていうんだけど、なかなか草を刈ることができないんだ。『刈らない』んじゃないよ、『刈れない』の。毎日毎日畑にきて私たちに声をかけてる暇があったら、こんな小さな畑の草刈りなんてあっという間にできちゃうはずだからね。
草があるぶんお日さまの光が当たらないんだから、いもにとってはたまったもんじゃないんだけど、なぜだかしろさんのことを、嫌いになることができないんだ。もちろん、そういう人ばかりは困るよ。私もいちおういもだからね。でも、100人いたら1人ぐらいは、そういう人がいてもいいんじゃないかって思うんだ。いもなのにこんなこと考えるなんて変だよね」
するとイスズさんがすました顔をしていいました。
「あら、変なほうが楽しいじゃない。私たちは世間が思うよりもずっと、いもらしくない世界にすんでいるのかもしれないね」
それを聞いたアザミは、その瞬間、心に何かを決めたように
「私もついていく。しろさんにお別れしてからね」
と、3人(いも)には有無を言わせず旅の仲間に加わりました。3人も特に嫌がっている感じではありませんでした。
しばらく行くと、アメリカオニアザミの群生地がありました。
「しろさんは、このアザミたちのことを、かわいそうだと言ったんだ」
アザミがぽつりとつぶやきました。
「チクチクして痛いし、すごい勢いで繁殖するし、なにかと悪者扱いされるオニアザミだけど、故郷のヨーロッパでは、他の植物たちと変わらず生きてるひとつのいのちなんだよね」
その後続いたいもたちの長ーいおしゃべりは、ここでは割愛させてもらって、ときはしばらく先に進むことにします。
いもたちは元いた土地を抜け出して、宙をさ迷っている身ですから、いつかは土のなかに戻りたいという思いがあります。そして、戻るからには安心してのびのびといられる畑がいい。そうなると、どういう人が畑をやるかが重要になってきます。よさそうな人はいないだろうかといもたちが探し始めたちょうどそのときでした、あのゆかちさんの友だちの、あやちゃんがお空から降りてきたのは。
そのことを知ったイスズは興奮状態でした。あやちゃんがいもやになるのはもっとずっと先のことなのに、イスズの頭のなかはもう、いもやの畑のことでいっぱいでした。「ガハハハ」とイスズの心の叫びが漏れていました。
他のいもたちは特に興味はなさそうでしたが、イスズの熱量に巻き込まれて、(未来の)いもやの観察を始めました。
様子を見ればみるほど、(未来の)いもやさんは不思議な人でした。人間の時間を生きているような感じはしませんでした。お空からみていたゆかちさんも、それがちょっと心配で、とうとう降りてくる始末でした。
(中略)
基本的には自由に生きている(未来の)いもやさんでしたが、気づかぬうちに合わないこともやったせいで、体を壊してしまいました。いも4人の寄り合いでそのことが話題にのぼりました。
イスズ「ねえ聞いた!?(未来の)いもやのねえさん、ぎっくり腰になったらしいよ」
アザミ「ふうん」
スギナ「でも今はニートなんでしょ。あの人の場合、ニートでいるほうが安心じゃないか。だからこれでよかったじゃない」
イスズ「それもそうか」
というわけで、またしばらく様子見ということになりました。
安心しきっていもやのことはしばらく忘れかけた頃…。
イスズ「おい、今度はわらび餅屋で修行してるらしいよ」
スギナ「いもやになりたいからでしょ。それって嬉しいことじゃないの」
イスズ「でもあのわらび餅屋、怪しいにおいがする。心配だ」
シグレ「あ、でもほら。もうやめるみたいだよ」
イスズ「それならいいか」
というわけで今度もまた安心しきって様子見に。いもたちはもはや諦めモードで、あの人がいもやになろうがなるまいがどうでもよいというふうでした(イスズ以外)。
するとある日…。なんといもやが、いもを育て始めました。いもたちがあれやこれや騒いでいた間に、未来のいもやはすでにいもやになっていて、もういちいち「いもや」の前に「未来の」なんて面倒な言葉を付けなくてすむようになっていたのでした。
「突っ込めー」。いもやの噂を聞いたイスズはその瞬間、いもやの畑に突入しました。他のいもたちもその勢いにつられて一緒に潜り込み、4人はいもやの畑の初代メンバーにちゃっかり仲間入りを果たしたのでした。
つづく
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