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本編

6話

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昨日のあれは…

メイリーンとその侍女イリンの話を聞いてしまい、
混乱したまま自室に戻ってきた次の日の朝。
夜通し昨日の話について考えたものの、
結局何の結論も得られず登校する時間となってしまった。
部屋を出ようとしたとき、机の上に置かれた昨日アリエス嬢からメイリーンに届けてほしいと言われていた手紙が目に入り、とりあえずその手紙をカバンに入れて部屋を出る。



「あっ、おはようございます!殿下
えっ、ちょっとどうしたんですか~。」



メイリーンに会ったらどんな顔をすればいいのだろう。
話を立ち聞きしてましたなんて言えるわけないし。
そもそも、本当に昨日の会話の主はメイリーン
とイリンだったのかな?
駄目だ、 考えれば考えるほどわからなくなってくる。
とりあえず、一端頭をリセットしてメイリーンと
接さないと。
昨日の話が仮にもし全て本当だったのなら、
勝手に苦手意識をもって避けようとすることは
彼女に失礼だ。

(あれ?もう教室についた。)

メイリーンについて考えていたら、いつの間にか教室についていた。
今思い返すと 途中で誰かに挨拶されたような気がしたが、 あれは誰だったのだろうか。
無視なんて申し訳ないことしちゃったな。
流石にメイリーンではなかったと思う。

そういえば、今日メイリーンは来てるのかな?
昼休みに彼女の教室に行ってみよう。


いつものように午前の授業が終わる。
いつもならこのまま食堂に向かうが、
今日は先にメイリーンの教室に向かう。

「殿下そちらは食堂の方向ではございませんが、
どちらに向かわれるのですか?」

僕の側近の1人で宰相子息のケインが聞いてくる。

「ちょっと、メイリーンの教室にね。
昨日体調不良で早退したらしいから、
少し心配だからね。」

僕がそう答えると、ケインはなぜか少し怒った表情になった。
なぜだろう、今の会話の中に怒るポイントなんて
ないと思うけど。

「殿下!メイリーン様のことなんて心配する必要はありません。」

「どうして?婚約者の心配をすることは
当たり前のことだと思うけど。」

「メイリーン様は殿下の婚約者という立場を使って
、シャロンに陰湿なイジメをしています。
この前、私にシャロンが泣きながら教えてくれました。」

「メイリーンがシャロン嬢にイジメ?」

どういうことだろう。
メイリーンは僕に対しては色々と言ってくるが、一国の王女としての自覚をしっかりと持っている。
陰湿なイジメを行うことは彼女の矜持が許さないだろう。
ということは、本当にシャロン嬢がいじめられてるとした場合メイリーンに冤罪をかけたがっている
人物がいる可能性が高い。

とそこまで思い、昨日までの僕だったら
この話を素直に信じてしまったのではないかと
思い至る。
昨日、彼女の話を聞いたから、彼女がただ我儘で
色々なことにうるさい人ではないのかもしれないということを理解できた。
でも、そのことを理解してなかったら
メイリーンならやりそうだと思い、
彼女に注意してしまったのではないか。

「はい!シャロンが物がなくなったり、周りからは見えないところに時々悪口が書かれていて、悲しいと。
犯人に心当たりがないのか聞いたところ、
私が殿下とよく話をしているからメイリーン様が嫉妬してやってしまったのかもしれないと。」

何だそれ。
何もメイリーンがやったという証拠はないじゃないか。
それによく話をしていると言っても
基本友達と話をしていたと言って済ませられる
頻度に時間だ。

何かがおかしい。

シャロン嬢の話が全て嘘だとは思わないけど、
本当だとも思えない。

「分かった。そのことは頭に入れておくよ。
でも、それとこれは別だ。
メイリーンは僕の婚約者だ。
対面を保つためにも心配するのは必要だろう。」

そう言うと、ケインは「それは、そうですね。」
と大人しく引き下がった。
しばらくは、ケインに言った通り
メイリーンがシャロン嬢をいじめているかもしれないということを頭に入れておこう。
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