8 / 17
七.あらたへの
しおりを挟む
それから一年、二年と夢の通い路は続き、千颯も烏帽子姿となったが、二人は未だ清い関係のままだった。
二年もの間肌を許さない女など、普通の男は見限るだろう。しかしそこは夢、どこまでも茜子に都合のいいようにできているため、千颯の足が遠のくことも、無体を働かれることもなかった。
千颯は辛抱強く、児戯に等しい逢瀬に付き合ってくれた。詩歌を詠み交わしたり、差し入れてくれた菓子や果物を楽しんだり。元が納戸だから、双六や碁で競ったり箏を爪弾き聴かせたこともあった。そんな他愛ないことで、茜子の心は充分満たされた。
年が改まり、月日を重ね、そろそろ初夏も見えようかという風薫る夜。いつものように母屋に招こうとする茜子に、千颯は御簾の外から言った。
「たまには庭に出てみないか。満月の下、松にかかる藤が満開だ」
「でも……」
屈託のない調子の誘いに茜子は逡巡する。築山の庭には、藤だけでなく花細し桜やさ丹つらう椛など四季を彩る花木が植えられているが、東北対で暮らし始めてから、茜子は邸の外は勿論、南庭にさえ出たことがない。
「大丈夫だ、邸の中なら問題ない。これから長雨の季節になると、俺はあまり通って来られなくなるから」
「……そうね」
夢も雨障みするものなのか、言われてみると、雨や雪の夜に彼の夢を見たことはない。食い下がる千颯に、茜子も吹っ切れたように頷いた。どうせ夢なのだ、見咎められることもないだろう。
「ああでも、少し待って」
立ち上がってなお襲の裾と共に床に広がるほど長い髪を、腰の辺りで輪に括る。右手で袿衣と単衣の裾を絡げ(初花前に仕立てた袙衣はこの頃さすがに寸足らずになり、梓子のお下がりの袿衣を着ていたが、袴は切袴ほどの丈が却って動き易くそのまま穿いている)、左手に扇の盾を翳し、茜子はそっと妻戸より簀子縁に出た。その抜かりない姿に、千颯は軽く苦笑いする。
「……相変わらず、守りが堅い」
「あら、淑女たるもの、そう簡単に顔は晒せないわ」
花見の誘いが半分は口実であることを見越して、茜子は月宿る雲の扇の陰よりくすりと笑い返した。とは言え、ここまで来れば晒したも同然だ。抜かりなく準備された草履を履くときやさりげなく差し伸べられた手を取る際など、どうしても扇を下ろす瞬間が生まれる。
糸桐殿の南庭は、枝葉や小石に至るまで計算し尽くされたような風雅な庭ではないが、あまり人の手が入らないことで、却って野趣に富んだ景観を生み出していた。梅溢れて桜散り、今は藤、間もなく紫陽花が続くことだろう。
釣灯籠の火も遠く、天満つ月の下、群ら咲きの花弁が仄白く浮かび上がり、あるかなしかの夜風にさやぐ様子は、まさに優美の一言に尽きた。
中島にかかる橋から望む、月と星と風と花と。この夜のすべてが芳しい。
「……ねえ。番いって、いったい何」
隣に立つ千颯を仰ぎ、茜子は今更のように訊ねた。座していると然程感じないが、こうして並び立つと、威圧感を覚えない程度には背が高い。
不思議なもので、最初は茜子と同じ歳くらいだと思っていた千颯は、茜子が十六を数えた今、二十歳ほどに見える。それも以前訊ねてみたことがあるが、「鳥は雛の時期は短いが、成鳥すると、人の目には齢など知れないだろう? それと似たようなものだ」と、解るような解らないような回答が返って来た。
加えて、普段は狩衣烏帽子という貴族の略装を完璧に着こなしているものの、実はあまり着慣れていない(という設定な)のか、たまに今夜のように髪を括っただけの姿で訪れることがある。茜子は彼を加冠前から知っているため目くじらを立てることもないが、本来とんでもなく非常識な格好だ。
なのに不思議と気品は少しも損なわれず、花の香を運ぶ風に濡羽色の髪を遊ばせながら千颯が答える。
「要は妹背、夫婦のことだが……、俺たちの場合はまた少し違う。俺たちは、比翼だから」
「比翼?」
聞き覚えはあるが耳馴染みのない単語に、茜子は眉をひそめた。大陸の伝説に語られる鳥。互いに片目、片羽しか持たないため、常に二羽並んで飛ぶのだと言う。……確かに、茜子も千颯も隻眼だ。しかし両腕は健在である。
「番いとなった比翼は比類なき力を手に入れる……そういう伝説が、各地の天狗たちの間で昔から語り継がれてきた。単なる言い伝えだと思われていたけれど、俺たちが産まれた」
冠のない────人ではない姿だからこそ、花誘う風に揺れる大振りの藤を背に立つ千颯は、さながら夜の精のようであった。
「俺と姫は、山と京で共に産まれた。そしてこれからは共に生き、共に死ぬ。俺は君なしでは翔べない、生きられない」
「…………」
今まででいちばん熱の籠もった告白に、茜子は陶酔を通り越して若干たじろぐ。
(ちょっとこれは……設定が重すぎじゃない?)
だが、垣間見の顔かたちや手蹟の人となりも知らないうちから虜となる理由として、番いというのはなかなか巧い説明だと思った。……やや空虚な設定でもあるが。
ひたむきな金の瞳に気後れし、茜子はつい目を逸らしてしまう。しかしその困惑ごと包み込むように、千颯は肩越しに腕を回して来た。
「だから姫も────俺なしでは生きられないんだよ?」
「!」
夜に映える声の密語に、茜子は思わず抱擁を拒む形で振り返ってしまった。それ以上無理強いはせず身を離した千颯は、耳まで赤くした茜子の反応に満足したように、長い長い髪を梳く。月の光の下で見るせいか、その指遣いはどこか艶めかしい。
「いずれは、姫の口からそう聞きたいものだ」
「……では、わたしがそこまで夢中になれるよう、ちはや様もお励みくださいませ」
茜子もどうにか一矢報いようと、扇を口許に構え直し敢えてさらりと受け流した。だが千颯の口許に浮かぶ余裕の笑みは崩れない。
しかし、右目からほろりと頬を伝った茜子の涙には、さすがに動揺を見せた。
「どうした、急に」
「……大丈夫、なんでもないの」
緩くかぶりを振りながら、茜子は扇を広げたまま蝉羽重の狩衣の袖に額を凭せる。瑞々しい薫衣香は、山滴るこれからの季節にも彼自身にもよく似合っていた。
千颯に求められるほど、茜子の胸に姉の言葉が甦る。
『茜子には一生、恋歌を贈ってくれる殿方なんて現れないもの』
梓子の言うとおりだ。家族にも見放されたばけものの茜子をこれほど一途に溺愛してくれる相手は、羨望と孤独と憧憬が生んだ夢の中にしかいない。
現実であればよかったのに、などと贅沢は言わない。夢でもいい。夢で構わないから────せめて覚めない夢であってほしい。この夜が明けなければいい。
叶わない祈りと知りつつ、茜子はそう願わずにいられなかった。
二年もの間肌を許さない女など、普通の男は見限るだろう。しかしそこは夢、どこまでも茜子に都合のいいようにできているため、千颯の足が遠のくことも、無体を働かれることもなかった。
千颯は辛抱強く、児戯に等しい逢瀬に付き合ってくれた。詩歌を詠み交わしたり、差し入れてくれた菓子や果物を楽しんだり。元が納戸だから、双六や碁で競ったり箏を爪弾き聴かせたこともあった。そんな他愛ないことで、茜子の心は充分満たされた。
年が改まり、月日を重ね、そろそろ初夏も見えようかという風薫る夜。いつものように母屋に招こうとする茜子に、千颯は御簾の外から言った。
「たまには庭に出てみないか。満月の下、松にかかる藤が満開だ」
「でも……」
屈託のない調子の誘いに茜子は逡巡する。築山の庭には、藤だけでなく花細し桜やさ丹つらう椛など四季を彩る花木が植えられているが、東北対で暮らし始めてから、茜子は邸の外は勿論、南庭にさえ出たことがない。
「大丈夫だ、邸の中なら問題ない。これから長雨の季節になると、俺はあまり通って来られなくなるから」
「……そうね」
夢も雨障みするものなのか、言われてみると、雨や雪の夜に彼の夢を見たことはない。食い下がる千颯に、茜子も吹っ切れたように頷いた。どうせ夢なのだ、見咎められることもないだろう。
「ああでも、少し待って」
立ち上がってなお襲の裾と共に床に広がるほど長い髪を、腰の辺りで輪に括る。右手で袿衣と単衣の裾を絡げ(初花前に仕立てた袙衣はこの頃さすがに寸足らずになり、梓子のお下がりの袿衣を着ていたが、袴は切袴ほどの丈が却って動き易くそのまま穿いている)、左手に扇の盾を翳し、茜子はそっと妻戸より簀子縁に出た。その抜かりない姿に、千颯は軽く苦笑いする。
「……相変わらず、守りが堅い」
「あら、淑女たるもの、そう簡単に顔は晒せないわ」
花見の誘いが半分は口実であることを見越して、茜子は月宿る雲の扇の陰よりくすりと笑い返した。とは言え、ここまで来れば晒したも同然だ。抜かりなく準備された草履を履くときやさりげなく差し伸べられた手を取る際など、どうしても扇を下ろす瞬間が生まれる。
糸桐殿の南庭は、枝葉や小石に至るまで計算し尽くされたような風雅な庭ではないが、あまり人の手が入らないことで、却って野趣に富んだ景観を生み出していた。梅溢れて桜散り、今は藤、間もなく紫陽花が続くことだろう。
釣灯籠の火も遠く、天満つ月の下、群ら咲きの花弁が仄白く浮かび上がり、あるかなしかの夜風にさやぐ様子は、まさに優美の一言に尽きた。
中島にかかる橋から望む、月と星と風と花と。この夜のすべてが芳しい。
「……ねえ。番いって、いったい何」
隣に立つ千颯を仰ぎ、茜子は今更のように訊ねた。座していると然程感じないが、こうして並び立つと、威圧感を覚えない程度には背が高い。
不思議なもので、最初は茜子と同じ歳くらいだと思っていた千颯は、茜子が十六を数えた今、二十歳ほどに見える。それも以前訊ねてみたことがあるが、「鳥は雛の時期は短いが、成鳥すると、人の目には齢など知れないだろう? それと似たようなものだ」と、解るような解らないような回答が返って来た。
加えて、普段は狩衣烏帽子という貴族の略装を完璧に着こなしているものの、実はあまり着慣れていない(という設定な)のか、たまに今夜のように髪を括っただけの姿で訪れることがある。茜子は彼を加冠前から知っているため目くじらを立てることもないが、本来とんでもなく非常識な格好だ。
なのに不思議と気品は少しも損なわれず、花の香を運ぶ風に濡羽色の髪を遊ばせながら千颯が答える。
「要は妹背、夫婦のことだが……、俺たちの場合はまた少し違う。俺たちは、比翼だから」
「比翼?」
聞き覚えはあるが耳馴染みのない単語に、茜子は眉をひそめた。大陸の伝説に語られる鳥。互いに片目、片羽しか持たないため、常に二羽並んで飛ぶのだと言う。……確かに、茜子も千颯も隻眼だ。しかし両腕は健在である。
「番いとなった比翼は比類なき力を手に入れる……そういう伝説が、各地の天狗たちの間で昔から語り継がれてきた。単なる言い伝えだと思われていたけれど、俺たちが産まれた」
冠のない────人ではない姿だからこそ、花誘う風に揺れる大振りの藤を背に立つ千颯は、さながら夜の精のようであった。
「俺と姫は、山と京で共に産まれた。そしてこれからは共に生き、共に死ぬ。俺は君なしでは翔べない、生きられない」
「…………」
今まででいちばん熱の籠もった告白に、茜子は陶酔を通り越して若干たじろぐ。
(ちょっとこれは……設定が重すぎじゃない?)
だが、垣間見の顔かたちや手蹟の人となりも知らないうちから虜となる理由として、番いというのはなかなか巧い説明だと思った。……やや空虚な設定でもあるが。
ひたむきな金の瞳に気後れし、茜子はつい目を逸らしてしまう。しかしその困惑ごと包み込むように、千颯は肩越しに腕を回して来た。
「だから姫も────俺なしでは生きられないんだよ?」
「!」
夜に映える声の密語に、茜子は思わず抱擁を拒む形で振り返ってしまった。それ以上無理強いはせず身を離した千颯は、耳まで赤くした茜子の反応に満足したように、長い長い髪を梳く。月の光の下で見るせいか、その指遣いはどこか艶めかしい。
「いずれは、姫の口からそう聞きたいものだ」
「……では、わたしがそこまで夢中になれるよう、ちはや様もお励みくださいませ」
茜子もどうにか一矢報いようと、扇を口許に構え直し敢えてさらりと受け流した。だが千颯の口許に浮かぶ余裕の笑みは崩れない。
しかし、右目からほろりと頬を伝った茜子の涙には、さすがに動揺を見せた。
「どうした、急に」
「……大丈夫、なんでもないの」
緩くかぶりを振りながら、茜子は扇を広げたまま蝉羽重の狩衣の袖に額を凭せる。瑞々しい薫衣香は、山滴るこれからの季節にも彼自身にもよく似合っていた。
千颯に求められるほど、茜子の胸に姉の言葉が甦る。
『茜子には一生、恋歌を贈ってくれる殿方なんて現れないもの』
梓子の言うとおりだ。家族にも見放されたばけものの茜子をこれほど一途に溺愛してくれる相手は、羨望と孤独と憧憬が生んだ夢の中にしかいない。
現実であればよかったのに、などと贅沢は言わない。夢でもいい。夢で構わないから────せめて覚めない夢であってほしい。この夜が明けなければいい。
叶わない祈りと知りつつ、茜子はそう願わずにいられなかった。
0
あなたにおすすめの小説
社長に拾われた貧困女子、契約なのに溺愛されてます―現代シンデレラの逆転劇―
砂原紗藍
恋愛
――これは、CEOに愛された貧困女子、現代版シンデレラのラブストーリー。
両親を亡くし、継母と義姉の冷遇から逃れて家を出た深月カヤは、メイドカフェとお弁当屋のダブルワークで必死に生きる二十一歳。
日々を支えるのは、愛するペットのシマリス・シンちゃんだけだった。
ある深夜、酔客に絡まれたカヤを救ったのは、名前も知らないのに不思議と安心できる男性。
数日後、偶然バイト先のお弁当屋で再会したその男性は、若くして大企業を率いる社長・桐島柊也だった。
生活も心もぎりぎりまで追い詰められたカヤに、柊也からの突然の提案は――
「期間限定で、俺の恋人にならないか」
逃げ場を求めるカヤと、何かを抱える柊也。思惑の違う二人は、契約という形で同じ屋根の下で暮らし始める。
過保護な優しさ、困ったときに現れる温もりに、カヤの胸には小さな灯がともりはじめる。
だが、契約の先にある“本当の理由”はまだ霧の中。
落とした小さなガラスのヘアピンが導くのは——灰かぶり姫だった彼女の、新しい運命。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
花嫁御寮 ―江戸の妻たちの陰影― :【第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞】
naomikoryo
歴史・時代
名家に嫁いだ若き妻が、夫の失踪をきっかけに、江戸の奥向きに潜む権力、謀略、女たちの思惑に巻き込まれてゆく――。
舞台は江戸中期。表には見えぬ女の戦(いくさ)が、美しく、そして静かに燃え広がる。
結城澪は、武家の「御寮人様」として嫁いだ先で、愛と誇りのはざまで揺れることになる。
失踪した夫・宗真が追っていたのは、幕府中枢を揺るがす不正金の記録。
やがて、志を同じくする同心・坂東伊織、かつて宗真の婚約者だった篠原志乃らとの交錯の中で、澪は“妻”から“女”へと目覚めてゆく。
男たちの義、女たちの誇り、名家のしがらみの中で、澪が最後に選んだのは――“名を捨てて生きること”。
これは、名もなき光の中で、真実を守り抜いたひと組の夫婦の物語。
静謐な筆致で描く、江戸奥向きの愛と覚悟の長編時代小説。
全20話、読み終えた先に見えるのは、声高でない確かな「生」の姿。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
25人の花嫁候補から、獣人の愛され花嫁に選ばれました。
こころ ゆい
キャラ文芸
※十章まで完結しました。🌱
お好みのものからお読み頂けますと幸いです。🌱
※五章は狐のお話のその後です。🌱
※六章は狼のお話のその後です。🌱
※七章はハシビロコウのお話のその後です。🌱
※九章は雪豹のお話のその後です。🌱
ーーそれは、100年ほど前から法で定められた。
国が選んだ25人の花嫁候補。
その中から、正式な花嫁に選ばれるのは一人だけ。
選ばれた者に拒否することは許されず、必ず獣人のもとに嫁いでいくという。
目的はひとつ。獣人たちの習性により、どんどん数を減らしている現状を打破すること。
『人間では持ち得ない高い能力を持つ獣人を、絶やしてはならない』と。
抵抗する国民など居なかった。
現実味のない獣人の花嫁など、夢の話。
興味のない者、本気にしない者、他人事だと捉える者。そんな国民たちによって、法は難なく可決された。
国は候補者選びの基準を、一切明かしていない。
もちろん...獣人が一人を選ぶ選定基準も、謎のまま。
全てをベールに包まれて...いつしかそんな法があること自体、国民たちは忘れ去っていく。
さて。時折、絵本や小説でフィクションの世界として語られるだけになった『花嫁たち』は...本当に存在するのだろうかーー。
皆が知らぬ間に、知らぬところで。
法によって...獣人の意思によって...たった一人の花嫁として選ばれた女の子たちが、個性豊かな獣人たちに溺愛される...これはそんなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる