俺は、冒険がしたい。

ミノル

文字の大きさ
8 / 13

俺は、冒険がしたい 8

しおりを挟む
 屯所を出ようとした所、警備兵の隊長が源太に膝まづいた。

「げげげ源太様ー!」
「「「源太様?!」」」
「なんだじょ! いきなり知らないおっさんが飛び出して来てビックリしたじょ。」

 何でお前も知らないだよ。
 源太の事を様付けで、めちゃくちゃ頭下げてんのにそれを知らないおっさんとか言っちゃ可愛そうだろ。

「源太様。 この街に要らしていたのであれば、私自らが警護、案内を致しましたものを気付くのが遅くなり大変申し訳ありません。 この失態、お許し頂けないようなら……。 今すぐこの場で私の腹、かっさばいてこの罪に酬いたく……。」

「止めるじょ。 そのナイフを離すじょ。」
「お許し頂けるのですか? なんと慈悲深い……。」

 いきなり取り出したナイフを地面に落とし、深々と地に頭を擦り付ける隊長。

「このおっさんヤバイじょ。 おら、こんな危ない人間見たの初めてだじょ。」

 なんか、色々と報われない隊長を見てると哀れに思えてきて、早くこの場を去りたくなった。
 この想いは、源太も同じようだ。
 いや、この場にいる俺達全員の共通の意思だ。

 俺、妹、陽子の三人は、目を合わせて頷き合い一目散に屯所から駆け出した。

「あっ。 待つじょ。 おらを置いて行かないで欲しいじょ~。」
「待って下さい。 源太様ー!」
「怖い、怖いじょ。 着いてこないで欲しいじょ~。」
「はっ……。 申し訳、ありません!」

 源太の言葉を聞き、追いかけるのを止めた隊長は、通行人の目を気にする事無くその場で思いっきり土下座していた。

 源太は、本当に何者なんだ。

 俺達の疑問は、膨らむ一方だが一刻も早くこの街を出たい。
 このまま、この街にいるとどんな厄介事に巻き込まれるかわかったもんじゃない。
 急いで馬車を手配し、乗り込み街の出口へと向かう。

 すると、驚いた事にどこで聞き付けたのか、どんな繋がりで集まって来たのか、百人を超える人々が大手を振って見送りに来ていた。
 その中には、警備兵と隊長、源太をタコ殴りにしていた女性と娘に俺達が見たこのない人々が集まっていた。

「「「源太様~! ありがとうございます~! どうかご無事で~! また、会える日を心待ちしています~!」」」

「うおおおおあおお兄ちゃんは、いつまでも妹の帰りを待ってるからなぁぁぁぁ!」

「気持ち悪いからだまれにゃ。」

「ね、ね、ネコパーンチ! ごちそうさまです……。」

 一日も滞在して居なかったはずの街で、しかも、ちょっと目を離した隙に源太は、一体何をしたんだ。 いや、源太だけが原因じゃなさそうだが……。
 謎が謎を呼び、たくさんの人に見送られ、俺達は商業の街を後にした。

 一日も滞在しなかったし、せっかくもらった時間とお金が余ってるから他の街も見て回ろうと話し合った。
 馬車を走らせるが街を出たのは夕方、あっという間に日が傾き暗くなって来た為、馬車を止めて野宿する事にした。

 丁度近くに池があったので、妹と陽子は水浴びへ、俺と源太で薪を集めて火を起こし、源太が豆を焼いて晩御飯を作っている。

「キャー!」

 すると、水浴びへ行った妹達の方から悲鳴が聞こえ、急いで池へ向かう。

「これが俺の冒険の第一歩だ! 早く助けるぞ!」

 源太も急いでついてくるがその光景を見て足を止めた。

「とんだ、空豆だじょ。」

 妹達は、ゴブリンに襲われていた。
 村からほとんど出たことのない俺達は、夜の森は危険だと知らなかった。
 ゴブリンや魔獣が現れ旅人を襲うことがあるらしいと聞いていたが、旅に浮き足立ち頭から離れてしまっていた。
 衣服は愚か武器すら持っていない妹達は、圧倒的に不利だ。
 このままでは、ゴブリンにされるがままになってしまう。

「気持ち悪いんだよ! 死ねぇぇぇ!」

 と、思ったがゴブリンがボコボコにされて、絶命した。
 経験値を獲得しました。 レベルアップしました。
 俺と源太は、黙って晩御飯の準備へ戻る事にした。

「さっきの悲鳴は、どっちの悲鳴だったのかな……。」
「じ、じょ……。」

 しばらくしたら、何もなかったかのように上機嫌な二人が戻って来たので、ご飯にする事にした。
 晩御飯と言っても、急いで街から出たからたいした物はなく、とても質素だが、空腹は最大の調味料で有り誰も文句一つ言わずに美味しく食べた。

 食卓に謎の肉が増えていたが、誰も何も聞くことはなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

ボンクラ王子の側近を任されました

里見知美
ファンタジー
「任されてくれるな?」  王宮にある宰相の執務室で、俺は頭を下げたまま脂汗を流していた。  人の良い弟である現国王を煽てあげ国の頂点へと導き出し、王国騎士団も魔術師団も視線一つで操ると噂の恐ろしい影の実力者。  そんな人に呼び出され開口一番、シンファエル殿下の側近になれと言われた。  義妹が婚約破棄を叩きつけた相手である。  王子16歳、俺26歳。側近てのは、年の近い家格のしっかりしたヤツがなるんじゃねえの?

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

処理中です...