俺は、冒険がしたい。

ミノル

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俺は、冒険がしたい 9

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 謎の肉を食べた夜、俺はなかなか寝付けなかった。
 両隣で衣服がはだけて、あられもない姿で気持ち良さそうに眠る二人を見て、理性が吹っ飛びそうになるも我慢する。

 あの肉を食べてどうしてこんなに気持ち良さそうに寝れるのか、不思議に思ったが考え過ぎだと、自分をだましだまし落ち着かせようとするが頭から離れない映像が邪魔をして、寝れない。

 しばらく眠れそうにないから、火を絶やさぬように火の番と周囲への警戒を行うことにした。

「さすがに眠くなったら、源太にでも変わってもらおう。」

 森の夜は、思ったよりずっと静かだった。
 虫の鳴き声や夜行性の動物達の鳴き声、物音がすると思っていたが、何も聞こえない。
 静寂に包まれる中、満天の星空を見上げ心を癒す。

 静寂に包まれた時間は、短い時間も体感では、永遠に近い程流れる時間が遅くなるように感じる。
 そんな時間の流れを楽しんでいたが、ふと、有ることに気付いた。
 いや、気付いてしまった。

「妹達は、ゴブリンに襲われていた。 つまり、ゴブリンの巣が近くにあるんじゃないか? なぜ、襲って来ないんだ。」

 ゴブリンとは、執拗でズル賢く、知能もそれなりに高いとされているはず、仲間が殺られて復讐に来ないはずがない。
 子供である俺達など、数に任せて狩るか、寝た頃を狙い狩れば良いものを何もしないのは、なぜだ。

 それにこの気持ち悪い程の静寂は、初めは何も思わなかったがあまりにもおかしい。
 まるで、結界を張っているような感じすらする。

 もし、寝込みを襲うならそろそろ現れてもおかしくない。
 俺は、焚き火に薪を大量にくべて、火を大きくし最大限に周囲への警戒を行った。

 だが、何も起こらない。

 このまま警戒を続けても、精神が削れるだけだ。 何よりもこの胸騒ぎのせいで、じっとしていられない。
 
「源太も起こして二人で見て回った方が良いかな? いや、妹達を二人だけにして置いて行く方が危険だ。 ここは、俺一人で何とかしよう!」

 俺は、焚き火の中から松明を作り辺りを見て回る事にした。
 月夜に照らされ森の中は、うっすら足元が確認出来るくらいの明るさはあるが、松明がなければ心細い。

 松明を両手でしっかり持ち、初めにゴブリンを発見した池へと向かう。
 静かな森に俺の足音だけが、木霊する。
 心臓の鼓動が早くなり、その音が妙に大きく感じた。

「俺は、ビビってなんかない! 俺がアイツらを守るんだ。 そして、これが俺の冒険の第一歩だ。」

 しばらく歩くと水音が聞こえてくる。

「近いな。」

 警戒心を最大に上げ、いかなる奇襲にも対応出来るよう身構え前へと進む。
 すると、池に近付くにつれ鉄臭い異臭に襲われ恐る恐るその異臭の招待を確認しようとする。

「うわー! なんだこれ!」

 池がゴブリンの死体で血の池へと変わり、異臭を放っている。
 俺は、怖くなり来た道がわからなくなる程、一心不乱に森を走り回る。

「痛っ!」

 何かにぶつかり尻餅を付く。
 ぶつかった何かを松明の灯りで確認する。

「うわー! もーいたやだー! あー! こっちにもー!」

 ゴブリンの死体が張り付けにされ、俺達が野宿している周辺を囲んでいた。
 暗い森の中を更に一心不乱に走り続けた。

「もう、帰りたい! 大人しくしとけば良かったよ~。」

 森の中をさ迷い、ようやく焚き火をしていた場所の灯りを発見した。
 みんなの居る所へたどり着くと、安堵したせいか疲れが一気に押し寄せその場で気を失ってしまった。

 目を覚ますと陽子が膝枕をして、妹が心配そうに顔を覗き込んでいた。

「すごくうなされていたわよ。 もう、大丈夫?」
「ん? ああ、なんだかとても疲れた様な感じがするが、寝たおかげか、随分調子が良いよ。」

 どうしてこうなっているのかも、昨夜何があったのかも思い出せない。
 なんだか、悪い夢でも見ていた様な気分だ。
 しかし、口の中がほんのり甘いのは、なぜだ?

 気にしても仕方ないので、準備を済ませ次の街へ向かう事にした。
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