童貞魔法使い 異世界へ

ミノル

文字の大きさ
6 / 28
現代編

やられっぱなしのお前が悪い

しおりを挟む
「ステータス……。」

 おもむろに読み上げたらステータス画面が現れた。

水無月 純みなずき じゅん30歳 会社員

 レベル1 魔法使い

体力 1
腕力 1
俊敏 1
魔力 30

スキル
なし

魔法
なし

「え?????」

 俺は、突然現れたステータスを見て戸惑うが気になる事が二つあった。

「魔法使い?」

 いつの間に魔法使いになっていたんだ。

 そう言えば、職場や回りの人間に「もう少しで魔法使いだね」と言われた事を思い出す。

「そう言うことか……。」

 携帯で検索してみると、30歳を過ぎて童貞だと魔法使いになれるらしい、他にも色々書いてあるが、そこら辺は、良くわからないからスルーした。

「それにしても、低いな。」

 基準がわからないが俺のステータス低すぎないか?
それに、魔法使いなのに使える魔法がひとつもないのは、どうしてなんだ。

 ステータスが表示されたばかりでレベル1だから、レベルが上がったりしたら魔法を覚えるかも知れない。

「でも、この世界には魔物がいないけど、どうやってレベル上げれば良いんだろう。」

 こんな平和な世界で何を倒してレベルを上げる事が出来るのか、それとも、神奈の謎の失踪と何か関係があるのかも知れない。

 わからない事だらけだが、その内分かることが出てくるかも知れない。

 会社についていたので、現場の豚小屋へ向かう事にした。


 いつもの光景であったが、そこには、「がっちゅも先輩」と「ひぃ~先輩」がケンカ?の様な事をしていた。

「がっちゅも! お前は、出荷前の豚が10頭も死んでるじゃねーか! ないをせよったか!!」

「ひぃ~!」

「がっちゅ、じゃっでお前は、やっせんたっど。」

「ひぃ~!」

「がっちゅ、もうよかっ!!」

「ひぃ~!」

 見慣れた光景である。

 ひぃ~先輩は、いくら怒られてもケロッとしている。
 怒る側も「ひぃ~!」しか言わないから、それ以上なにも言えないから呆れて追求しない。
 究極の回避方法じゃないかと思う。

 ひぃ~先輩に何があったのか聞いてみるが「ひぃ~!」しか言わない。

「あ……はい。」

 それ以上何も聞く気になれず、「こいつ実は、魔物なんじゃないか?」と勘違いしそうになる。

 こんなどうしようもない日常を過ごしていたら、先日二代目から三代目に変わった社長が挨拶に現れた。

 パパからレゴブロック兵隊もらったと喜んでいた新しい社長だ。

 ちなみに、レゴブロックは、俺達の事を指すらしい。

「え~、今日から残業代カット、成績悪くなったら給料減らしま~す。」

 回りのみんなが黙っている中、俺だけが抗議する。

「君、嫌い、左遷」

 不機嫌になった社長は、そう言い放ち帰ってしまった。

 その場の空気が凍り付き静寂が広がる中、「ひぃ~」と、誰かの声がして、静まり返っていたはずの現場に爆笑の渦が起こる。

「がっちゅ、黙っちょったらよかもんを!」
「黙ってれば、良いものを」
「バッカだ~抗議しても意味ないのに」
「ひぃ~!」

 ゲラゲラと大きな笑い声は、収まることを知らない。

 言いたい放題である。
 大人は、みんな賢い。
 賢いから権力者には、逆らわない。

 言いたい事を口に出来ない。
 口にしてしまったら、バカを見るのが社会でありその縮図がここにあった。

 挫いた人間を見つけ、弱った所を一人が叩く。
 一度叩いて、反撃がないか確かめる。
 反撃出来ないと分かれば、次から俺もと見ていた回りの人間も参加し皆で叩く。
 次第にエスカレートして、ストレス発散先へと変わる。

 そんな絶望的な状況にいると上司の課長が話しかけて来た。

「お前のせいで上司である俺の評価が下がるだろ! それに、被害者面してるが、やられっぱなしのお前悪いんだ。」

 声を出し泣く事も出来ない、生きながら死ぬ。
 この会社にいる人間、全員の目が死んでいた事に12年勤めてようやく気付いた。

 まるで、本当に人間でないように感じた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

Re:コード・ブレイカー ~落ちこぼれと嘲られた少年、世界最強の異能で全てをねじ伏せる~

たまごころ
ファンタジー
高校生・篠宮レンは、異能が当然の時代に“無能”として蔑まれていた。 だがある日、封印された最古の力【再構築(Rewrite)】が覚醒。 世界の理(コード)を上書きする力を手に入れた彼は、かつて自分を見下した者たちに逆襲し、隠された古代組織と激突していく。 「最弱」から「神域」へ――現代異能バトル成り上がり譚が幕を開ける。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

異世界帰りの最強勇者、久しぶりに会ったいじめっ子を泣かせる

枯井戸
ファンタジー
学校でイジメを受けて死んだ〝高橋誠〟は異世界〝カイゼルフィール〟にて転生を果たした。 艱難辛苦、七転八倒、鬼哭啾啾の日々を経てカイゼルフィールの危機を救った誠であったが、事件の元凶であった〝サターン〟が誠の元いた世界へと逃げ果せる。 誠はそれを追って元いた世界へと戻るのだが、そこで待っていたのは自身のトラウマと言うべき存在いじめっ子たちであった。

処理中です...