童貞魔法使い 異世界へ

ミノル

文字の大きさ
20 / 28
異世界 編

朝チュンか? 朝チュンなのか?

しおりを挟む
 鳥のさえずる鳴き声と、温かく柔らかい感触に包まれ目を覚ますが、身動きが取れない。 辺りを良く見ると昨夜助けた女の子達が俺に絡み付いて寝ていた。

「朝チュンか? 朝チュンなのか!」

 昨夜寝る前に別々の部屋で寝るようにしていたはずなのに、なぜか女の子達が俺と同じ所で寝ている。
 俺が目を覚ますと、一緒に絡み付いていた女の子達も目を覚ます。

「おはようございます。 ご主人様」

「ご、ご主人様?!」

 何と甘美な響きだろうか。
 童貞守る事30年、こんな至福な言葉を俺は、聞いたことがない。

「ところでなぜ、俺と同じ所で寝てるんだ?」
「ご主人様の敵が寝ている間に襲撃して来ないかみんなで護衛する事にしました。」

 なるほど。 確かにそれは、有難い話だが一緒に寝ていては、護衛にならないんじゃないか?
 しかし、彼女らは、護衛のプロとかではないし、守りたい恩返しをしたいとかそんな思いがあったのかも知れない。
 その気持ちだけでも有難く受け取っておくことにしよう。
 何より、気持ち良かったし。

「ありがとう。 凄く嬉しいよ。」

 女の子達は、お礼を言われた瞬間、目を見開き驚いた顔をした後、頬を赤く染めて返す言葉を忘れ泣き出した。
 命の恩人に、いや、死ぬ事よりも辛い事が待っていたかも知れない状況から助けてくれた相手から感謝された事が何よりも嬉しかったのだろう。

 この後、彼女達にはお風呂に入ってもらいヒナコに準備してもらった綺麗な服に着替えてもらった。
 俺も昨夜の戦いで疲れて直ぐに寝たからお風呂がまだだったから、彼女達の後に入る事にした。

 思っていた以上に広く豪華な風呂場に驚いたが、一番驚いたのが数名の女の子が後から入って来た事だ。
 護衛は、大丈夫だから外で待っててくれと、頼んでも言うことを聞いてくれない。
 強く言えば、聞いてくれそうだが、泣き出しそうにもある。

 お風呂場で色々あった。
 本当に色々あったが、俺は、童貞を守り抜いた。

「神奈これは、浮気じゃ……ないよな。」

 着替えを済ませて冒険者ギルドへ向かった。
 冒険者ギルドへ何しに行くのかと言うと、彼女達を親元へ返してあげる為にギルドへ護衛と運搬の依頼、ついでに俺の冒険者登録をしに来た。

 一人では、建物の場所がわからないので、ヒナコに道を案内してもらい、ギルドへ着き中へ入る。
 受付と酒場が隣通しになってるのを見て、イメージ通りだと思わずわくわくしてしまい、中をキョロキョロしていたら、がらの悪い冒険者とおぼしき男に絡まれた。

「何見てんだよ! ここは、ガキが来る所じゃねーんだよ! 痛い目にあいたく無ければ、帰んな!」

 周りにいた冒険者達もバカにするように笑っている。
 まさか、ガキ扱いされるとは、思いもしなかった。

「ん? 良く見たら可愛いお嬢ちゃん連れてるじゃねーか。 俺にも貸してくれよ。」

 ロリコンか? ロリコンなのか?
 それなら、仲間なのか?

「私、こんな臭くて汚い人嫌です。」
「何だとこのクソガキがー! 口の聞き方を教えてやるこっちに来い!」

 俺が一人で思考しているとヒナコがどこかに連れ去られそうになっていた。
 慌てて男の前に立ち、制止を促す。

「なんだ? さっきまでビビって動く事も出来なかった癖に今更、カッコつけてんじゃねーよ! 人を殴った事もなさそうなガキが!」

 この男、何か勘違いをしてるようだ。
 それに、ギルド内での揉め事は、良くないし今から依頼を出さないと行けないから、ここはなるべく穏便に済ませた方が良いだろう。
 と、考えていたが、思い通りに行かないものだ。

「シカトしてんじゃねーよ! ガキが……!」

 男は、興奮してる様でこちらの話を聞ける様子ではない。
 ナイフを取り出し鼻息が荒くなり、今にもヒナコを刺して俺に襲いかかろうとしている。

 周りにいるやつらは、その様子を見て面白そうに煽っている。

「やっちゃえ! やっちゃえ! そのひょろいガキに社会の厳しさを叩き込んでやれ!」

 轟音と共に男の頭が床にのめり込み、さっきまでバカにしていた男達は、開けた口を閉じることが出来ず、アホ面のままこちらを見ていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

Re:コード・ブレイカー ~落ちこぼれと嘲られた少年、世界最強の異能で全てをねじ伏せる~

たまごころ
ファンタジー
高校生・篠宮レンは、異能が当然の時代に“無能”として蔑まれていた。 だがある日、封印された最古の力【再構築(Rewrite)】が覚醒。 世界の理(コード)を上書きする力を手に入れた彼は、かつて自分を見下した者たちに逆襲し、隠された古代組織と激突していく。 「最弱」から「神域」へ――現代異能バトル成り上がり譚が幕を開ける。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

異世界帰りの最強勇者、久しぶりに会ったいじめっ子を泣かせる

枯井戸
ファンタジー
学校でイジメを受けて死んだ〝高橋誠〟は異世界〝カイゼルフィール〟にて転生を果たした。 艱難辛苦、七転八倒、鬼哭啾啾の日々を経てカイゼルフィールの危機を救った誠であったが、事件の元凶であった〝サターン〟が誠の元いた世界へと逃げ果せる。 誠はそれを追って元いた世界へと戻るのだが、そこで待っていたのは自身のトラウマと言うべき存在いじめっ子たちであった。

処理中です...