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9* 青少年の事情
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公爵家の使用人を呼び明日の予定を伝え、案内された浴室には普段から使用している香油やソープまで用意されていた。
寄宿学校の寮生活は従者を伴わず、一人で身のまわりの事をこなすため、貴族の男子はそれまでの生活との違いに戸惑う。
シーフは侯爵家の人間ではあるが、ファントムーン侯爵家は普通の上位貴族と違い、十歳から身支度は自分でする為、よっぽど面倒な衣装ではない限り、湯浴みや着替えも自分で行うので特に気にならなかった。
食事は寮の管理人と、実家の爵位に関係なく初年度の下級生が順番で用意し、食器洗いは二年生の寮生が当番で行う。
掃除も各自の部屋は自分で行うのが原則で、洗濯は寮内の専属ランドリーメイドに纏めて渡すと乾かした状態で戻って来るが、畳んだり仕舞ったりするのは自分でしないといけない。
貴族であるからこそ実際に体験し、仕える者たちの仕事を理解し尊重する。
寄宿学校に行かない貴族の令嬢たちは、家令や侍女、オールワークメイドから学ぶ。
というわけで、一人でゆっくり寛いで湯浴みが出来るのだ。
幼い頃は従者や侍女、乳母に洗われていたが、あれはあれで大きくなるにつれて大変気疲れするのである。
身体を洗い香油を垂らして浴槽に浸かり、淵に首を乗せ、足を伸ばして身体の力を抜いた。
「上手くいくかな?」
明日の予定に不備はないか、頭の中で組み立て確認する。
何パターンも “イレギュラーな出来事” が起こった時の為に対策を講じるが、今まで上手くいった試しがない。
なんせ、“ 敵 ” にはあの “お兄様”がいるのだ。
近衛騎士団長が認める高い身体能力と剣技、知能を備えたお兄様が。
もっと有意義な事にその能力を発揮しろよ、と言いたい。
イージスなら、妹を護る為に磨いたのだから有意義だろう、とドヤ顔で言いそうだが、こっちからすれば余計な事を、と盛大な溜め息を吐きたい。
ピチャンとお湯を跳ね立ち上がると、少しふらつく。
「少し逆上せたか…」
バスタオルで身体を拭き、手触りの良い薄手の夜着を纏い、髪から滴る水で夜着が濡れないように肩にタオルをかけ浴室から出る。
外に控えていた使用人に案内された部屋は、明らかに主寝室の居間で苦笑する。
公爵夫人の計らいだろう。
使用人に礼を言い下がるように伝え、テーブルに用意されたレモン水を飲み、少し頭がスッキリする。
そして、シラフのままで湯上りのフローリアを前にして我慢出来るだろうか? と考え、首を横に振る。
テーブルの上に用意されているワインをグラスに注ぐと、甘く爽やかな薫りが鼻をくすぐる。
「甘いな」
果実の入ったサングリアで甘いが、度数は少し高そうだ。
普段飲む物より強めだなと、ソファーに身を沈め、髪を拭きながら寛いでいると、侍女に案内され湯上がりで頬を上気させた、色っぽいフローリアが驚いた顔で入って来る。
さて。
今夜は何処まで我慢が出来るだろうか、と独り言ちた。
寄宿学校の寮生活は従者を伴わず、一人で身のまわりの事をこなすため、貴族の男子はそれまでの生活との違いに戸惑う。
シーフは侯爵家の人間ではあるが、ファントムーン侯爵家は普通の上位貴族と違い、十歳から身支度は自分でする為、よっぽど面倒な衣装ではない限り、湯浴みや着替えも自分で行うので特に気にならなかった。
食事は寮の管理人と、実家の爵位に関係なく初年度の下級生が順番で用意し、食器洗いは二年生の寮生が当番で行う。
掃除も各自の部屋は自分で行うのが原則で、洗濯は寮内の専属ランドリーメイドに纏めて渡すと乾かした状態で戻って来るが、畳んだり仕舞ったりするのは自分でしないといけない。
貴族であるからこそ実際に体験し、仕える者たちの仕事を理解し尊重する。
寄宿学校に行かない貴族の令嬢たちは、家令や侍女、オールワークメイドから学ぶ。
というわけで、一人でゆっくり寛いで湯浴みが出来るのだ。
幼い頃は従者や侍女、乳母に洗われていたが、あれはあれで大きくなるにつれて大変気疲れするのである。
身体を洗い香油を垂らして浴槽に浸かり、淵に首を乗せ、足を伸ばして身体の力を抜いた。
「上手くいくかな?」
明日の予定に不備はないか、頭の中で組み立て確認する。
何パターンも “イレギュラーな出来事” が起こった時の為に対策を講じるが、今まで上手くいった試しがない。
なんせ、“ 敵 ” にはあの “お兄様”がいるのだ。
近衛騎士団長が認める高い身体能力と剣技、知能を備えたお兄様が。
もっと有意義な事にその能力を発揮しろよ、と言いたい。
イージスなら、妹を護る為に磨いたのだから有意義だろう、とドヤ顔で言いそうだが、こっちからすれば余計な事を、と盛大な溜め息を吐きたい。
ピチャンとお湯を跳ね立ち上がると、少しふらつく。
「少し逆上せたか…」
バスタオルで身体を拭き、手触りの良い薄手の夜着を纏い、髪から滴る水で夜着が濡れないように肩にタオルをかけ浴室から出る。
外に控えていた使用人に案内された部屋は、明らかに主寝室の居間で苦笑する。
公爵夫人の計らいだろう。
使用人に礼を言い下がるように伝え、テーブルに用意されたレモン水を飲み、少し頭がスッキリする。
そして、シラフのままで湯上りのフローリアを前にして我慢出来るだろうか? と考え、首を横に振る。
テーブルの上に用意されているワインをグラスに注ぐと、甘く爽やかな薫りが鼻をくすぐる。
「甘いな」
果実の入ったサングリアで甘いが、度数は少し高そうだ。
普段飲む物より強めだなと、ソファーに身を沈め、髪を拭きながら寛いでいると、侍女に案内され湯上がりで頬を上気させた、色っぽいフローリアが驚いた顔で入って来る。
さて。
今夜は何処まで我慢が出来るだろうか、と独り言ちた。
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