平成25年、あれから2年目の恋

みなわなみ

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おみやげ

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 ​夏休みも折り返し地点が過ぎた。健太がこの町を去る日も間もなくである。
 とはいえ、健太は、一日の最後には、いつも通り美咲のカフェ「潮音」を訪れていた。

「なぁ、美咲さん。神戸に帰るんやけど、お土産、何かええもんある?何かこの町らしいもん、あるやろか」

 ​健太の問いかけに、美咲はコーヒーを淹れる手を止め、冷たい声を返す。

「この街にお土産なんてない。何も残っていないから」

 ​美咲の言葉は、まるで氷のように冷たく、健太の心を突き刺した。

(あー、やってしもた…)

 健太は、美咲が再び心を閉ざしたことに、ひどく戸惑う。
 これまで、少しずつ縮まってきた心の距離が、再び遠ざかっていくのを感じた。

 ​健太は、ポケットから小さなキーホルダーを取り出し、ブラブラ揺らしながら美咲に言う。

「これは、ボランティア先で子供たちがくれてん。自分らで作ったって言ってた。
 これは俺がこの町でもらった、一番大切なお土産」

 健太はキーホルダーを握り締めて、先を続ける。

「ほんで、スマホの中には、この町の人たちが笑ってくれたこと、笑ってくれた時間がいっぱい入ってる。それも、お土産。…でも、それだけじゃあかん。俺は、ここにお金を落としたいんや」

 ​美咲は、その言葉に驚いて顔を上げた。

「……どういう意味ですか?」

 ​健太は、真っ直ぐに美咲の目を見て、真剣な眼差しで語りかけた。

「募金やない。寄付でもない。
 俺がここに落としたいんは、この町で美咲さんが淹れてくれたコーヒーのお金や。この街の人が作ったもののお金や」
「…」
「美咲さんたちが、自分たちの力で立ち上がろうとしてる。
 そのプライドを、俺は見てきた。俺は、それを買って…、この町のプライドを持って帰りたいんや」

 ​健太の言葉に、美咲の瞳から涙がこぼれ落ちた。
 美咲は、これまで「震災の被害者」として憐れに思われることに強い抵抗を感じていた。
 それは周りの優しさからの距離にもなっていた。
 しかし、健太は、美咲の心の奥底にある、この町を愛する気持ちと、この町が自分自身の力で立ち上がろうとする強さを見抜いてくれている。

 ​美咲は、健太の言葉に、これまで沈んでいた心が、ふんわり浮き上がるのを感じた。

 美咲は少し震える手で、健太にコーヒーを出す。
 健太は美咲の泣き顔には知らんふりして、コーヒーを静かに飲む。

「…美咲さんのコーヒー、やっぱり最高や」

 ​笑顔の健太の言葉は、美咲にとって、どんな言葉よりも、温かく、そして、未来への希望をくれるものだった。
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