平成25年、あれから2年目の恋

みなわなみ

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希望の缶詰

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 ​​健太は、美咲に「お土産なんてない」と言われた次の日、商店街の片隅にある仮設の小さな売店を訪れていた。

「…ん?これは?」

 健太が見つけたのは、町の漁師たちが水揚げした魚を使って作った、手作りの缶詰。

 ​缶詰のラベルには、震災前の美しい海辺の写真が貼られ、その横には、手書きで「町の再生物語」と書かれている。

「すみません、これ、たくさん欲しいときはどうしたらいいですか?」
 健太は店番をしている白髪の小さな女性に尋ねた。

「いっぺぇは、いっぺぇはつくんねぇよだけど、言ってくんろや。とっておぐから。いくついるんだ?」
「え?」

 まくし立てられた呪文のような言葉に健太は固まる。
 老婆がゆっくり繰り返した。

「いっぺぇはいっぺぇは」
「いっぺぇはいっぺぇは…?いっぺぇはいっぺぇ……あ!一度にたくさん?」
「んだ」
「一度にたくさん作ってないけど、数を言えば取っといてくださるものですか?」
「おぅ」
「ありがとうございます! じゃぁ、とりあえず24個ほどお願いします」
「おぅ」
「それと、こんな場所とこで買ったって見せたいので、写真撮っていいですか? おかあさんもご一緒に」
「写真は、おめてぇのぅ」
「おめでたいですか?」

「ワハハ!『おめてぇ』は『恥ずかしい』ってこった」

 スマホを構えようとした健太の後ろから野太い声が聞こえる。

「あんれ、浩志ひろし。じょうどよがった。こっちのおにいちゃんが、缶詰を二十四にじゅうし個いるってよ」
「おぅ、そんなに買ってくれんのか!」
「お兄さんが作っているんですか?」
「おぅ。漁で魚が捕れた時に仲間と作ってっかんだ。」

 浩志が日に焼けた顔に親指を立てる。

お前おめぇ、『潮音』でよぐ見るな。缶詰、どうすっぺ?」
「あ、お土産に」
「そっか、ボランティアか…」
「また戻ってきます」
「いや、ありがてぇと思ってるんだよ…」
「すみません…」
「おめぇが謝ることはねぇよ。な、婆様ばさま
「んだ。ありがてぇもの」
「非日常が日常として続いていくのってしんどいですよね。俺、また、ボランティアに戻ってきます。その前に、神戸でこの缶詰、宣伝します!
とりあえず、今晩食べたいので、2つください」
「はいよ。また来てな」

  健太は、缶詰を持って笑っている婆様と博志と一緒に写真に収まった。


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