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後編
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いやちょっと待って! 何でこんな展開!?
確かに昨夜は彼に抱かれたくて悶々としていたけど、タナボタ……じゃなくて朝からこんな場所で!?
「待ってまって!」
「待つ理由が分からない。貴方だって抱かれたくてうずうずしていた癖に」
「確かにそうだけど……。じゃなくって、こんな朝から恥ずかしいっ!」
「それで?」
僕の言葉を無視して彼は強引に中へと引っ張っていく。
中は外ほど派手派手ではなく、アイボリーの壁に小さな絵が飾ってあるくらいだった。
入ってすぐのところにフロントとタッチパネル。
何の意味があるのか、その近くにショーケースがあって財布やらキーケースやらディスプレイされている。
初めて見るラブホテルのロビーに呆気を取られていると、彼はまた僕の手を取って歩き出した。
「え? どこに行くの?」
「部屋ですが」
「だってフロントに誰もいなかったじゃない」
「ここはそういうもんです」
普段利用するホテルとの違いにまだ頭がついて行かない僕を、彼はエレベーターに押し込んだ。
着いた先は普通のビジネスホテルと変わりない風景。
ただ違う点はカードキーをかざす所がないのと、壁に部屋番号の書かれたライトが付いていること。
鍵がついていないのにどうやって入るんだ? という疑問をよそに彼はツカツカと進み、ある部屋の前に来ると躊躇いもなくドアを開けた。
「どうぞ」
言われるままに中へ入ると、彼はガチャと後ろ手にドアを閉めた。
「!!」
振り向く前に無造作に顎を掴まれ、強引に舌をねじ込まれる。
くちゅくちゅと舌を絡まされ、唇を貪られる。
顎を滴る唾液を気にすることなく、彼は僕の口の中を蹂躙し続けた。
「ぅあ……」
「腰が抜けてる。すっかり目なんか蕩けてるし。どんだけ飢えてたんですか」
「急にこんなことされたら、驚いて腰だって抜けるよ」
「驚いて抜けた様子じゃないですけどね。これ以上のことをされても大丈夫なんですかね」
もう一度唇にキスをすると、彼は僕を抱き上げ部屋の中へと入った。
最初に目に入ったのは大きなベッドがひとつ。
そのベッドの上に彼は僕を放り投げた。
身体を起こす間もなく、彼は僕の上に覆いかぶさる。
「ラブホテルのベッドはどうですか? 悪くはないでしょう?」
「やっ……、そこ、触っちゃ、ぃやあ……」
「嫌と言っている割には随分腫らせてますが? 焦らされて、人前で手を繋がれて恥ずかしい思いさせられて、興奮してたのは知っていますよ」
ズボンの上から膨れ上がったモノを指でなぞる。
線でなぞられ訪れる快感に思わず背中がのけぞってしまう。
「いくらでも声出していいですよ。そこら辺のシティーホテルなんかより全然防音が効いてます」
「あっあっ! そんなになぞっちゃ……、出ちゃうぅ」
「何が出るんです? 声ならいくらでも」
出るといっても彼は執拗に指を動かし、我慢しきれなくなった僕は下着の中に白濁した液を排出してしまった。
「んあああっっ! はぁはぁ……、酷いよ……」
「酷くないでしょう、念願の私でイケたんだから」
「こんなの……」
「『こんなの自慰と変わらない』? 大丈夫。時間はいっぱいあるし、他の方法でもいっぱいイカしてあげますよ」
身体で僕の身体を押さえたまま僕のズボンを脱がす。
精液で濡れた下着に手をかけると、ズボンの扱いとは違い乱暴にはぎ取り、床に捨てた。
「汚れた下着は貴方にふさわしくない。どうせ履いて帰れないでしょうし」
下半身だけ脱がすと、今度は上半身を脱がすのかと思いきや、おもむろに僕から身を起こした。
自分の上半身だけ脱ぐと、彼は手荷物から紙袋を取り出した。
「あんな場所まで何しに来たんですか? 仕事用のスマホにGPSが仕込まれてたのは知ってました。まさかこんなことに使うために入れたとは思いたくもないですが」
「……」
「図星ですか。別にいいですけど」
別にいいと言っている割に、彼の顔は『もう二度とこんな真似はするな』と言っている。
怒っているというよりは心配している感じに見える。
「これはちゃんと『お留守番』が出来たご褒美にと思っていたんですが、止めましょう」
僕が『えっ』と身体を起こすとカチャと何かを首に填めた。
「貴方を束縛するために与えます。これで貴方は私のものです。二度と私の許可なく勝手な行動は取らないように」
「束縛……」
首に手を当ててみると、革のような手触りと金属の冷たさ。
「何を付けたの?」
「見てみますか? 良く似合いますよ」
そのままベッドから立ち上がらせ、洗面所に備え付けられた鏡の前まで連れていかれた。
鏡に映る僕は、開けかかったシャツに赤い革の首輪を付けていた。
首輪はちょっと特殊な形をしており、ベルト部分は穴ではなく金属の輪で留まるようになっていた。その輪の先には南京錠。
「自分では外せません。鍵は私が持っています」
鏡越しに彼は自分の左手首を見せる。
同じような赤い革の細いブレスレットに小さい鍵がぶら下がっている。
「以前行為の最中に『君だけのものになりたい』って言ったでしょう。いろんな意味で私だけのものにしてあげます」
開けかかっていたシャツをゆっくりと脱がしていく。
露わになった白い肌に赤い首輪が嫌というほど映える。
「さて、貴方は私が怒っていないと思いますか?」
「思って、ない……」
「じゃあ分かってますね」
語調が変わる。
「お仕置きの時間です。あの場で貴方を見つけた時、私がどれだけ心臓が止まる思いをしたか。それだけあの場所は危険だったんだ」
「じゃあ何で君はあんな場所にいたんだ」
「その首輪を引き取りに行っていただけです」
「あんな朝早くに?」
「夜遊びした帰りです。私だってたまには息抜きくらいします」
首輪を掴み引き寄せ、フゥっと息を吹きかける。
一回鎮まった欲情がゾクゾクと背中から昇りつめてくる。
「寝てないから手加減なんて出来ませんよ。もっとも、今日は執事ではないから、手加減も遠慮もしないけど」
「怖いことは、やだ……」
「怖くはしません。ただ、気持ちよくし過ぎてあげるだけ」
上半身だけ映し出される鏡の前で彼は僕の乳首を強く摘まんだ。
痛い筈の強さなのに、その刺激は痺れとなって快感を生む。
鏡の中の僕はきゅっと摘ままれるたびに口を薄く開き、目を細めている。
「久し振りに乳首を弄られるのはそんなにイイですか? もっと弄ってって顔してる」
「だって……」
「ずっと私に放置されてたから、抱かれたくて仕方なかったんでしょう?」
「分かってたなら少しくらい抱いてくれてたって……!」
「あの仕事の状況で抱かれたところで、さほど気持ちよくなれないかと。結果、裏目に出ましたが」
「裏目?」
「貴方を暴走させました。本当は明日帰った時にこれを渡して抱くつもりでした。それなのに……」
両手でそれぞれの乳首をぎゅっと摘まみ、僕の臀部に彼の股間を強く押し当てた。
「どこまで私に面倒をみさせたいんですか。これ以上、私なしでは生きていけない身体になりたいんですか?」
「もう……なってる。君がいないと、僕は僕でいられない。イライラするし、悶々するし、思いがけない行動にも出る」
「その思いがけない行動で、ここを他の男に犯されても、貴方は平気なのですか? 私以外の男にマーキングされ、そいつが忘れられない身体にされてもいいというのですか?」
押し当てられる股間は指へと変わる。
つぷりと指先だけが菊紋に埋まり、前後にゆっくりと動かされる。
「他の男なんて、嫌だ。君が欲しい、君のモノだけが欲しいんだ」
「本当に?」
意地悪そうに相変わらず指先だけを動かし、それ以上のことはしない。
「本当だから。だからお願い……」
鏡の中の彼の目を見て懇願する。
意地悪をしないで指でなく、その逞しいモノで僕の中を犯して欲しいと。
「発情した雌猫のようですね。そんなに欲しいんですか」
そう言って指を抜き、再び僕をベッドに寝転がした。
「私のこれが欲しいんですか。あの外国人達と比べたら、随分お粗末なものですよ?」
ベッド脇でズボンを脱ぎながら、彼は僕に自分のいきり勃ったモノを見せてきた。
「全然お粗末なんかじゃない。これが欲しいんだ」
「外国人のソレはこんな太さでも長さでもありませんよ。もっと太くて、もっと長い……」
覆いかぶさりながら言い聞かせる。
「そんなに外国人とヤラせたかったなら、何であの時僕を助けたんだよ!」
「どうしてでしょうね。放っておかれた方がよかったですか?」
ブンブンと首を横に振る。
冗談じゃない、あんな乱暴そうなやつらに好き勝手されたくなんてない。
「知り合いの外国人にお願いしてあげましょうか。私なんかより全然気持ち良くしてくれますよ」
「……何でそんな意地悪言うんだよ。僕は君がいいって言ってるだろう……」
僕を見下ろしている彼の顔が涙で歪んで見える。
さっきまで僕のことを束縛するとか、彼だけのものにするとか言っていたのに。どうして急にこんなことを言い出すんだ。
すると歪んで表情の見えない彼の顔が近づいてきて、僕の瞼にキスをした。
「すいません、悪ふざけが過ぎました。あまりに発情した貴方が可愛くて、すぐさま犯してしまいそうだった。壊れるほどに犯して、私だけのものにしたくて堪らなかった。自分を抑えるために、あんなことを言ってしまった」
もう一度瞼にキス。そして唇に深くキス。
「後悔しませんか? 本当に手加減出来ませんよ。今日は、屋敷へ帰しませんよ」
「それでもいい。今日は執事でない君と、一緒にいたい」
彼の肩に手を回したのを合図に、彼は自分のモノをゆっくりと僕に押し込んだ。
「お望みのままに。帰りたいといっても、もう帰しませんから」
押し込んだモノをゆっくり抜き、今度は一気に挿し込む。
待ち望んだ刺激が、入ってくる悦びと引き抜かれる快感が脳天まで貫いていく。
「あああああっ!」
「そんなに締め付けたら動けませんよ。もっと気持ちよくなりたいんでしょう」
「だって、だって、気持ち良すぎてっ」
「ダメです。力を抜きなさい」
「んふぅっ」
深く挿し込んだまま、彼は僕の首筋に舌をゆっくりと這わせた。
ゾクリという感覚と若干のくすぐったさが腹部から力抜けさせる。
「あっ、それ気持ちいい。でもちょっとくすぐったい」
「首筋好きでしょう? ここは首より感じやすいですが」
耳の骨に沿って舌を這わせる。何回か往復させると今度は唇で耳朶を食んだ。
さっきとはまた違ったゾクゾクとした快感が込み上げ、海綿へ血液を集めていく。
「んんっ! やぁっ!」
「本当に耳が弱いですね。一番弱いのは乳首って知ってますよ」
顔を上げてニヤリと笑うと乳首に歯を立てた。
「あっあっ! 本当にダメっ! また出ちゃうっ!」
「何を出すんです? 声はいっぱい出していいって言いましたよね?」
「い、いじわるっ。僕だけ出すの、嫌なの」
「だから、何を出すんです?」
乳首から口を離しても弄る手は止めず、ビクビクと震えるモノがいつまで耐えられるのかを愉しんでいる。
「アレだってばっ、んんっ!」
「アレってなんですか」
「い、言わなきゃダメ? ああんっ! そんなに強くされたら感じちゃうっ」
「感じるようにしてるのですが。で、あれとは?」
「も、もうっ! せ、せい……精子だよっ! 精子出ちゃうっ!」
「良く出来ました。ご褒美をあげましょうね」
そう言うと乳首から手を離し、深く挿し込んでいたモノを一気に抜きまた一気に挿し込んだ。
「はうっ」
「一緒にイキたいのでしょう。私がどこまで我慢出来るか分かりませんが、努力します」
「努力されなくても、僕、もうイキそうっ」
「じゃあ、貴方が我慢してください。もう少し貴方の中を感じさせてください」
そんな事を言っているが彼にも余裕はなさそうに感じる。
僕の中の彼のモノはいつも以上に太く熱く、腰のピッチもかなり上がっている。
「ダメっ、気持ち良すぎる! 我慢なんて出来ないっ。あっあっ、イッちゃう! 精子出ちゃうっ」
「出して、私も、もう……。ああっ、和哉さん、イクっ」
「貴裕っ……」
うわごとのようではあるが、彼は僕の名前を呼んでくれた。
ご主人様でも『和哉様』でもなく、『和哉さん』と。
それだけでも僕の心は跳ね上がり、キュンとイッたばかりの彼のモノを締め付けつけた。
「今日は執事でないと言ったでしょう。そんなに欲張らなくても、何度でも貴方の名前を呼んで、貴方の中でイッってあげますよ、和哉さん」
「僕はそんなにイケないよ。貴裕だってそうだろう?」
「どうでしょうね。貴方の身体を使って教えてあげますよ。和哉さんはドライオーガズムって知ってますか?」
「どらいおーがずむ?」
初めて聞く単語だ。
オーガズムってことはイクってことなんだろうけど、ドライって?
「今日はそれも体験出来ますね。ああ、言い忘れてました。この首輪ただの首輪じゃないんです」
「はい?」
「GPSが埋め込まれてます。特注品で、出来上がりが昨日だったんです。前みたいに幼馴染に誘拐されてもすぐ居場所が突き止められます。あと……」
ベッドの下に手を伸ばすと彼は何かを掴みそれを僕の首に当て、自分の首に僕と同じような首輪を付けた。
「逃げたくても、私からは逃げられません」
チャリ、と長い鎖が僕の首元から彼の首元まで伸びている。
彼の首輪はベルト式で、犬の首輪と同じような金具に鎖の先が繋がれている。
「色欲に飢えた獣が二匹、鎖で繋がれました。お互いの欲が満たされるまで離れられません」
鎖を手繰り寄せ、僕の両手首に巻いていく。
「この首輪と鎖で貴方を私は束縛します。身体も心も、もう逃しませんよ和哉さん」
まだ抜かれていない彼のモノが僕の中で逞しさを取り戻し始める。
束縛することに悦びを感じているのか……?
そういう僕もこの首輪と鎖に興奮を憶えている。
どこまで犯されてしまうのかという恐怖よりも、彼の艶っぽい声と未知なるプレイへの期待と、この首輪がある限り彼と繋がれている悦びが、得も知れない快感を生んでいた。
「もっと僕を束縛して離さないで。壊れるまで僕を抱いて、貴裕」
「仰せのままに、私の和哉さん……」
確かに昨夜は彼に抱かれたくて悶々としていたけど、タナボタ……じゃなくて朝からこんな場所で!?
「待ってまって!」
「待つ理由が分からない。貴方だって抱かれたくてうずうずしていた癖に」
「確かにそうだけど……。じゃなくって、こんな朝から恥ずかしいっ!」
「それで?」
僕の言葉を無視して彼は強引に中へと引っ張っていく。
中は外ほど派手派手ではなく、アイボリーの壁に小さな絵が飾ってあるくらいだった。
入ってすぐのところにフロントとタッチパネル。
何の意味があるのか、その近くにショーケースがあって財布やらキーケースやらディスプレイされている。
初めて見るラブホテルのロビーに呆気を取られていると、彼はまた僕の手を取って歩き出した。
「え? どこに行くの?」
「部屋ですが」
「だってフロントに誰もいなかったじゃない」
「ここはそういうもんです」
普段利用するホテルとの違いにまだ頭がついて行かない僕を、彼はエレベーターに押し込んだ。
着いた先は普通のビジネスホテルと変わりない風景。
ただ違う点はカードキーをかざす所がないのと、壁に部屋番号の書かれたライトが付いていること。
鍵がついていないのにどうやって入るんだ? という疑問をよそに彼はツカツカと進み、ある部屋の前に来ると躊躇いもなくドアを開けた。
「どうぞ」
言われるままに中へ入ると、彼はガチャと後ろ手にドアを閉めた。
「!!」
振り向く前に無造作に顎を掴まれ、強引に舌をねじ込まれる。
くちゅくちゅと舌を絡まされ、唇を貪られる。
顎を滴る唾液を気にすることなく、彼は僕の口の中を蹂躙し続けた。
「ぅあ……」
「腰が抜けてる。すっかり目なんか蕩けてるし。どんだけ飢えてたんですか」
「急にこんなことされたら、驚いて腰だって抜けるよ」
「驚いて抜けた様子じゃないですけどね。これ以上のことをされても大丈夫なんですかね」
もう一度唇にキスをすると、彼は僕を抱き上げ部屋の中へと入った。
最初に目に入ったのは大きなベッドがひとつ。
そのベッドの上に彼は僕を放り投げた。
身体を起こす間もなく、彼は僕の上に覆いかぶさる。
「ラブホテルのベッドはどうですか? 悪くはないでしょう?」
「やっ……、そこ、触っちゃ、ぃやあ……」
「嫌と言っている割には随分腫らせてますが? 焦らされて、人前で手を繋がれて恥ずかしい思いさせられて、興奮してたのは知っていますよ」
ズボンの上から膨れ上がったモノを指でなぞる。
線でなぞられ訪れる快感に思わず背中がのけぞってしまう。
「いくらでも声出していいですよ。そこら辺のシティーホテルなんかより全然防音が効いてます」
「あっあっ! そんなになぞっちゃ……、出ちゃうぅ」
「何が出るんです? 声ならいくらでも」
出るといっても彼は執拗に指を動かし、我慢しきれなくなった僕は下着の中に白濁した液を排出してしまった。
「んあああっっ! はぁはぁ……、酷いよ……」
「酷くないでしょう、念願の私でイケたんだから」
「こんなの……」
「『こんなの自慰と変わらない』? 大丈夫。時間はいっぱいあるし、他の方法でもいっぱいイカしてあげますよ」
身体で僕の身体を押さえたまま僕のズボンを脱がす。
精液で濡れた下着に手をかけると、ズボンの扱いとは違い乱暴にはぎ取り、床に捨てた。
「汚れた下着は貴方にふさわしくない。どうせ履いて帰れないでしょうし」
下半身だけ脱がすと、今度は上半身を脱がすのかと思いきや、おもむろに僕から身を起こした。
自分の上半身だけ脱ぐと、彼は手荷物から紙袋を取り出した。
「あんな場所まで何しに来たんですか? 仕事用のスマホにGPSが仕込まれてたのは知ってました。まさかこんなことに使うために入れたとは思いたくもないですが」
「……」
「図星ですか。別にいいですけど」
別にいいと言っている割に、彼の顔は『もう二度とこんな真似はするな』と言っている。
怒っているというよりは心配している感じに見える。
「これはちゃんと『お留守番』が出来たご褒美にと思っていたんですが、止めましょう」
僕が『えっ』と身体を起こすとカチャと何かを首に填めた。
「貴方を束縛するために与えます。これで貴方は私のものです。二度と私の許可なく勝手な行動は取らないように」
「束縛……」
首に手を当ててみると、革のような手触りと金属の冷たさ。
「何を付けたの?」
「見てみますか? 良く似合いますよ」
そのままベッドから立ち上がらせ、洗面所に備え付けられた鏡の前まで連れていかれた。
鏡に映る僕は、開けかかったシャツに赤い革の首輪を付けていた。
首輪はちょっと特殊な形をしており、ベルト部分は穴ではなく金属の輪で留まるようになっていた。その輪の先には南京錠。
「自分では外せません。鍵は私が持っています」
鏡越しに彼は自分の左手首を見せる。
同じような赤い革の細いブレスレットに小さい鍵がぶら下がっている。
「以前行為の最中に『君だけのものになりたい』って言ったでしょう。いろんな意味で私だけのものにしてあげます」
開けかかっていたシャツをゆっくりと脱がしていく。
露わになった白い肌に赤い首輪が嫌というほど映える。
「さて、貴方は私が怒っていないと思いますか?」
「思って、ない……」
「じゃあ分かってますね」
語調が変わる。
「お仕置きの時間です。あの場で貴方を見つけた時、私がどれだけ心臓が止まる思いをしたか。それだけあの場所は危険だったんだ」
「じゃあ何で君はあんな場所にいたんだ」
「その首輪を引き取りに行っていただけです」
「あんな朝早くに?」
「夜遊びした帰りです。私だってたまには息抜きくらいします」
首輪を掴み引き寄せ、フゥっと息を吹きかける。
一回鎮まった欲情がゾクゾクと背中から昇りつめてくる。
「寝てないから手加減なんて出来ませんよ。もっとも、今日は執事ではないから、手加減も遠慮もしないけど」
「怖いことは、やだ……」
「怖くはしません。ただ、気持ちよくし過ぎてあげるだけ」
上半身だけ映し出される鏡の前で彼は僕の乳首を強く摘まんだ。
痛い筈の強さなのに、その刺激は痺れとなって快感を生む。
鏡の中の僕はきゅっと摘ままれるたびに口を薄く開き、目を細めている。
「久し振りに乳首を弄られるのはそんなにイイですか? もっと弄ってって顔してる」
「だって……」
「ずっと私に放置されてたから、抱かれたくて仕方なかったんでしょう?」
「分かってたなら少しくらい抱いてくれてたって……!」
「あの仕事の状況で抱かれたところで、さほど気持ちよくなれないかと。結果、裏目に出ましたが」
「裏目?」
「貴方を暴走させました。本当は明日帰った時にこれを渡して抱くつもりでした。それなのに……」
両手でそれぞれの乳首をぎゅっと摘まみ、僕の臀部に彼の股間を強く押し当てた。
「どこまで私に面倒をみさせたいんですか。これ以上、私なしでは生きていけない身体になりたいんですか?」
「もう……なってる。君がいないと、僕は僕でいられない。イライラするし、悶々するし、思いがけない行動にも出る」
「その思いがけない行動で、ここを他の男に犯されても、貴方は平気なのですか? 私以外の男にマーキングされ、そいつが忘れられない身体にされてもいいというのですか?」
押し当てられる股間は指へと変わる。
つぷりと指先だけが菊紋に埋まり、前後にゆっくりと動かされる。
「他の男なんて、嫌だ。君が欲しい、君のモノだけが欲しいんだ」
「本当に?」
意地悪そうに相変わらず指先だけを動かし、それ以上のことはしない。
「本当だから。だからお願い……」
鏡の中の彼の目を見て懇願する。
意地悪をしないで指でなく、その逞しいモノで僕の中を犯して欲しいと。
「発情した雌猫のようですね。そんなに欲しいんですか」
そう言って指を抜き、再び僕をベッドに寝転がした。
「私のこれが欲しいんですか。あの外国人達と比べたら、随分お粗末なものですよ?」
ベッド脇でズボンを脱ぎながら、彼は僕に自分のいきり勃ったモノを見せてきた。
「全然お粗末なんかじゃない。これが欲しいんだ」
「外国人のソレはこんな太さでも長さでもありませんよ。もっと太くて、もっと長い……」
覆いかぶさりながら言い聞かせる。
「そんなに外国人とヤラせたかったなら、何であの時僕を助けたんだよ!」
「どうしてでしょうね。放っておかれた方がよかったですか?」
ブンブンと首を横に振る。
冗談じゃない、あんな乱暴そうなやつらに好き勝手されたくなんてない。
「知り合いの外国人にお願いしてあげましょうか。私なんかより全然気持ち良くしてくれますよ」
「……何でそんな意地悪言うんだよ。僕は君がいいって言ってるだろう……」
僕を見下ろしている彼の顔が涙で歪んで見える。
さっきまで僕のことを束縛するとか、彼だけのものにするとか言っていたのに。どうして急にこんなことを言い出すんだ。
すると歪んで表情の見えない彼の顔が近づいてきて、僕の瞼にキスをした。
「すいません、悪ふざけが過ぎました。あまりに発情した貴方が可愛くて、すぐさま犯してしまいそうだった。壊れるほどに犯して、私だけのものにしたくて堪らなかった。自分を抑えるために、あんなことを言ってしまった」
もう一度瞼にキス。そして唇に深くキス。
「後悔しませんか? 本当に手加減出来ませんよ。今日は、屋敷へ帰しませんよ」
「それでもいい。今日は執事でない君と、一緒にいたい」
彼の肩に手を回したのを合図に、彼は自分のモノをゆっくりと僕に押し込んだ。
「お望みのままに。帰りたいといっても、もう帰しませんから」
押し込んだモノをゆっくり抜き、今度は一気に挿し込む。
待ち望んだ刺激が、入ってくる悦びと引き抜かれる快感が脳天まで貫いていく。
「あああああっ!」
「そんなに締め付けたら動けませんよ。もっと気持ちよくなりたいんでしょう」
「だって、だって、気持ち良すぎてっ」
「ダメです。力を抜きなさい」
「んふぅっ」
深く挿し込んだまま、彼は僕の首筋に舌をゆっくりと這わせた。
ゾクリという感覚と若干のくすぐったさが腹部から力抜けさせる。
「あっ、それ気持ちいい。でもちょっとくすぐったい」
「首筋好きでしょう? ここは首より感じやすいですが」
耳の骨に沿って舌を這わせる。何回か往復させると今度は唇で耳朶を食んだ。
さっきとはまた違ったゾクゾクとした快感が込み上げ、海綿へ血液を集めていく。
「んんっ! やぁっ!」
「本当に耳が弱いですね。一番弱いのは乳首って知ってますよ」
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「あっあっ! 本当にダメっ! また出ちゃうっ!」
「何を出すんです? 声はいっぱい出していいって言いましたよね?」
「い、いじわるっ。僕だけ出すの、嫌なの」
「だから、何を出すんです?」
乳首から口を離しても弄る手は止めず、ビクビクと震えるモノがいつまで耐えられるのかを愉しんでいる。
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「アレってなんですか」
「い、言わなきゃダメ? ああんっ! そんなに強くされたら感じちゃうっ」
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「も、もうっ! せ、せい……精子だよっ! 精子出ちゃうっ!」
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そう言うと乳首から手を離し、深く挿し込んでいたモノを一気に抜きまた一気に挿し込んだ。
「はうっ」
「一緒にイキたいのでしょう。私がどこまで我慢出来るか分かりませんが、努力します」
「努力されなくても、僕、もうイキそうっ」
「じゃあ、貴方が我慢してください。もう少し貴方の中を感じさせてください」
そんな事を言っているが彼にも余裕はなさそうに感じる。
僕の中の彼のモノはいつも以上に太く熱く、腰のピッチもかなり上がっている。
「ダメっ、気持ち良すぎる! 我慢なんて出来ないっ。あっあっ、イッちゃう! 精子出ちゃうっ」
「出して、私も、もう……。ああっ、和哉さん、イクっ」
「貴裕っ……」
うわごとのようではあるが、彼は僕の名前を呼んでくれた。
ご主人様でも『和哉様』でもなく、『和哉さん』と。
それだけでも僕の心は跳ね上がり、キュンとイッたばかりの彼のモノを締め付けつけた。
「今日は執事でないと言ったでしょう。そんなに欲張らなくても、何度でも貴方の名前を呼んで、貴方の中でイッってあげますよ、和哉さん」
「僕はそんなにイケないよ。貴裕だってそうだろう?」
「どうでしょうね。貴方の身体を使って教えてあげますよ。和哉さんはドライオーガズムって知ってますか?」
「どらいおーがずむ?」
初めて聞く単語だ。
オーガズムってことはイクってことなんだろうけど、ドライって?
「今日はそれも体験出来ますね。ああ、言い忘れてました。この首輪ただの首輪じゃないんです」
「はい?」
「GPSが埋め込まれてます。特注品で、出来上がりが昨日だったんです。前みたいに幼馴染に誘拐されてもすぐ居場所が突き止められます。あと……」
ベッドの下に手を伸ばすと彼は何かを掴みそれを僕の首に当て、自分の首に僕と同じような首輪を付けた。
「逃げたくても、私からは逃げられません」
チャリ、と長い鎖が僕の首元から彼の首元まで伸びている。
彼の首輪はベルト式で、犬の首輪と同じような金具に鎖の先が繋がれている。
「色欲に飢えた獣が二匹、鎖で繋がれました。お互いの欲が満たされるまで離れられません」
鎖を手繰り寄せ、僕の両手首に巻いていく。
「この首輪と鎖で貴方を私は束縛します。身体も心も、もう逃しませんよ和哉さん」
まだ抜かれていない彼のモノが僕の中で逞しさを取り戻し始める。
束縛することに悦びを感じているのか……?
そういう僕もこの首輪と鎖に興奮を憶えている。
どこまで犯されてしまうのかという恐怖よりも、彼の艶っぽい声と未知なるプレイへの期待と、この首輪がある限り彼と繋がれている悦びが、得も知れない快感を生んでいた。
「もっと僕を束縛して離さないで。壊れるまで僕を抱いて、貴裕」
「仰せのままに、私の和哉さん……」
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