乙女ゲームは始まらない〜闇魔法使いの私はヒロインを降ります〜

えんな

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ジークさんと取引

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それからは、ジークさんが私の監獄を訪ねてくることが増えた。

基本的にお役御免を狙う私は、とにかく狂人化の呪いを何とかすることを目指したい。

別に腹黒美人と親交を深めたい訳では無いのだ。



「何でそんなにここに来るんですか?」

「ルナも俺から早く離れたいのだろう?だったら、少しでも早く呪いを解く知恵を出さなければな」

「それはそうですが、別にジークさんがここに居なくても調べられますよ?」



最近のジークさんは、私の事をルナと名前で呼ぶようになった。

お前呼びでも構わないけどね、ぶちのめすだけだけど。



「ジークさんと一緒に居ると良い案が浮かびそうにありません。なので、ドラゴンさんになってください」



分かりやすく半眼になるジークさんに、さらに詰め寄って畳みかける。



「ドラゴンさんのお腹を撫でれば、もっと良い案が浮かんで来る筈です!」

「・・・」



ジークさんは暫し無言だったが、いつもの溜息を飲み込んでから口を開いた。



「条件がある」



お?

ドラゴンさんとの楽しい時間を過ごす為なら、その条件飲みましょう!



「俺の婚約者になれ」



は?

やっぱ飲みません。



「お断りします」

「即答か」

「私に何の得があるんですか?そもそもジークさんと早く離れたいのに、婚約したら一緒にいなきゃいけなくなるじゃないですか!」



ジークさんは私に流し目をよこしながら、意地悪そうに口角をあげた。



「ルナには得ばかりだと思うが?」

「まるで貴方には得が無いような言い方ですね?」

「そうでもない。言った通り、ルナには竜眼がある。危険を察知することが出来るのは俺にとって大きな利点だ」

「では、私が貴方の婚約者になるデメリットは?」

「命を狙われる婚約者を守る手間」

「手間だと言うなら婚約者にしなければ良いでしょう。是非、他の方でお願いします」



腹黒美人の婚約者なんて絶対ごめんだ!

こういう上から男は、ホント女をモノ扱いする。

それまではチヤホヤしておいて、いざオーケーすると途端に掌返した真逆の行動をとる。

釣った魚に餌をやらない男なんて、世の中ゴマンといるのだ。



「それほど手間でもない。ルナ、お前は強いのだろう?」

「強くても、100%命を狙われると分かっているのに、進んで婚約者役になろうとする馬鹿はいないと思います」



何を上から目線で宣うのか。

自分の危機回避に、私を合法的に近場におけるようにしたいだけなのだろう?

近場の警報器扱い。

私にメリットなんて無いじゃん!



「私の納得できる利がありません」

「俺の狂人化の呪いが解ければ開放してやろう。どの道、呪いが解けなければお前も国から追われるだけだ」



確かに、このままでは闇魔法使いとして帝国から追われ、命を狙われることになる。

ジークさんの呪いを解呪できれば、ジークさんも私と一緒に居る必要はなくなるし、私も帝国から追われることは無くなるのよね?

うーん、今だけ共同戦線張るべきか。



「闇魔法使いだと、バレなければいいだけなのでは?」

「残念ながら、既にあのポーションの出所がお前であることは知れている。だからこそ、お前をここに匿っているのだからな。凡そ、闇魔法が付与されていることも調べられているだろう」



まじかー。

遅かりし何がしさん。

お金に目が眩んでクセポを編み出した結果がこれかー。

それにしてもこの人、ああ言えばこう言う。

私の退路を断つのが楽しいのか、ジークさんはご機嫌だ。



「俺の側が一番安全だろうよ」

「むう・・・」

「お前の望みだ、たまに竜の姿になってやらん事もない」



うっ!

そう来たか。

追い詰められた私は、目先の美味しそうな餌に正常な思考回路が吹っ飛んでしまった。



「たまにではダメです!毎日です!それと、ポテ腹を撫でさせるんです!でなきゃ、その役はやりません!」

「・・・いいだろう、交渉成立だな」



むうー。

掌で転がされている気がする。



「さっきから、お前って連発してますよね!」



そう言ってジークさんに指を突き付けた瞬間、ジークさんが眩い光に包まれドラゴンさんに変わった。



「そうだったか?だが、俺ドラゴンであれば問題ないのだろう?」



あざとく、ちびドラに変身したジークさんはしてやったりの口調だった。

くっそう。

ちびドラさんじゃあ怒れない。

私はちびドラさんの首根っこを掴んで膝の上に後ろ向きに座らせると、仕返しとばかりに思いっきりポテ腹を撫でまわした。



「おい、乱暴だぞ」

「何言ってるんですか?婚約者としての触れ合いの一環です」



ちびドラさんは一瞬動きを止めた後、チラッと私を振り返った。



「ほう、お前が触れ合いを求めるのであれば、俺にも考えがある」



むっ。

何か企んでいるな?

ならば受けて立とう。

だが、先ずは私のポテ腹攻撃を存分に味わって貰おう。

本当にマシュマロのような柔らかい揉み心地と、何というか、きゅっきゅっとした肌触りが絶妙なのだ。

ひとしきり堪能させて頂いた後、ハタとある事に気が付いた。



「ところで、無事呪いが解けたら、この契約婚約は解消になるんですよね?」



後ろ向きに座ったままのちびドラさんの耳が、一瞬ピクッと動いた。



「・・・まあ、お前の働き次第だな」



むむ?

解消してくれないの?



「そこ、大事なんで明確にしておきましょう?」

「その時は、お前の好きにすれば良い」



うっし!

言質取りましたー笑。

俄然やる気になってきましたよ。

解呪までの間、ちびドラさんを愛でまくり、解呪の後は国を出て世界を堪能する旅に出る。

そんでもって、人生のパートナーを見つけてハッピー異世界ライフを楽しむのだ。



ちびドラさんの魅惑のポテ腹に目が眩んだ私は、その後、次々と起こる厄介な出来事に後悔する事を分かっていなかったのだった。
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