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大神官バラーさま(1)
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帝国の真ん中に位置するターバルナ領。
その象徴とも言うべき大神殿は、竜と光を信仰する帝国教エルーダの総本山だ。
その下に小神殿が二つ、西のナバルと東のウォドラを合わせ巡礼地としてエルーダ教徒に崇められている。
次第に東の空が明るくなってきた。
夜明けの森を馬と精霊さんと私という、どう数えれば良いのか分からない3個体?で大神殿を目指している。
風の大精霊ニクスさんのオススメで、ターバルナ大神殿でお祓いをして貰うのだ。
これで私の死亡フラグ体質が改善できれば、ちょっとの寄り道くらい安いものだ。
「ニクスさんもあの神殿で過ごしていたんですか?」
神殿までの参道を馬を引きながら歩いて行く。
私の頭の横でふわふわ漂っているニクスさんに声を掛けた。
『そぉよー。ジークが力に目覚めるまでは神殿の大気の中で泳いでいたわ』
「それ、ずっと見ていたい光景ですね!」
森の中で、陽の光を浴びながらふわふわ漂うニクスさんはとても美しいだろう。
『普通の人間に私の姿は見えないわよ』
「え?そうなんですか?皆んな可哀想ですね、こんな美人さんが近くをふわふわしているところが見れないなんて」
あれ?
じゃあ何で私は見えるのかな?
「私って普通じゃないんですか?」
『アンタ、自分が普通だとでも思っていたの?』
確かに、ヒロインだし、闇魔法使えるし?
『ジークとチューしちゃったんだから、アタシが見えて当然でしょ』
「はあ?」
ニクスさんの明け透けな物言いに、私は歩くのも忘れて固まってしまった。
『ジークとチューしたおかげで、アンタの身体に竜の力が宿ってんのよ。今のアンタ、元気バリバリでしょ?』
へっ?
竜の力?
宿るって??
『今更なに赤くなってんの?半日経ってからその反応って、アンタどんだけ鈍いのよ』
え?
私、赤いの?
え、あ?
何でニクスさん、それ知ってるの?
『まったく、そういう顔はジークの前でしなさいよ』
口を魚のようにパクパクさせている私に、ニクスさんは呆れ顔だ。
『あれでもあの子、繊細なのよ』
胸の中心がざわざわして、ニクスさんの言葉も頭に入って来ない。
また考えてしまうから。
どうしてジークさんは私にあんな事したんだろう?って。
あんな、あんな、キ・・・。
うーっ!
答えを知ろうとすると前に進めない。
ダメだ、考えるな!
「早くお祈りを済ませて、この国を出ましょう!」
俯いていた顔をガバッと上げて私は前を向いた。
『まあ、その反応なら見込みはありそうよね』
ニクスさんの呟きは小さくて、私の耳には届かなかった。
白亜の神殿に続く大階段が木々の間から見え隠れしている。
参道の終点まで来ると、その脇に受付のような小屋があった。
私がボロを着た汚らしい子供に見えたのか、簡素な貫頭衣を着た受付の人は嫌そうな顔をした。
しかし、さすがは神殿勤めの人だ、ちゃんと神殿への案内はしてくれた。
お金が無さそうと踏んでくれたのか、参拝料を要求される事もなかった。
馬を厩舎に預けて大階段を昇る。
朝かなり早いからなのか、見回しても私たち以外参拝者は居ない。
大が付くだけあって大階段はかなりの段数だ。
身体年齢は15歳の筈だが、50歳の精神年齢が影響するのか疲れて足が痛くなってきた。
ふよふよ浮いているニクスさんが羨ましい。
息を切らしやっとの思いで最上段まで昇り切ると、全て開かれ天井高く伸びる神殿の扉が見えた。
神殿内に入ると、朝だというのに中は薄暗く松明が両壁沿いに灯されていた。
以前、ジークさんに連れて行かれたナントカ神殿もこんな感じだったような?
ジークさん、どうしてるかな?
変な連中に捕まっていないだろうか?
ゼインさんにお願いしてはきたけれど、人の言う事聞くような人じゃないしな・・・。
はっ!
マズイマズイ、考えない考えない。
『アンタって考えてること、全部口に出すクセがあるのね』
ありゃ?
変なこと言ってました?
ニクスさんは半眼でニヨニヨしている。
『やっぱりチューした仲だから、ジークの事が心配でしょうがないのね』
うひっ!
もう、そのチューって言葉やめて欲しいです・・・涙。
改めて自分以外の誰かから指摘されると、どうしたら良いのか分からなくなる。
恥ずかしくてニクスさんの顔も拝めない。
私は下を向いて足早に歩いた。
薄暗い神殿内を真っ直ぐ進んでいくと、先が明るい大広間に出た。
天井は高く、クリスタルの天板から朝陽が大量に差し込み、まるで光の海原に居るかのようだ。
一瞬、あの虹色のドラゴン、始祖竜との邂逅を思い出した。
眩しくて目が慣れてくるのに時間がかかる。
壁も床も全てが白亜で出来た円形の大神殿。
広間の中央には赤い絨毯が敷かれ、神殿の最奥にある祭壇まで続いている。
絨毯によって左右に区切られた広間は、それぞれに祈祷台が等間隔に並べられていた。
神殿最奥の祭壇には、燭台と経典のような分厚い本が置かれている。
祭壇の左右に竜の石像が鎮座し、互いに向き合い天を臨んでいた。
右に白竜、左は黒竜。
この色合いは、何か意味があるのだろうか?
天から差す朝陽が2体の竜を照らし出し、静かな白い空間は時間が止まったかのようだった。
「美しい・・・」
その一言に尽きる。
思わず口から言葉が零れたその時、背後から威厳のある男性の声がした。
「竜族が祀っていた竜神像だ」
振り返ると、長い白髪に長い口髭の、老齢だが人を圧倒する力を漲らせた白いローブ姿の男性がこちらを見据えていた。
高貴な人物だと本能が察し、私は反射的に淑女の礼をとった。
老人は始め厳しい視線を向けていたが、私の行動にフッと目を緩めた。
おっ?
この感じ、どこかであったぞ・・・?
そう、この緑色の温かい瞳・・・。
私は夜会で謁見した皇帝の眼差しを思い出した。
皇帝と同じ瞳だ。
ならば、この方が皇帝の叔父である大神官さまなのか。
「其方の名は?」
「あっ、の、ルナ・ヴェルツと申します」
考え事をしていた私は、慌てて名を名乗った。
老人は顔つきこそ厳しいが、穏やかな視線で私を見ていた。
「この神殿の神官を束ねるバラーだ」
「お会い出来て光栄にございます」
もう一度膝を折り深々と礼をする。
それを横で漂いながら見ていたニクスさんは、笑いながら茶化してきた。
『へーっ、アンタでも締めるところは締められるのねー』
「ちょっ!ニクスさん、今は冗談よして下さい!」
慌ててニクスさんの方へ顔を向けてしまった。
その瞬間、バラーさまが広場に響くほどの声をあげて盛大に笑い出した。
ほらー、笑われたじゃないかー泣。
頑張って習った礼儀作法を披露したのに、どうせ子供の所作だと思われているのだろう、涙。
うん?
あれ?
この人、ニクスさんが見えてるの?
私が驚いて視線を向けた事に、ますますバラーさまは楽しそうに笑った。
「ジークの魔力を感じて来てみては、何とも愛らしい娘が居るではないか。ジークも隅に置けぬな」
?
ジークさんの魔力?
運命共同体のニクスさんから感じるのかな?
私はニクスさんと目を合わせて首を傾げてみた。
『アタシじゃないわよ、アンタよ』
え?
私?
無言で自分に指を向けた。
『そっ!だってアンタ、ジークとチューしたでしょ』
その瞬間、私は顔が爆発したと思うくらい、全身の血が集まった頭の毛穴から湯気を噴き出した。
「だからニクスさん、もうお願いだから喋らないで!」
私は涙目でニクスさんの口に両手を当てて抑えようとしたが、ニクスさんはニヤけながらするっと躱して祭壇の上まで移動してしまった。
私たちのやり取りを見てバラーさまは更に大笑いした。
そのお声に何事かと、帯剣した護衛と思しき兵士さんたちが広場に飛び込んで来た。
「これは愉快だ。久しぶりに笑ったな」
唖然とする護衛の兵士さんを手で制しながら、バラーさまは嬉しそうにまた笑った。
その象徴とも言うべき大神殿は、竜と光を信仰する帝国教エルーダの総本山だ。
その下に小神殿が二つ、西のナバルと東のウォドラを合わせ巡礼地としてエルーダ教徒に崇められている。
次第に東の空が明るくなってきた。
夜明けの森を馬と精霊さんと私という、どう数えれば良いのか分からない3個体?で大神殿を目指している。
風の大精霊ニクスさんのオススメで、ターバルナ大神殿でお祓いをして貰うのだ。
これで私の死亡フラグ体質が改善できれば、ちょっとの寄り道くらい安いものだ。
「ニクスさんもあの神殿で過ごしていたんですか?」
神殿までの参道を馬を引きながら歩いて行く。
私の頭の横でふわふわ漂っているニクスさんに声を掛けた。
『そぉよー。ジークが力に目覚めるまでは神殿の大気の中で泳いでいたわ』
「それ、ずっと見ていたい光景ですね!」
森の中で、陽の光を浴びながらふわふわ漂うニクスさんはとても美しいだろう。
『普通の人間に私の姿は見えないわよ』
「え?そうなんですか?皆んな可哀想ですね、こんな美人さんが近くをふわふわしているところが見れないなんて」
あれ?
じゃあ何で私は見えるのかな?
「私って普通じゃないんですか?」
『アンタ、自分が普通だとでも思っていたの?』
確かに、ヒロインだし、闇魔法使えるし?
『ジークとチューしちゃったんだから、アタシが見えて当然でしょ』
「はあ?」
ニクスさんの明け透けな物言いに、私は歩くのも忘れて固まってしまった。
『ジークとチューしたおかげで、アンタの身体に竜の力が宿ってんのよ。今のアンタ、元気バリバリでしょ?』
へっ?
竜の力?
宿るって??
『今更なに赤くなってんの?半日経ってからその反応って、アンタどんだけ鈍いのよ』
え?
私、赤いの?
え、あ?
何でニクスさん、それ知ってるの?
『まったく、そういう顔はジークの前でしなさいよ』
口を魚のようにパクパクさせている私に、ニクスさんは呆れ顔だ。
『あれでもあの子、繊細なのよ』
胸の中心がざわざわして、ニクスさんの言葉も頭に入って来ない。
また考えてしまうから。
どうしてジークさんは私にあんな事したんだろう?って。
あんな、あんな、キ・・・。
うーっ!
答えを知ろうとすると前に進めない。
ダメだ、考えるな!
「早くお祈りを済ませて、この国を出ましょう!」
俯いていた顔をガバッと上げて私は前を向いた。
『まあ、その反応なら見込みはありそうよね』
ニクスさんの呟きは小さくて、私の耳には届かなかった。
白亜の神殿に続く大階段が木々の間から見え隠れしている。
参道の終点まで来ると、その脇に受付のような小屋があった。
私がボロを着た汚らしい子供に見えたのか、簡素な貫頭衣を着た受付の人は嫌そうな顔をした。
しかし、さすがは神殿勤めの人だ、ちゃんと神殿への案内はしてくれた。
お金が無さそうと踏んでくれたのか、参拝料を要求される事もなかった。
馬を厩舎に預けて大階段を昇る。
朝かなり早いからなのか、見回しても私たち以外参拝者は居ない。
大が付くだけあって大階段はかなりの段数だ。
身体年齢は15歳の筈だが、50歳の精神年齢が影響するのか疲れて足が痛くなってきた。
ふよふよ浮いているニクスさんが羨ましい。
息を切らしやっとの思いで最上段まで昇り切ると、全て開かれ天井高く伸びる神殿の扉が見えた。
神殿内に入ると、朝だというのに中は薄暗く松明が両壁沿いに灯されていた。
以前、ジークさんに連れて行かれたナントカ神殿もこんな感じだったような?
ジークさん、どうしてるかな?
変な連中に捕まっていないだろうか?
ゼインさんにお願いしてはきたけれど、人の言う事聞くような人じゃないしな・・・。
はっ!
マズイマズイ、考えない考えない。
『アンタって考えてること、全部口に出すクセがあるのね』
ありゃ?
変なこと言ってました?
ニクスさんは半眼でニヨニヨしている。
『やっぱりチューした仲だから、ジークの事が心配でしょうがないのね』
うひっ!
もう、そのチューって言葉やめて欲しいです・・・涙。
改めて自分以外の誰かから指摘されると、どうしたら良いのか分からなくなる。
恥ずかしくてニクスさんの顔も拝めない。
私は下を向いて足早に歩いた。
薄暗い神殿内を真っ直ぐ進んでいくと、先が明るい大広間に出た。
天井は高く、クリスタルの天板から朝陽が大量に差し込み、まるで光の海原に居るかのようだ。
一瞬、あの虹色のドラゴン、始祖竜との邂逅を思い出した。
眩しくて目が慣れてくるのに時間がかかる。
壁も床も全てが白亜で出来た円形の大神殿。
広間の中央には赤い絨毯が敷かれ、神殿の最奥にある祭壇まで続いている。
絨毯によって左右に区切られた広間は、それぞれに祈祷台が等間隔に並べられていた。
神殿最奥の祭壇には、燭台と経典のような分厚い本が置かれている。
祭壇の左右に竜の石像が鎮座し、互いに向き合い天を臨んでいた。
右に白竜、左は黒竜。
この色合いは、何か意味があるのだろうか?
天から差す朝陽が2体の竜を照らし出し、静かな白い空間は時間が止まったかのようだった。
「美しい・・・」
その一言に尽きる。
思わず口から言葉が零れたその時、背後から威厳のある男性の声がした。
「竜族が祀っていた竜神像だ」
振り返ると、長い白髪に長い口髭の、老齢だが人を圧倒する力を漲らせた白いローブ姿の男性がこちらを見据えていた。
高貴な人物だと本能が察し、私は反射的に淑女の礼をとった。
老人は始め厳しい視線を向けていたが、私の行動にフッと目を緩めた。
おっ?
この感じ、どこかであったぞ・・・?
そう、この緑色の温かい瞳・・・。
私は夜会で謁見した皇帝の眼差しを思い出した。
皇帝と同じ瞳だ。
ならば、この方が皇帝の叔父である大神官さまなのか。
「其方の名は?」
「あっ、の、ルナ・ヴェルツと申します」
考え事をしていた私は、慌てて名を名乗った。
老人は顔つきこそ厳しいが、穏やかな視線で私を見ていた。
「この神殿の神官を束ねるバラーだ」
「お会い出来て光栄にございます」
もう一度膝を折り深々と礼をする。
それを横で漂いながら見ていたニクスさんは、笑いながら茶化してきた。
『へーっ、アンタでも締めるところは締められるのねー』
「ちょっ!ニクスさん、今は冗談よして下さい!」
慌ててニクスさんの方へ顔を向けてしまった。
その瞬間、バラーさまが広場に響くほどの声をあげて盛大に笑い出した。
ほらー、笑われたじゃないかー泣。
頑張って習った礼儀作法を披露したのに、どうせ子供の所作だと思われているのだろう、涙。
うん?
あれ?
この人、ニクスさんが見えてるの?
私が驚いて視線を向けた事に、ますますバラーさまは楽しそうに笑った。
「ジークの魔力を感じて来てみては、何とも愛らしい娘が居るではないか。ジークも隅に置けぬな」
?
ジークさんの魔力?
運命共同体のニクスさんから感じるのかな?
私はニクスさんと目を合わせて首を傾げてみた。
『アタシじゃないわよ、アンタよ』
え?
私?
無言で自分に指を向けた。
『そっ!だってアンタ、ジークとチューしたでしょ』
その瞬間、私は顔が爆発したと思うくらい、全身の血が集まった頭の毛穴から湯気を噴き出した。
「だからニクスさん、もうお願いだから喋らないで!」
私は涙目でニクスさんの口に両手を当てて抑えようとしたが、ニクスさんはニヤけながらするっと躱して祭壇の上まで移動してしまった。
私たちのやり取りを見てバラーさまは更に大笑いした。
そのお声に何事かと、帯剣した護衛と思しき兵士さんたちが広場に飛び込んで来た。
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