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序章 始まりの町
第7話 災禍の気配
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爽やかな朝日に照らされる町の中、小鳥はさえずり、花は輝き、アルトは必死に逃げ回っていた。
昨日ギルドから報奨金をもらい、そのまま宿屋に行って休んだのだが、朝起きると泊めてもらっている宿屋のカウンターに現在アルトを追いかけている女の子がいた。その時は特に何も思わなかったのだが、その少女がアルトを見つけたとたん、その目が比喩などではなく赤く光ったのだ。
アルトは寝起きであったのも相まって、異常に恐怖心を煽られて思わず宿から逃げ出したのだ。そして現在、街中で彼女に追い掛け回されている情けない男の構図が出来上がってしまったのだ。
小一時間アルトは逃げ回り続けてやっと冷静になったのか、特に逃げ回る必要性がなかったことに思い至り、走るのをやめた。背後を振り返ってみると、ついさっきまで後ろにいた少女はもう姿も見えなくなってしまっていた。仕方がないので、少し進んだところにある広場のベンチで魔道具を磨きながら待つことにする。
しばらくすると、息一つ切らしていないものの、汗だくになっている少女がアルトのベンチの前までやってきた。
「なぜあんなに逃げたりしたのだ?」
「いや、寝起きでさっきの赤い目を見たら誰だって怖いって思うでしょ!」
「それは失礼した。」
申し訳なさそうに彼女は謝罪した。もちろんアルトもそこまで攻めるつもりもないので軽く流した。
「それで、あそこまで血相変えて追いかけてくるほどの用事はなんだったの?」
「まずは先日の礼をさせて欲しい。動けない人々を庇うことで手一杯だったところを助けてもらった事、本当に感謝している。」
どうやら、彼女はアイアンゴーレムとたった1人で戦っていた少女だったようだ。
「それは気にしなくていいよ。俺もゴーレムにちょっとした用事があったからね。」
「用事…?…まぁいい。貴殿に一つお願いがある。」
彼女はアルトの前に跪いて背中に背負っている体験を置く。
「私はヴァルハラの一族の末裔、マリア・ヴァルハラ。私を貴殿に仕えさせていただきたい。」
ヴァルハラの一族。世界中で知らない人はいないほど有名な一族だった。神託の騎士の末裔とも呼ばれ、こと主を護るためであれば世界を滅ぼすことができるほどの力を解放することもできる。
現代では、自分たちの里から出てくることはないと言われており、存在すら怪しまれていた。
「本当にヴァルハラの一族なの?」
「これを見せれば疑いは晴れるでしょう?」
彼女は自分の右手の甲に刻まれたヴァルハラの家紋をアルトに見せる。その家紋は主人と契約する時に現れ、その上に主人の血を一滴落とすことで契約が成立する。
「凄い、本当にヴァルハラの一族だ!でも、なんでこんなところに?」
「これは信頼できる人以外には話さないで欲しい。我々の里は、正体の分からない怪物の大群に襲われ壊滅してしまったのだ。」
「え?!」
にわかには信じがたい話だった。人類最強の一族と謳われるヴァルハラの一族の里が壊滅してしまうなど、それこそ世界の危機であると言っても過言では無い。
「長は私を怪物の凶刃に襲われる直前に転移させてくれたのだ。そして先日の洞窟に一体の化物と共に転移してきたのだ。私よりも一足早く怪物が転移してしまい、そこにいた3人が襲われてしまった。契約をしていない状態の私では手に余る相手であったため、苦戦していたところに貴殿らが来てくださった。」
そこからはアルトも知っていることを話された。アルトは彼女の話からかなり重要なことをいくつも知ってしまった。
人類最強の一族の壊滅、恐らくではあるが魔導人形の大量出現、下級ダンジョンに突如現れたゴーレムの謎。
その全てが連続しているということに、頭を抱えたくなってしまうアルト。
「とりあえず、俺の仲間に話そうと思う。みんな経験豊富だと思うからどうすればいいか一緒に考えてくれるはずたしね。」
------
2人はドラゴンナイツの面々が宿泊していると言っていた宿にやってきた。アルトが思っているよりも3倍くらいは豪華な作りになっていたが、何というか頭が痛くなるようなギラギラさは無く、質素で、見る人が見れば良いものだとわかる調度品が程よく置かれていた。
カウンターの横にあるカフェテリアを覗いてみると、こちらも落ち着いた居心地の良い雰囲気だった。
いくつかあるテーブルのうち、窓のすぐそばにある一つに、アルトが知っている女性、アイラがコーヒーを飲みながら読書をしていた。
彼女はアルトに気が付いたのか、静かに手招きする。周囲を見渡して、カフェのマスター以外誰もいないことを静かに確認しながらその席に向かう。
「アイラさん、おはようございます。」
「おはよう、アルト君。まだ他のみんなは寝てるみたい。もうすぐお昼なのにね。」
「そうですね。昨日ギッツさんとメリッカさんに引っ張られてライムさんもどこかでお酒飲んでたらしいからしょうがないかもしれないですね。」
「メリーはお酒癖があんまり良く無いからあまり飲ませたくは無いのだけれど、昨日はやっぱり特別だったから許しちゃったのよね。」
アイラはそう言って軽く微笑む。
「それで、昨日の女の子を連れてどうしたの?」
昨日ギルドから報奨金をもらい、そのまま宿屋に行って休んだのだが、朝起きると泊めてもらっている宿屋のカウンターに現在アルトを追いかけている女の子がいた。その時は特に何も思わなかったのだが、その少女がアルトを見つけたとたん、その目が比喩などではなく赤く光ったのだ。
アルトは寝起きであったのも相まって、異常に恐怖心を煽られて思わず宿から逃げ出したのだ。そして現在、街中で彼女に追い掛け回されている情けない男の構図が出来上がってしまったのだ。
小一時間アルトは逃げ回り続けてやっと冷静になったのか、特に逃げ回る必要性がなかったことに思い至り、走るのをやめた。背後を振り返ってみると、ついさっきまで後ろにいた少女はもう姿も見えなくなってしまっていた。仕方がないので、少し進んだところにある広場のベンチで魔道具を磨きながら待つことにする。
しばらくすると、息一つ切らしていないものの、汗だくになっている少女がアルトのベンチの前までやってきた。
「なぜあんなに逃げたりしたのだ?」
「いや、寝起きでさっきの赤い目を見たら誰だって怖いって思うでしょ!」
「それは失礼した。」
申し訳なさそうに彼女は謝罪した。もちろんアルトもそこまで攻めるつもりもないので軽く流した。
「それで、あそこまで血相変えて追いかけてくるほどの用事はなんだったの?」
「まずは先日の礼をさせて欲しい。動けない人々を庇うことで手一杯だったところを助けてもらった事、本当に感謝している。」
どうやら、彼女はアイアンゴーレムとたった1人で戦っていた少女だったようだ。
「それは気にしなくていいよ。俺もゴーレムにちょっとした用事があったからね。」
「用事…?…まぁいい。貴殿に一つお願いがある。」
彼女はアルトの前に跪いて背中に背負っている体験を置く。
「私はヴァルハラの一族の末裔、マリア・ヴァルハラ。私を貴殿に仕えさせていただきたい。」
ヴァルハラの一族。世界中で知らない人はいないほど有名な一族だった。神託の騎士の末裔とも呼ばれ、こと主を護るためであれば世界を滅ぼすことができるほどの力を解放することもできる。
現代では、自分たちの里から出てくることはないと言われており、存在すら怪しまれていた。
「本当にヴァルハラの一族なの?」
「これを見せれば疑いは晴れるでしょう?」
彼女は自分の右手の甲に刻まれたヴァルハラの家紋をアルトに見せる。その家紋は主人と契約する時に現れ、その上に主人の血を一滴落とすことで契約が成立する。
「凄い、本当にヴァルハラの一族だ!でも、なんでこんなところに?」
「これは信頼できる人以外には話さないで欲しい。我々の里は、正体の分からない怪物の大群に襲われ壊滅してしまったのだ。」
「え?!」
にわかには信じがたい話だった。人類最強の一族と謳われるヴァルハラの一族の里が壊滅してしまうなど、それこそ世界の危機であると言っても過言では無い。
「長は私を怪物の凶刃に襲われる直前に転移させてくれたのだ。そして先日の洞窟に一体の化物と共に転移してきたのだ。私よりも一足早く怪物が転移してしまい、そこにいた3人が襲われてしまった。契約をしていない状態の私では手に余る相手であったため、苦戦していたところに貴殿らが来てくださった。」
そこからはアルトも知っていることを話された。アルトは彼女の話からかなり重要なことをいくつも知ってしまった。
人類最強の一族の壊滅、恐らくではあるが魔導人形の大量出現、下級ダンジョンに突如現れたゴーレムの謎。
その全てが連続しているということに、頭を抱えたくなってしまうアルト。
「とりあえず、俺の仲間に話そうと思う。みんな経験豊富だと思うからどうすればいいか一緒に考えてくれるはずたしね。」
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2人はドラゴンナイツの面々が宿泊していると言っていた宿にやってきた。アルトが思っているよりも3倍くらいは豪華な作りになっていたが、何というか頭が痛くなるようなギラギラさは無く、質素で、見る人が見れば良いものだとわかる調度品が程よく置かれていた。
カウンターの横にあるカフェテリアを覗いてみると、こちらも落ち着いた居心地の良い雰囲気だった。
いくつかあるテーブルのうち、窓のすぐそばにある一つに、アルトが知っている女性、アイラがコーヒーを飲みながら読書をしていた。
彼女はアルトに気が付いたのか、静かに手招きする。周囲を見渡して、カフェのマスター以外誰もいないことを静かに確認しながらその席に向かう。
「アイラさん、おはようございます。」
「おはよう、アルト君。まだ他のみんなは寝てるみたい。もうすぐお昼なのにね。」
「そうですね。昨日ギッツさんとメリッカさんに引っ張られてライムさんもどこかでお酒飲んでたらしいからしょうがないかもしれないですね。」
「メリーはお酒癖があんまり良く無いからあまり飲ませたくは無いのだけれど、昨日はやっぱり特別だったから許しちゃったのよね。」
アイラはそう言って軽く微笑む。
「それで、昨日の女の子を連れてどうしたの?」
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