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第一章 龍殺しの騎士
第21話 冒険者バザー・下
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「お久しぶりです!アルト先生!」
この間までは毎日のように聞いていた声が、聞こえるはずもないこの場所できこえてくる。その声の主は俺のバザーにやってきていた。
「久しぶりだね、サーシャ。どうしてこの町に?」
「今日は先生のお手伝いをさせてください!」
サーシャはバックから地味なエプロンを取り出して身につける。俺も特に問題無いどころか助かるのでお願いした。
置いてあるものの説明などをする時間はなかったので今日のところは接客と客寄せをしてもらうことにした。
サーシャは見た目はとても良いのでお客さん受けも非常に良く、目に見えて客足も増えた。想定していたよりも遥かに客足が多くなってしまい、サーシャが来てからは休憩を取ることもほとんどできなくなった。
中には冒険者ではなく、商人になりたての人なども来ており、そういった相手は今後も取引でお世話になることもあるだろうからより神経をすり減らすことになった。
それでも自分の店にたくさんの人が来てくれることはとても嬉しいことなのでそこまで苦にはならなかった。
用意していた分の商品を全て売り切ってしまったので、バザーを閉める準備を始める。俺が何も言わなくてもサーシャは片付けを手伝ってくれた。
サーシャはその中で何度か手を滑らせてしまうことはあったが、基本的に丁寧な仕事をしてくれた。
片付けも終わったので、バザーの受付の人に提出する書類を出してバザーを後にした。いろいろも事情も聞きたかったのでサーシャを連れてドラゴンナイツの拠点に帰ることにした。
みんなにサーシャを紹介するためにも、事の経緯を聞かなければ説明しようがないため、帰りの道中で歩きながら話を聞くことにした。
「ねぇサーシャ。なんでアクマリンに来たの?」
「それはもちろん先生のもとで修業をさせてほしかったからですよ!あっちで先生がクビにされたって聞いてすぐに荷物をまとめて店を出てきたんです。他の職人さんたちもみんな同じように先生がいなくなったと知ってすぐに店をやめていきました。」
「えぇ!?」
俺はあまりにも予想していない事態が起こっていたことを知って驚愕してしまう。
「じゃあ、あの店の職人は誰一人もいなくなったの?」
「店長の息子さんと店長の二人だけになりました。これで以前までの異常なほどの出荷量も維持できなくなったのですぐに潰れるでしょう。自業自得ですよ!」
サーシャは俺が思っているよりもはるかにあの店に対する怒りが大きかったらしく、非常に楽しそうに笑っていた。
「先生のおかげで異常な出荷量を維持できていたのにそれを全く知らず、先生が下民だからという理由だけでひどい扱いをしていた報いですね。で、ほかの職人さんたちは前々から話をもらっていた魔道具店にお世話になるそうで、私にもその話が来たんですが、先生のもとで働かせてほしかったのですべてお断りしてきました。」
「ちなみに、なんで俺のところで働きたいと思ったの?しばらくはお給料出せないかもしれないのに?」
彼女はキョトンとした顔をして、『なんでそんなことを聞くの?』というような雰囲気を出した。
「それはもちろん素晴らしい魔道具師のもとで働くことは自分の価値ある経験になるからです。その人の技術を盗めればそれはそのまま価値になりますし、それがかなわなくてもその人の魔道具に対する向き合い方は今後の自分の職人としての生き方の参考になりますから。お給料はなくても全く問題ないです。うちは私が頼めば仕送りはいくらでもしてくれるような親なので。」
俺は心の中でとても驚いていた。彼女は前の職場では何かにつけて俺を頼ってくる正直情けない後輩だと思っていたのだが、その行動にはここまで素晴らしい考えがあったとは思ってもいなかった。
「でも、正直俺は人にものを教えるのはそこまで上手じゃないし、俺も誰かに教わったことはないからあまり期待しないでね。」
「全く構いません!近くでみて覚えていくので大丈夫です!」
俺は初めて弟子(?)を手に入れて少しばかり気分がよくなった。
~~~~~
「父さん!さすがにこんな量俺一人じゃさばききれないよ!」
「黙って仕事しろ!俺もやってるだろ!」
ザックレー魔道具店の広い厨房で親子の魔道具師が怒鳴り合いながら作業をしていた。彼らが作業している机の上には大量の書類が山積みにされていた。それらはすべて納品の催促状で、中には大物の商会からのものもあった。
二人はかれこれ三日間この調子で作業を続けていたのだが、職人たちがみんないたころに比べて圧倒的に進まず、彼らがいたころに一日で作業できた量を彼らは三日間かけてやっと終わらせていた。
それではもちろんの納期に間に合うわけもなく、彼の店からはどんどん客足がなくなっていってしまった。それでも、真面目に仕事をし続けていればいつかまた以前のようにたくさんのお客さんが足を運ぶ店になれたかもしれないのだが、ザックレーという男は何が何でも楽をしたがる性格で、ついに法律に抵触してしまう行為に至ってしまう。
それは、ほかの店で作られた製品を買い、それをあたかも自分たちが作ったかのように印だけ変えて売ったのだ。その印を変える作業を今彼らは黙々と行っていた。作業は他の店の印を消して自分たちの店の刻印を押しなおすだけなので非常に早く作業が進んでいく。
そして納品予定分の商品を準備し終え、それらを出荷できたため、彼らは非常に安心していた。家にも久しぶりに帰ることができ、一時の休息を味わう。
彼らはこのとき、自分たちの悪事がすぐに王都の取引監督所に見つかるとは思ってもいなかった。
この間までは毎日のように聞いていた声が、聞こえるはずもないこの場所できこえてくる。その声の主は俺のバザーにやってきていた。
「久しぶりだね、サーシャ。どうしてこの町に?」
「今日は先生のお手伝いをさせてください!」
サーシャはバックから地味なエプロンを取り出して身につける。俺も特に問題無いどころか助かるのでお願いした。
置いてあるものの説明などをする時間はなかったので今日のところは接客と客寄せをしてもらうことにした。
サーシャは見た目はとても良いのでお客さん受けも非常に良く、目に見えて客足も増えた。想定していたよりも遥かに客足が多くなってしまい、サーシャが来てからは休憩を取ることもほとんどできなくなった。
中には冒険者ではなく、商人になりたての人なども来ており、そういった相手は今後も取引でお世話になることもあるだろうからより神経をすり減らすことになった。
それでも自分の店にたくさんの人が来てくれることはとても嬉しいことなのでそこまで苦にはならなかった。
用意していた分の商品を全て売り切ってしまったので、バザーを閉める準備を始める。俺が何も言わなくてもサーシャは片付けを手伝ってくれた。
サーシャはその中で何度か手を滑らせてしまうことはあったが、基本的に丁寧な仕事をしてくれた。
片付けも終わったので、バザーの受付の人に提出する書類を出してバザーを後にした。いろいろも事情も聞きたかったのでサーシャを連れてドラゴンナイツの拠点に帰ることにした。
みんなにサーシャを紹介するためにも、事の経緯を聞かなければ説明しようがないため、帰りの道中で歩きながら話を聞くことにした。
「ねぇサーシャ。なんでアクマリンに来たの?」
「それはもちろん先生のもとで修業をさせてほしかったからですよ!あっちで先生がクビにされたって聞いてすぐに荷物をまとめて店を出てきたんです。他の職人さんたちもみんな同じように先生がいなくなったと知ってすぐに店をやめていきました。」
「えぇ!?」
俺はあまりにも予想していない事態が起こっていたことを知って驚愕してしまう。
「じゃあ、あの店の職人は誰一人もいなくなったの?」
「店長の息子さんと店長の二人だけになりました。これで以前までの異常なほどの出荷量も維持できなくなったのですぐに潰れるでしょう。自業自得ですよ!」
サーシャは俺が思っているよりもはるかにあの店に対する怒りが大きかったらしく、非常に楽しそうに笑っていた。
「先生のおかげで異常な出荷量を維持できていたのにそれを全く知らず、先生が下民だからという理由だけでひどい扱いをしていた報いですね。で、ほかの職人さんたちは前々から話をもらっていた魔道具店にお世話になるそうで、私にもその話が来たんですが、先生のもとで働かせてほしかったのですべてお断りしてきました。」
「ちなみに、なんで俺のところで働きたいと思ったの?しばらくはお給料出せないかもしれないのに?」
彼女はキョトンとした顔をして、『なんでそんなことを聞くの?』というような雰囲気を出した。
「それはもちろん素晴らしい魔道具師のもとで働くことは自分の価値ある経験になるからです。その人の技術を盗めればそれはそのまま価値になりますし、それがかなわなくてもその人の魔道具に対する向き合い方は今後の自分の職人としての生き方の参考になりますから。お給料はなくても全く問題ないです。うちは私が頼めば仕送りはいくらでもしてくれるような親なので。」
俺は心の中でとても驚いていた。彼女は前の職場では何かにつけて俺を頼ってくる正直情けない後輩だと思っていたのだが、その行動にはここまで素晴らしい考えがあったとは思ってもいなかった。
「でも、正直俺は人にものを教えるのはそこまで上手じゃないし、俺も誰かに教わったことはないからあまり期待しないでね。」
「全く構いません!近くでみて覚えていくので大丈夫です!」
俺は初めて弟子(?)を手に入れて少しばかり気分がよくなった。
~~~~~
「父さん!さすがにこんな量俺一人じゃさばききれないよ!」
「黙って仕事しろ!俺もやってるだろ!」
ザックレー魔道具店の広い厨房で親子の魔道具師が怒鳴り合いながら作業をしていた。彼らが作業している机の上には大量の書類が山積みにされていた。それらはすべて納品の催促状で、中には大物の商会からのものもあった。
二人はかれこれ三日間この調子で作業を続けていたのだが、職人たちがみんないたころに比べて圧倒的に進まず、彼らがいたころに一日で作業できた量を彼らは三日間かけてやっと終わらせていた。
それではもちろんの納期に間に合うわけもなく、彼の店からはどんどん客足がなくなっていってしまった。それでも、真面目に仕事をし続けていればいつかまた以前のようにたくさんのお客さんが足を運ぶ店になれたかもしれないのだが、ザックレーという男は何が何でも楽をしたがる性格で、ついに法律に抵触してしまう行為に至ってしまう。
それは、ほかの店で作られた製品を買い、それをあたかも自分たちが作ったかのように印だけ変えて売ったのだ。その印を変える作業を今彼らは黙々と行っていた。作業は他の店の印を消して自分たちの店の刻印を押しなおすだけなので非常に早く作業が進んでいく。
そして納品予定分の商品を準備し終え、それらを出荷できたため、彼らは非常に安心していた。家にも久しぶりに帰ることができ、一時の休息を味わう。
彼らはこのとき、自分たちの悪事がすぐに王都の取引監督所に見つかるとは思ってもいなかった。
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