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第二章 転生
第48話 傷跡
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俺も戦線に加わり、魔物を屠っていく。俺の得物は短槍なので、ほかの人とまとまって戦うよりは単身突っ込んで振り回したほうが威力を発揮できる。
ということで、少し無理をして戦線の少し前で戦う。戦線とは比べ物にならないほど四方八方から魔物の毒針や爪の攻撃、紫色の炎が飛んでくるのだが、そのすべてを《星賢者》が位置を教えてくれたり時には魔法を使って相殺してくれたりしているおかげで致命傷に至る傷は負っていない。
しかし、いくら狩っても終わりは全く見えずただただこちらの疲労がたまっていく一方だった。
泥沼の戦闘は丸一日続き、冒険者たちはただただ消耗していく。消耗しているのは体力や魔力だけでなく、彼らの装備も同様で、特に駆け出しの冒険者たちはすでに獲物を町のギルドから急遽支給されたものに変えている。
俺の朧霊刀は幸いいくら使っても刃が欠けることはなく、安定して戦闘を続けられるのだが、それを振るう腕がもう鉛で固められたかのように重かった。
動きからキレがなくなり、隙も多くなっていく。生まれた隙はすべて《星賢者》が埋めてくれるのだが、それでも木津は増えていった。
周りのほかの冒険者たちはうまいこと入れ替わって休憩を入れていたのだが、現状だと俺まで後退してしまったら崩れるかもしれないほどのぎりぎりな状況だったのだ。
動かない体の筋肉に治癒魔法をかけて騙し騙しやっているが、それでも補いきれず今は限界を超えて根性で槍を振るっている。
一方魔物たちは一日たった今でも数が減っているようには見えない。しかし、心なしか一匹当たりの質が落ちているようで、始めのように派手に吹き飛ばされるような人もいない。
俺が気づいた少し後にこの戦線のリーダー役を務めていた冒険者が同じことに気づき、大声で冒険者を鼓舞した。
「おい!魔物がどんどん弱っているぞ!このまま耐えて、湧いて出てくるモブどもを蹴散らすぞ!」
「「「「「おおぉぉぉ!!!」」」」」
疲労困憊の表情だった冒険者たちに希望の色がさした。気のせいかもしれないが、彼らの振るう武器にキレが戻ってきたように見える。
このまま耐えれば勝てる、誰もがそう思った。
しかし、突如大量の魔物たちが紫の霧へと変わり、上空に向かって昇っていく。その霧は一カ所に凝縮されるように集まっていき、一つの転移門を作り出した。
その転移門は禍々しい輝きを溢れさせる。そう、俺が死んだときと同じ赤い輝きが。
俺は素早く懐から結界魔道具を取り出し、《星賢者》に命じる。
「魔法陣を複製して町を包め《星賢者》!」
〝命令を受諾、速やかに実行に移します〟
《星賢者》は俺が命令して数秒と時間をかけずに魔道具の魔法陣を解析、町を包むほど巨大な魔法陣を構成して命令を完遂した。
町を覆うほどの魔法陣をすべて俺の魔力で構成したせいで魔力切れを起こし、俺はその場に膝をついてしまった。体に力は入らず、もう戦えないだろう。
結界魔法陣が起動した直後、赤い転移門から大量の結晶が降り注ぐ。鋭い形状の結晶は結界の外に転がっている魔物の死体に刺さり、刺さった魔物の死体を恐ろしいほどあっという間に毒で犯していった。
結界に当たった紫色の結晶はそのまま砕けて消えていく。そして数分間結晶の雨は降り注いだが、《星賢者》製の魔法陣は完璧な効果を発揮し、一本も結晶の矢の侵入を許さなかった。
俺はそのことを確認し、やっと安心して肩の力を抜いた。しばらく降った結晶の矢は止み、結界の魔法陣も効力を失い消えていった。
赤い転移門も少しづつ小さくなっていき、一日かかった戦闘も終わった。
油断していた。
転移門が消えていくのをちらりと見て俺は安心してしまい、そのまま朧霊刀を杖にして座り込んだ。そのせいで、閉じつつある転移門から飛んできた一本の紫色の結晶と少し遅れて飛んでくる紫色の結晶でできた刃に気が付かなかった。
俺は反応できずにその結晶の矢に貫かれるのを待った。
その間に割って入いるように、桃色の髪の女性が両手を広げて立ちふさがった。
イリスはそのまま俺を貫こうとしていた結晶の矢を鳩尾に受け、倒れる。俺は慌てて動かない体を必死に動かし、彼女の体が刃に切り裂かれないよう押しのけた。
何とか彼女の体が切り裂かれるのを防いだのだが、俺の腕はその時点でがちがちに固まってしまい、引き戻すことも間に合わあず、左腕はそのまま宙に舞った。
「ぐぅぅ!」
俺は左腕を失った激痛に耐えながら《星賢者》に命じる。
「《星賢者》!イリスの治療をしろ!お前の処理能力をすべて彼女の治療に注げ!」
〝命令を受諾、速やかに実行に移します〟
《星賢者》は俺でも見たことが無いような立体的な魔法陣を構成し、イリスの治療を始めた。俺の雀の涙ほどしか回復していない魔力をすべて使って彼女の治療をしている。
俺はもう使える魔力がないため、腰に巻いた剣帯を左腕に強く巻き付けて出血を何とか止めた。その後、すぐにこちらに寄ってきた治癒魔術師によって止血をしてもらいながら、魔力の供給もしてもらう。
彼らも理解しているのだ。
彼らが扱う治癒魔術よりも俺の使う治癒魔術、正確に言えば《星賢者》の使う治癒魔術のほうがより高度なものであるということを。
俺は出血が止まり違和感がある体を起こしてイリスのそばに寄った。彼女を襲った結晶の矢はそのまま彼女の体を貫通していったのか、体の中には結晶は残っていなかった。
しかし体に空いた穴はふさがりつつあるのだが、彼女の傷跡には禍々しい紋様、呪いの印が刻まれていた。
まさかと思って俺の左腕を見ると、そちらにも呪いの印が刻まれていた。俺の呪いの印は治癒を妨げるものだった。《星賢者》の解析によると、イリスのものも同様のものらしい。
ただ治癒を妨げるものであるらしいのだが、彼女の場合は肺の片方を潰されているせいで、起き上がって運動することができないようだ。
《星賢者》の創意工夫した治癒魔法のおかげでそのほか最近による感染症はなかったが、普通よりも免疫が落ちているため、外には出られないようになってしまった。
俺はそのまま彼女を連れて屋敷へと戻った。町の治療院はこれから負傷した住民や冒険者の治療で忙しく、イリスの看病を満足にできないそうだった。
そのため、メイドがたくさんいて、彼女の看病を十分にできる俺の屋敷で預かることにしたのだ。
それに、俺が油断してしまったがために負わせてしまった彼女の傷だ。俺が責任を持って彼女を治療してやらなければいけないと思った。
町の魔物がすべて討伐したという噂を聞いたのか、家からミヤさんと四人のメイド、母に妹が迎えに来た。
みんな俺の左腕を見て、目を潤わせ、両手で口を覆った。しかし、俺から事情を聴いてからのメイドたちの動きは非常にスムーズで、イリスを安静に屋敷まで運び、彼女の看病のために必要なものをミヤさんが一人で買い集めに言った。
俺は母と妹と一緒に屋敷へ戻ったのだが、左腕がないせいでバランスがとりにくく、両側に建つ母と妹に倒れ掛かってしまうことも多々あった。
母は終始泣きそうな顔のままでいたのが非常に印象的で、本当に俺の心配をしてくれたのだと痛感した。
―第二章 転生―
完
ということで、少し無理をして戦線の少し前で戦う。戦線とは比べ物にならないほど四方八方から魔物の毒針や爪の攻撃、紫色の炎が飛んでくるのだが、そのすべてを《星賢者》が位置を教えてくれたり時には魔法を使って相殺してくれたりしているおかげで致命傷に至る傷は負っていない。
しかし、いくら狩っても終わりは全く見えずただただこちらの疲労がたまっていく一方だった。
泥沼の戦闘は丸一日続き、冒険者たちはただただ消耗していく。消耗しているのは体力や魔力だけでなく、彼らの装備も同様で、特に駆け出しの冒険者たちはすでに獲物を町のギルドから急遽支給されたものに変えている。
俺の朧霊刀は幸いいくら使っても刃が欠けることはなく、安定して戦闘を続けられるのだが、それを振るう腕がもう鉛で固められたかのように重かった。
動きからキレがなくなり、隙も多くなっていく。生まれた隙はすべて《星賢者》が埋めてくれるのだが、それでも木津は増えていった。
周りのほかの冒険者たちはうまいこと入れ替わって休憩を入れていたのだが、現状だと俺まで後退してしまったら崩れるかもしれないほどのぎりぎりな状況だったのだ。
動かない体の筋肉に治癒魔法をかけて騙し騙しやっているが、それでも補いきれず今は限界を超えて根性で槍を振るっている。
一方魔物たちは一日たった今でも数が減っているようには見えない。しかし、心なしか一匹当たりの質が落ちているようで、始めのように派手に吹き飛ばされるような人もいない。
俺が気づいた少し後にこの戦線のリーダー役を務めていた冒険者が同じことに気づき、大声で冒険者を鼓舞した。
「おい!魔物がどんどん弱っているぞ!このまま耐えて、湧いて出てくるモブどもを蹴散らすぞ!」
「「「「「おおぉぉぉ!!!」」」」」
疲労困憊の表情だった冒険者たちに希望の色がさした。気のせいかもしれないが、彼らの振るう武器にキレが戻ってきたように見える。
このまま耐えれば勝てる、誰もがそう思った。
しかし、突如大量の魔物たちが紫の霧へと変わり、上空に向かって昇っていく。その霧は一カ所に凝縮されるように集まっていき、一つの転移門を作り出した。
その転移門は禍々しい輝きを溢れさせる。そう、俺が死んだときと同じ赤い輝きが。
俺は素早く懐から結界魔道具を取り出し、《星賢者》に命じる。
「魔法陣を複製して町を包め《星賢者》!」
〝命令を受諾、速やかに実行に移します〟
《星賢者》は俺が命令して数秒と時間をかけずに魔道具の魔法陣を解析、町を包むほど巨大な魔法陣を構成して命令を完遂した。
町を覆うほどの魔法陣をすべて俺の魔力で構成したせいで魔力切れを起こし、俺はその場に膝をついてしまった。体に力は入らず、もう戦えないだろう。
結界魔法陣が起動した直後、赤い転移門から大量の結晶が降り注ぐ。鋭い形状の結晶は結界の外に転がっている魔物の死体に刺さり、刺さった魔物の死体を恐ろしいほどあっという間に毒で犯していった。
結界に当たった紫色の結晶はそのまま砕けて消えていく。そして数分間結晶の雨は降り注いだが、《星賢者》製の魔法陣は完璧な効果を発揮し、一本も結晶の矢の侵入を許さなかった。
俺はそのことを確認し、やっと安心して肩の力を抜いた。しばらく降った結晶の矢は止み、結界の魔法陣も効力を失い消えていった。
赤い転移門も少しづつ小さくなっていき、一日かかった戦闘も終わった。
油断していた。
転移門が消えていくのをちらりと見て俺は安心してしまい、そのまま朧霊刀を杖にして座り込んだ。そのせいで、閉じつつある転移門から飛んできた一本の紫色の結晶と少し遅れて飛んでくる紫色の結晶でできた刃に気が付かなかった。
俺は反応できずにその結晶の矢に貫かれるのを待った。
その間に割って入いるように、桃色の髪の女性が両手を広げて立ちふさがった。
イリスはそのまま俺を貫こうとしていた結晶の矢を鳩尾に受け、倒れる。俺は慌てて動かない体を必死に動かし、彼女の体が刃に切り裂かれないよう押しのけた。
何とか彼女の体が切り裂かれるのを防いだのだが、俺の腕はその時点でがちがちに固まってしまい、引き戻すことも間に合わあず、左腕はそのまま宙に舞った。
「ぐぅぅ!」
俺は左腕を失った激痛に耐えながら《星賢者》に命じる。
「《星賢者》!イリスの治療をしろ!お前の処理能力をすべて彼女の治療に注げ!」
〝命令を受諾、速やかに実行に移します〟
《星賢者》は俺でも見たことが無いような立体的な魔法陣を構成し、イリスの治療を始めた。俺の雀の涙ほどしか回復していない魔力をすべて使って彼女の治療をしている。
俺はもう使える魔力がないため、腰に巻いた剣帯を左腕に強く巻き付けて出血を何とか止めた。その後、すぐにこちらに寄ってきた治癒魔術師によって止血をしてもらいながら、魔力の供給もしてもらう。
彼らも理解しているのだ。
彼らが扱う治癒魔術よりも俺の使う治癒魔術、正確に言えば《星賢者》の使う治癒魔術のほうがより高度なものであるということを。
俺は出血が止まり違和感がある体を起こしてイリスのそばに寄った。彼女を襲った結晶の矢はそのまま彼女の体を貫通していったのか、体の中には結晶は残っていなかった。
しかし体に空いた穴はふさがりつつあるのだが、彼女の傷跡には禍々しい紋様、呪いの印が刻まれていた。
まさかと思って俺の左腕を見ると、そちらにも呪いの印が刻まれていた。俺の呪いの印は治癒を妨げるものだった。《星賢者》の解析によると、イリスのものも同様のものらしい。
ただ治癒を妨げるものであるらしいのだが、彼女の場合は肺の片方を潰されているせいで、起き上がって運動することができないようだ。
《星賢者》の創意工夫した治癒魔法のおかげでそのほか最近による感染症はなかったが、普通よりも免疫が落ちているため、外には出られないようになってしまった。
俺はそのまま彼女を連れて屋敷へと戻った。町の治療院はこれから負傷した住民や冒険者の治療で忙しく、イリスの看病を満足にできないそうだった。
そのため、メイドがたくさんいて、彼女の看病を十分にできる俺の屋敷で預かることにしたのだ。
それに、俺が油断してしまったがために負わせてしまった彼女の傷だ。俺が責任を持って彼女を治療してやらなければいけないと思った。
町の魔物がすべて討伐したという噂を聞いたのか、家からミヤさんと四人のメイド、母に妹が迎えに来た。
みんな俺の左腕を見て、目を潤わせ、両手で口を覆った。しかし、俺から事情を聴いてからのメイドたちの動きは非常にスムーズで、イリスを安静に屋敷まで運び、彼女の看病のために必要なものをミヤさんが一人で買い集めに言った。
俺は母と妹と一緒に屋敷へ戻ったのだが、左腕がないせいでバランスがとりにくく、両側に建つ母と妹に倒れ掛かってしまうことも多々あった。
母は終始泣きそうな顔のままでいたのが非常に印象的で、本当に俺の心配をしてくれたのだと痛感した。
―第二章 転生―
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