†Break Guns†

如月統哉

文字の大きさ
22 / 65
Ⅳ.追う者、追われる者

狂犬の襲撃

しおりを挟む
「…あんたらしくないね、手を滑らせるなんて」

床に零れた、無数のグラスの破片を拾うログランドを見やりながら、ヴァルスが肩を竦める。
それにログランドは、妙な汗を頬に伝わせると、とってつけたような笑みを、無理やりヴァルスへと向けた。

「どの口がそんなことを言うのか、訊いても構わないですかね、ヴァルス」
「!か、構わないも何も、事実なんだし…」
「…余程くびり殺されたいようで」
「う"」

ログランドに殺気を帯びた目で睨まれたヴァルスは、術もなく怯む。
それによってセレンは、組織で真に恐ろしいのは、現在、表立って動いている幹部クラスよりも…
ある意味、ログランドの方なのではないかと、ひしひしと感じ取っていた。

一方のユイも、こういったやり取りは別段珍しくもないのか、止めようともせずに淡々と酒を呷っている…
と、その表情が不意に引き締まった。

「……」

ユイは無言のままグラスを置くと、鋭く店の入り口を見据える。
すると次にはその扉が、何者かによって、外から勢いよく蹴破られた。

「!」

辺りには扉の破片と、風と若干の埃が舞う。
ログランドとヴァルスは、瞬時にそちらに、警戒に満ちた瞳を向けた。
一瞬遅れて、セレンがそれに続いて視線を向けると、そこには少年とも青年とも形容し難い人物が二人、店の出入り口自体を、その体で塞ぐ形で存在していた。

…どうやら扉を蹴破った張本人らしい、手前に居た金髪碧眼の、整った容姿を持つ青少年が、その外見とは裏腹に…
蹴破るのに必要としたらしい自らの右足をゆっくりと下ろし、地に着けると、それに比なる動きで、醜悪で残酷な笑みを、緩やかに周囲の者へと見せつける。

「…ふん、余計な手間を取らせやがって。しばらく見なかったかと思えば、こんな辺鄙な場所に隠居してたのかよ、ユイ」

ぞっとする程の禍々しい殺気が込められた、その声。
怨念にも近い憎しみのこもったケイオスの呟きは、まるで亡霊のそれのように、聞く者の身を竦ませる。

対してユイは、度が過ぎた憎まれ口を叩く眼前のケイオスを、ひたすらに凍れる瞳で静かに睨み据えた。

「…組織絶対主義の狂犬が…
仲間を引き連れて何の用だ。まさか今更、俺やセレンを排除しよう等と、馬鹿げた考えで介入してきた訳じゃないだろうな?」
「──貴方にとっては馬鹿げたことでも、我々にとっては組織の…
総統の命令が最優先なのでね」

ぱきっ、と、砕けた扉の破片を踏みしめながら、後方に居たゼオンが、死をも恐れぬ殺人者特有の乾いた笑みを見せながらも、店内に侵入する。
と同時、ヴァルスは不意に、鋭く尖らせたその茶の瞳で、一瞬にして間合いを詰めたその者の姿を捉えた。


セレンの前方で、とっさに守護の動きを見せたヴァルスの右腕と、いつの間にか緩やかに、それでいて目にも止まらぬほど鮮やかに、セレンの前にその魔の手を伸ばしたケイオスの右腕が、擦れる程に近い位置で交差するのは、全く同時で。


冷めた瞳で瞬間、睨み合った二人は、その一連の互いの行動で、共にその力量をも推し量っていた。

…程なくして、余裕の笑みを見せたヴァルスの口元が緩む。

「──俺の前で女のコに手を出すつもりなのか?
よほど殺されたいようだな、ケイオス」
「…は。女となれば見境も節操も遠慮も、三拍子で皆無な奴に言われる筋合いはねぇよ!」

言うなりケイオスは、強く地を蹴って後方へと移動した。
そのまま、まるで何かを誘導するかのように、ヴァルスの方へと、ぴたりとその人差し指を向ける。

「…確かお前の属性は、雷だったな。
雷の魔術は、土と風のそれを極めた奴にしか、扱う事は出来ない…」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...